「「世界はどうしてこんなに美しいんだ」(夜と霧より)」ウィーアーリトルゾンビーズ HBさんの映画レビュー(感想・評価)
「世界はどうしてこんなに美しいんだ」(夜と霧より)
「音響とか面白くしてるんで、ぜひ劇場で観てほしい」という監督のツイッターをみて「じゃあ劇場で観ようかな」と思いたって出かけてみました。
確かに音響もなかなか面白かったです。
他の映画では体験できないような仕掛けがあったりするので、ぜひ体感してみてほしい。
「死」(特に親とか)を扱った作品が苦手なので、
ちょっと躊躇していたけれど、映像がポップだったので、
扱っているテーマに反して観やすかったです。
観たばかりなのでまだ消化しきれてないところはあるけれど、控え目に言っても監督は天才。
なんと言っても印象に残ったのは「セリフの今っぽさ」でしょうか。
初めてクドカン観た時みたいな。
現代の若い子たちに寄り添った「今」感がとにかくすごいと思いました。
役者陣の中では池松壮亮さんが良かったです!
今までこれといって注目して来なかったのを後悔するほどでした。池松壮亮さんを観るためにもう一回観てもいいくらい。
死を軽く扱っている、みたいな意見もツイッターなどで見かけましたが、逆に私は死が与える影響をものすごく強く感じました。
わあわあ泣くばかりが、死が与える影響ってわけじゃなくて、
細部をこつこつ積み重ねることで重みを感じさせるタイプです。ずっしりきました。
負の部分をこれでもかとぶつけてくるのですが、
きれいごとばかりで美しく「死」を見せようとする映画よりも、よほどリアリティを感じました。
褒められた親じゃなくても、彼らを失ったことで、子どもたちも、居場所だけでなく色や、感情や、味覚などを失います。ついでにお金も。
嫌な奴だと思っていても、そいつらが死んだからって全く自分に影響がないかというと、しっかり(自覚なくとも)傷ついているという。
(視力や、薬指など含めて)何か欠けたもの同士が集まって、欠けたところを埋めていくところは「ファインディング・ドリー」にも通じるというか…。
つまり、後味悪くないです。
シチュエーションは無理ゲーだけど、メッセージはシンプルで、「友達っていいものだよ」「どこかに必ずあなたをわかってくれる人がいる」という、非常に救いがあるもの。
だから、海外でも特に子どもたちに支持されているのだと思います。先に挙げたセリフの今っぽさも合わせて。
ギミックに引っ張られてわかんなくなってしまう人がいるのもわかりますが、
でも、どんな時にも希望はある、という信じられないくらいポジティブなメッセージを、見逃さないで欲しいなあ…。
5月に女木島で見た「世界はどうしてこんなに美しいんだ」というアートを思い出しました。
そしてそのアートの元ネタである、アウシュビッツ強制収容所の「夜と霧」のエピソードも。
明日をもしれぬ身の囚人であるユダヤ人が、あまりにきれいな夕日を見た際に思わず呟いたと言われる一言です。
人生をハードモードに感じている人にこそ、
この映画は美しくささるのかもしれない。
だから、苦しいなと思っている人にこそ、観てほしいと思う。