人間失格 太宰治と3人の女たちのレビュー・感想・評価
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小栗旬が見出した太宰治 製作陣の覚悟に最敬礼
実在の人物を描いているだけに、どういう結末に至ったかは誰もが知っている。
それでも製作陣に、主演の小栗旬に最敬礼したいのは、小説「人間失格」を映画化したのではないから。そして、生に執着した太宰という新たな着眼点を、違和感など吹き飛ばすほどの説得力で演じ切ってみせたから。
そこに至るには何年にも及ぶ製作サイドの準備期間があり、理論武装するだけの取材期間があったからだが、小栗をはじめ宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみがしていった肉付けが素晴らしかった。映画賞で無冠なのは、なぜなんだろうか? しっかり評価されるべき作品である。
蜷川実花監督のビジュアルセンスは題材を選ぶ
写真家としてキャリアをスタートさせ、映画監督としてはこれが4作目となる蜷川実花。ビビッドで極彩の色使い、知性よりも感覚に訴えるスキャンダラスな作風は、写真家としてのスキルと女性ならではセンスを十分に活かしたもので、昨今の邦画界において貴重な存在であるのは間違いない。
「さくらん」「ヘルタースケルター」は女性の美や性を扱う漫画が原作、「Diner ダイナー」は平山夢明による原作小説で殺し屋たちの話。エロスや暴力、狂気の視覚化で持ち味を発揮できたが、今作は太宰治の小説「人間失格」が題材。蜷川監督は自身の得意のテリトリーに寄せるべく、3人の女性との関わりを軸に作家の創作に迫ろうとしたのだろう。時代の寵児であり放蕩生活を送った太宰の半生がカラフルに活写された反面、孤独な魂や創作の苦しみに迫る深み、純文学らしい耽美的な味わいという点で弱い。豪華な俳優陣は健闘したと思うが。
ただの映像作家から華麗な映画作家へ
蜷川実花監督の過去作である「さくらん」と「ヘルタースケルター」は、ただ画が綺麗なだけの退屈な作品だった。それが前作「ダイナー」では画の綺麗さで物語を動かせるようになり、映画監督らしくなった。そこからさらに磨きをかけて、本作では、ただの映像作家から映画作家へと変貌を遂げた。
全編を通して良いシーンが多かったが、特に良かったところをいくつか。
とりあえず、シュールな修羅場の連続で、笑えないけど笑えるようなコミカルとシリアスの混在したバランスは面白かったと先に書いておく。
まず、祭の夜の一連のシークエンス。編集者の佐倉と太宰が口論になり、「書いてくださいよ。人間失格」の流れは太鼓のBGMと相まってアクション映画を観ているような高揚を感じた。
いつまで斜陽の話をしてんだよと思っていた時でもあったし、祭の高まりと人間失格への太宰の意欲、そしてそれを期待する観ている者の高まりを合わせてくるとは不意を突かれた良いシーンだった。
次に、太宰が家を出ていき、美知子が妹の葬儀から家に戻ってきたシークエンス。
キャラクターに色が紐付いていることは誰の目にも明らかなのでいいとして、もう少し深く見てみると、青は美知子の色であり、家族、家庭、調和、生の色だったかなと思う。そして赤は、太宰の色であり死の色でもあった。
それを踏まえて、美知子が帰ってきた誰もいない家は色を失い、窓の外だけがぼんやりと青い。太宰がいなくなり家庭が壊れたことを示唆する。
窓の外から娘が登場し、息子が真っ青なペンキのようなものをこぼす。家族の色だった青が流れ完全に崩壊したかに思えた次の瞬間に、その青いペンキを顔や服に塗りたくっていく。
一瞬壊れた家族を太宰抜きで再生し始めたのだ。
泣き、笑い、抱き合い、また青い家庭を取り戻す場面は、ちょっと長かったようにも感じたが、この場面の宮沢りえが一番良かったし、監督が長く撮りたかったのかなとも感じた。
そしてもう一つ。太宰は今まで人のことを小説にしてきた。自分と向き合い自分のことを小説にすることを出来ずにいた臆病な男。
それが青い家から閉め出され、病魔におかされ、金銭的にも追い込まれたとき、やっと書く覚悟を決めた。
雪の中で吐血し「日の丸だ」と言うシーン。白は小説を書く原稿用紙の色。そこが太宰の色である赤に染まるのは、自身のことを書いた「人間失格」を表す。
しかしそのまま倒れ、真っ白な雪に飲み込まれ息絶えそうになるが、富栄に助けられ「よくやった」と言う。本当だよ、メタ的な人間失格の完成だけでは意味ないからね。
