劇場公開日 2020年3月6日

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「全国の学校で義務教育として子供達に観せるべき映画だと思います」Fukushima 50 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0全国の学校で義務教育として子供達に観せるべき映画だと思います

2021年3月13日
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鑑賞方法:DVD/BD

素晴らしい映画だと思います
そして勇気を持って映画になさった事に深く敬意を示したいと思います
日本人として絶対に映画に残さねばならない事故でした
風化させてはならないことです
永遠に何があったのかを伝えなければいけないことなのです
しかしどう撮っても、どのような態度で製作しても、如何様に工夫しても批判されるのです

それでもなお、そんなことを百も承知で敢然と受けて立って映画化したその勇気こそ尊敬されるべきことです

左右どちらからも、何かしらの政治的志向で、見えかたが全く違うようです
そんな政局の為に本作を云々して欲しくないと思います

もっと沢山の作品がこの事故を取り上げられなくてはなりません
そうすることでより立体的にこの事故のことが見えてくるのだと思います
このような事故を二度と起こさない為にこの事故をリアルタイムで経験した私達が為さねばならないことです
この作品を生み出したスタッフの皆様には全く頭が下がる思いです
よくぞ映画になさって頂きました

途中で涙が止まらなくなりました
メルトダウンを起こした原子炉に向かうために決死隊を募るしかなくなる場面
行かなければ、生まれ育った故郷は二度と住めない、それどころか東日本壊滅まで現実的だったのです
しかし、行けば死ぬかも知れない
それも悲惨な死に方で治療方法もない
ただの一技術者に過ぎない普通の民間人です
だから誰もが尻込みする
誰一人押し黙って手を上げるものはいない
当然のことです

それをみて現場の更に最前線にいる当直長が、自分と一緒に行ってくれるものと、自ら手を上げたとき、
あなたはここに残り指揮を執らねばならないと口ぐちに自分が代わりに行くと我先に手を上げます
自分が行くのは怖い
しかし絶対に何とかしなければならない
自己を犠牲にすると覚悟を決めた人達の思い
このような人々です

あれは戦争だったのです
メルトダウンを起こして放射能を撒き散らした
だから敗戦です
しかし、その敗戦の悲惨をそこまでで食い止め、険しくとも復興する道を彼らがが残してくれたのです
どんな人々が役立たずで無能どころか邪魔で被害を拡大させたのか
どんな人々が最前線で自己を犠牲にして故郷を家族を日本を守ってくれたのか
それを私達は知り後世に伝えなければならないのです
子孫への責務です

現地対策本部に詰めている吉田所長以下大勢の人々
原子力技術者のフロントだけでなく、下請けに入っている人々、総務の女性は停電で水洗トイレは流れず、排泄物が山のようになったものを清掃してみんなを支えています
消防の人々、自衛隊の人々

あの時、あの場所に踏みとどまり、日本を救った英雄達であるのは間違いのないことです

Fukushima 50
世界が賞賛して当然の人々です

数年前、いわき市に何度か行くことがありました
市内のあちこちには放射線モニタリングポストが立っています
東京で一時期よく見掛けた光化学スモッグのオキシダント濃度の表示器のように普通にあるのです
商業施設の中にはその施設には大き過ぎるような屋内遊技場があり子供達が遊んでいました
なるべく外であそばせたくないのです
だから東京の商業施設にある同種のものよりどこもかなり大きいのです

しかしそれをのぞけば、あんな事故があったことは分からないほどです

終盤の立ち入り制限区域内の満開の桜並木、道路沿いの無人の商業施設、無人の住宅街

現実にあったことなのになにか非現実
夢幻のような
彼らがこの程度でなんとか食い止めてくれたからなのです
本当は帰還困難地域が厳然としてあり、いまだに故郷の街にも家にも帰れない人々が大勢います
農作物も水産物も風評被害は大きいのです
風化させてはならないのです

夢幻のように忘れ去られてはなりません
何があって、そのとき誰がどう苦闘してそれを食い止めたのか
永遠に伝えて行かなければならないのです

全国の学校で義務教育として子供達に観せるべき映画だと思います

あき240