「わたしは納得しない。」ふたりの女王 メアリーとエリザベス おかずはるさめさんの映画レビュー(感想・評価)
わたしは納得しない。
主権を有していても、望まれるのは血統の承継だけ。
その孤独を共有できるのは、同じ立場にあるエリザベスだけ。
これは本当にいいテーマだと思う。でも、この作品は、そのテーマを描ききれていない。シアーシャ・ローナンとマーゴット・ロビーという人気と実力のある女優の出演作だけに残念だった。
本作のメアリ・スチュアートは、ブリテン島の統一によって、平和をもたらすことを期している。そのために、エリザベスに自らへの後継指名を要求している。エリザベスにも別の思惑がある。メアリとエリザベスの往復書簡に関する著作を原作としていることから、書簡のやりとりを通じて、社会に対して責任を負う者の成長が描かれるものと思っていた。そうはならなかった。
メアリは、スコットランドを混乱させるだけで何もしないのである。最初の配偶者の選択は、彼の野心に気づかなかったメアリの明らかなミスだ。混乱を生じさせることが間違いないのに、宮廷の宗教指導者を野に放ち、それが失脚の原因となる。とにかく人の助言を聞かない。
メアリはスコットランド女王であり、その地に住まう民に責任を負う者だ。彼女の評価はそれが前提となるべきで、旧態依然とした男性社会へのプロテストを描きたかったのだとしたら、この演出ではわたしは納得できない。
史実を逸脱しても、「女王陛下のお気に入り」は、絶対権力者の孤独を描いてみせた。史実を言い訳にすることはできない。