「壮大な歴史物語が時間に収まりきれずといった感」ふたりの女王 メアリーとエリザベス しずるさんの映画レビュー(感想・評価)
壮大な歴史物語が時間に収まりきれずといった感
史実に詳しくなく、つまみぐい程度のドラマや映画「エリザベス」程度の知識での鑑賞。
伝説やゲームなど、中世ヨーロッパの世界観が好きなので、武器や衣装などの美術面、宮殿や壮大な景色のビジュアルには心踊った。
二人の女王を対比して、メアリー側のエピソードとエリザベス側のエピソードを交互に並べるように展開させる構成が幾度かあったが、特に前半、まだキャラクターを把握してない時点では、どちら側の話なのか解らなくなって混乱気味に。
女性の髪型が皆似た雰囲気だったり、男性の見た目もあらかた髭ワイルド系だったりするので、キャラクターの見分けが難しく。
重ねて、私が史実に疎いせいも大きいが、複雑な政治宗教抗争が、次から次へと駆け足で繰り広げられ、展開と状況の把握に苦労してしまった。
ストーリーは主にメアリーに焦点をあてている。エリザベス側から描かれた場合、悪者になりがちな立場だし、そのメアリーを、美しく賢く強く毅然とした魅力的な女性として描いた所が新鮮なのかもしれないが、私はあまり共感や好感を抱けなかった。気の強さと寛容さ、賢明さと少女性、多様な顔を持つキャラクターとして描かれていたせいか、この人どういう人なんだろう?と最後までよく理解できず…。
明るく奔放なメアリーと対比させる為か、エリザベスも気丈ながら気弱な面のある人物となっており、こちらも今一つ疑問のまま。「私は関わらない」と臣下に丸投げするのは、メアリーへの罪悪感からか、どうせ思い通りにならない議会へのせめてもの抵抗なのか…。
男性の牛耳る政治や宗教の世界に於て、結婚と出産を武器に女の闘いをするメアリーと、未婚を貫き自らを男と成すエリザベス。奔放に明け透けに全力むき出しのメアリーと、自分を殺して苦さを耐えるエリザベス。対照的な二人の演技は見応えがある。
ラスト、毅然と顔を上げ殉教の真紅のドレスで、それでも斬首の瞬間に恐怖で息を詰まらせるメアリー、空を仰ぎ、罪悪感に咽び泣きかけ、配下に押し留められてぐっと表情を殺していくエリザベス。互いに懸命にもがきながらも、ままならない運命が苦しく悲しい。
この二人の対照的なキャラクターと、似て非なる人生を、それこそ1年物の大河ドラマとしてでも、生い立ちや少女時代からもっと深くじっくり掘り下げて描いてくれたら、もうちょっとのめり込んで面白く見られたかも。
映画の2時間程度では、壮大な歴史的事実と二人の波瀾万丈な人生は、ちょっと受け皿が小さすぎたのではないかなぁ…。