そのあと、青い家がバラバラになっていく中で書き続ける太宰のシーン。美知子に言われ自身もそう思った、何もかもブッ壊し書くの映像表現は素晴らしかった。
面白かったし、よく作り込まれていた作品だったけれど、作品内での坂口安吾の言葉を借りるなら、バカでも痺れるような作品とまではいっていないようで、今後の蜷川監督に更に期待する。
今さらないとは思うが、路線変更だけはヤメテね。このまま突き進んでほしい。
最後に余談。
違う女性と何度も心中するというのはどんな状況なのだ?と昔は思っていたのだが、人間失格を読んだときに、死にたい人と死にたい人が惹かれ合ってその状況に至るのだと知った。
つまり、死の臭いを振り撒く太宰の小説は、共に死んでくれる人を求める人を引き付ける。
ラストの「死にたいんです。今ここで」は、それをよく表していたなと思った。
何の情報もなく鑑賞。最後監督を知って納得。
太宰治はズルい。
まんま、イキってる小栗旬 でもうらやましい
別に太宰治のファンではないので不快にはならないですが、
太宰治を嘘つきの軽薄な人間だったという考察ですね
性差別的な言い方になりますが、男勝りの演出家、蜷川実花らしいといえます
女性にとっては許し難い男ですからね
まあモテない君の僕にとっても天敵ですが、反面、ジェラシーとも羨望ともとれる感情を持ってしまいます
女性のみなさん、ごめんなさい
前回、”PERFECT DAYS”をクソミソに言いましたが、本音がここにあります
”PERFECT DAYS”は、人生に疲れたのかわかりませんが、監督は精神的に病んでるとしか思えませんでした
役所広司が余力を残しながら、一人暮らしを満喫しているのがいいなんて、病気ですよ
人と動物との違い
誰かと一緒に生きる事
そして死ぬ時には誰かに看取って欲しい
寂しい老後はまっぴらです
モテる男は大抵、傍らに献身的な女性がいます
どんなに歳をとっても、モテる男のそばには女性はいるんですよね
羨ましいです
だから今回のような太宰治をおとしめるような作品であっても、ちょっと羨ましくなってしまうんですよ
あぁ、あやかりたい
太宰治は、好きなように生きて死んだし、女3人も好きなように生き、死んで行ったはず
人生なんて最後は死です
志賀直哉と喧嘩をしていましたが、勝った負けたなんていずれ死ぬ身にはなんの意味もない
飛躍しますが、プーチンを見ていると、ええ歳こいていつまで権力にしがみつきたいんかと思います
彼には理想の社会主義なんかどうでもいいんだろうな
小栗旬が左利きのまま演じていましたが、コレは実話じゃないっていう言い訳かな?そんな小心者なのか蟻川監督
でも
女性監督だけあって、イケメンがワンサカ出てきます
このへんは、欲望に忠実でいいですね
主役の小栗旬に始まり、坂口安吾が藤原竜也、三島由紀夫に高良健吾
彼なんかに太宰治をやらせたら色気ムンムンで女性が卒倒してしまいますよ
他に、成田凌、千葉雄大、瀬戸康史などなど
副題の3人の女性もいい
宮沢りえはまだまだ色気があるし
沢尻エリカは気の強い才女がまた、イヤミなのに惹かれてしまう
二階堂ふみはタイプじゃないんですが(おこがましい)、女優としては大好きです
あの色気と演技に魅せられてしまいます
反面、小栗旬のセリフ
「かわいいなあ」は、しらけました
あれはもう小栗旬そのまんまです
特に三人の女がよかった
太宰治というのは本当におかしな人間です。
どう見てもダメな男の代表で、絶対付き合いたくないけど、会ってみたい。何がそんなに女性を引き付けるのか、謎過ぎてかえって知りたくなる危ない男です。
誰が演じても、どんな演出でも本当の彼をとらえきることはできないし、いいんです!それで。小栗旬の太宰は「あり」、だなあと思いました。最後の鬼気迫る執筆シーンは見事でした。
そして、3人の女たちもよかったです。
夢みがちな治子、ただ耐える妻(あきれてるのかもしれない)、ぐいぐい暴走していく富栄。それぞれの個性が素晴らしく、特に二階堂ふみがイメージピッタリで素晴らしかったです。
太宰がもててるようで実は、愛人たちのいいなりで、おもちゃになってるのは面白かったですね。
私は蜷川実花さんの演出は本当はあまり好きではないんです。キレイで、写真ならいいけど、映画ではちょっと奇抜すぎて、そっちが気になってしまって。結核の血なんかもやけに目立つし。でも、この作品や時代にはあってたかもしれません。
とにかく太宰治って人間はやっぱり面白いなあと思いました。
美しい映像と美男美女たちに魅せられた。 セリフは名言だらけで最高。...
良いのか悪いのか...
映像は確かに綺麗というか、世界観は良さげな感じするんだけど、最後まで観て結局なんの映画なんだ?って感じで終わってしまった^^;
そして、小栗旬よりも二階堂ふみのそこまでやるのか感とか、とにかく女3人の方が強烈なイメージで太宰治のイメージよりもそっちにフォーカス当たってしまう。
それはそれで狙いなのかもしれないけど、結局太宰治って?ってなって終わった笑
罪深き報酬
「ドグラ・マグラ」ほど難解ではないが理解し難い本でした
にもかかわらずページはどんどん進み二日とかからず読んでしまえたことに驚いています
「道化」と言っていましたね
私も似たところがありいささか読み進むにつれ恐ろしさを感じました
父はあくまで怖く兄にはいつまで経っても頭が上がらない
人と競い争うことを恐れていつのまにかニコニコと言うよりもヘラヘラしているように思えてきました
そして何より酒が好き
ただ、違うのは飲む理由が違うのかも知れません
ヤケ酒は飲まないのです、ひとつも旨くないのです
楽しさがないのです
気分のいい時に飲みたいのです
でもやはり根本は変わりないように思えてなりません
愛情が薄っぺらく優しさもうわべだけなのかとも思ってしまうのです
この映画見て本を読み自分がだんだん怖くなってしまいました
唯一救いなのは………
私は彼のようにモテはしないことです「よかったな〜」
小栗旬のエッチビデオ
大丈夫、君は僕のことが好きだよ
蜷川作品の中では一番いい、うん。(まぁ原作の漫画がないからかもしれないけど)
賛否両論で酷評も多いけど、この作品は「太宰治の人生をフィクションで描く」ものじゃなくて、
一定量いる無意識にモテるダメ男とそれに傾倒してしまう3種類の性質のパターンを偶像化して映像にしている、て考えると合点がいく。
この作品に昭和初期の言葉遣いや雰囲気を求めてはいけません。だって、女にだらしない魅力的だけど才能がありあまるダメ男のイメージが「太宰治だった」だけだったんだもの。
太宰治をリアルなフィクションで映像化するなら、そもそも監督は蜷川実花は適任じゃないなんて、太宰ファンなら観る前からわかりきっているのでは?
蜷川実花は基本的に「20世紀を生きる今のオンナ達に向けてのメッセージ」を作品にのっける人ですよ。
それを念頭に置くと、
儚くて刹那的で破壊衝動という隠れ蓑を使って生きる意味を生み出す男前を演じるの、めちゃうまいよね小栗旬ってば。セクシーのかたまり。
奥様との愛があるからこそ浮遊感を楽しむ恋や、狩猟本能と承認欲求をこれでもかと貪れる愛人との遊戯は、ともすれば恋遊びが巧い男女は親から愛されていたんだろうな、と別の考え方ができて面白い。
そんでもって、複数の異性に種を残したい欲求は生き物の中にある本能だし、テーブルの下で誰にも気づかれないように手を握られるのは、ものすごい興奮するのよ。
本妻(宮沢りえ)の愛は、無償の愛。見返りを求めず、夫の幸せ(魂から湧き出る執筆作品を生み出すこと)がトッププライオリティ。愛人と出会しても、夫を第一優先。子供よりも。そこがせつないよね。
でも最後は気丈でした、夫の不倫自殺遺体が見つかった訃報を聞いても「やっと晴れたから」と洗濯物を笑顔で干す。自分で決めたことを子供の前でも正当化する静かだけど強い女、いちばんかっけえ。
2番目の愛人(沢尻エリカ)はあわよくば自分の承認欲求を太宰治に乗っかって充実させようという、自己愛スーパー強めの政治家タイプ。
3番目の愛人(二階堂ふみ)は、おぼこい純潔な子かと思いきや本質は依存度強めのメンヘラちゃん。現代でも一番ヤベェのがこのタイプ。でも最初は硬めだから、恋に落とすのが楽しいんだよね、戦争から帰らぬ夫を心に置きながらキスを拒否しても「大丈夫、君は僕のことが好きだよ」って言われて藤棚で抱えられたらキュンキュンしちゃうだろ!!!!!!!!
メンヘラじゃなくても男前にやられたらキュン死にするわ!!!!
男女の表現以外も、
太宰治の罪悪感を真っ赤なライトと風車と子供の群衆のけたたましい笑いで煽ったり、
人間失格を書く筆がのってる時の、青い空間で和室が分解していく表現とか、
蜷川世界だけど、今回は意味のある色彩を感じた。
ヘルタースケルターでもそうだったけどクライマックスに無音の何十秒かを設けるの好きだよね。CMで人の意識を惹き付けたければ無音を作れ、とはよく言ったもんだけど、あれ?また?って思っちゃった。
俳優陣でいえば、お約束の藤原竜也はもう役には見えんw 藤原竜也でしかない、もしくはカイジw
三島由紀夫が高良健吾だったのは美しかったなー。
インテリアや花畑も極色彩で美しかったし、静子も富江もキリスト教だったのね、富江の貧しい家の窓枠から漏れる光が十字架になってて、わかりやすかったw
最後の太宰治の訃報を聞いて家の窓を開けたら、燕子花がどーーーんと咲いてて、ああ、5月か6月に亡くなったのね、という時期がわかるのは良かった。
んが、庭って水張ってましたっけ?水の中で咲く花なんだけどな。という無粋は、まあ、置いとこう。
咳が…気になって
妻以外のふたりの女性との生活
…子ども妻に知れて
お仕事と言い訳
ふたりの女性の心情は分かりませんが
妻(宮沢りえ)の心情は分かる様な…
気がします
ちょっと世界観が合っていたのかどうか
わからなかった
…音楽も
台詞も
余談…太宰治の魅力が
感じられなかった
太宰を魅力ある人に描かないと
…三人の女性が魅力的に
写らないかな~
太宰治と大庭葉蔵
もったいない題材
ダメ男だったんですね
日本文学というものに全く触れてきてない私にとって、太宰治って人は国語の教科書のメロスの人ってだけで、どんなにすごい人だったのかも、どんだけ人気のあった作家なのかもぜーんぜん分からない。
それでも、名前は知ってるし。
小栗旬と、女優3人。それもベテラン、ちょっといろいろやっちまってます、どんな役でもドントコイ系。のお三方。宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみ。
このキャストだけで見てみたいとわされ。
結果、鑑賞してまぁまぁ良かったかなと。
宮沢りえに対しては、特別好きなわけじゃないのに、映画のどこかで必ず感情移入してしまうような、幸薄い感じがたまらない。なぜかなー。
本作も、好き勝手する夫に呆れているような、でも突っぱねることができないような。ただ、作家としての夫を奮い立たせた途端、愛人家に上げて家の中触られて、心がわけからなくてなって、でも子供達の前では泣き崩れることもできない母親。←めちゃくちゃ感情移入してしまって、思わず泣いてしまったよ、辛すぎる。悲しすぎる。殺生だわ太宰さん。
沢尻エリカはな〜、うまいなー。演技やっぱり好きなのよねー。そして、この静子って役も好きだわー。。。"恋が悪いものなら私は不良でいい。もともと不良が好きなんだから"だってさ。
ってね。そうよ、そうなのよ。
私もこの太宰治ってダメ男みたいなやつに結局惹かれるタイプよ。
ただ、そのダメ男が私みたいなんを好きにはなってくれないのよねー。。。余談ですね。
とにかく!ずっと好きでいてもらえる愛人になりたいだなんて、可愛いこと言うなって思っちゃったよ。
二階堂ふみちゃん。体張ってたなー。
濡れ場。蜷川実花監督の映画は濡れ場がポイントの一つになると思うけど、もはや富栄とのシーンはほぼほぼホラーやなと。
怖いよー怖いよー。とひたすら言っちゃうくらい、執念と執着を感じて恐ろしかった。
いやー、人選ミスるととんでもないことになりますね。くわばわくわばら。
本作は賛否両論ありますが、実在の人物、それも有名でファンが多くいる人を描くってのは大変だなと。蜷川実花監督のそもそもの世界観で描かれる太宰治を、観て楽しめる人もいればそうでない人ももちろんいるだろうし。
私が楽しめたのはホラーやなと思いながらも、蜷川監督の得意なお花の演出を単純にキレイだと思えたからかな。
とにかく太宰さん、こんなにダメ男であっても、好きになる女性は必ずいる。ちょっと鑑賞しながら、この時代にタイムスリップして、太宰治本人を見てみたくなった。
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