「俺たちは何か間違ったのか?」Fukushima 50 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
俺たちは何か間違ったのか?
緊迫感抜群の映像。当時の再現性は高いという。役者陣の健闘もある。違和感は、ヒーローとヒールを明確にしているところか。たしかにその方が見ている方はわかりやすい。所長を含め実際の現場職員の使命感だって映画同様強かったはず。
だけど、そもそも論を言えば、あそこに原発を建設したときの予測が甘かった、に尽きるのだ。海に隣接するメリットはある。ならば、津波は避けられないリスクだとして、考え得る事態を十分想定したのか、が一番に問われるべきだ。有史にしっかりと貞観の地震の災害がある。歌詠みの”末の松山”と幾度も詠まれたあの地震だ。慶長期にも大津波が来ている。ここ100年くらいだって何度も。それは吉村昭の著書を読めば戦慄が走るほどだ。なのに、それを無視して低い堤防で濁した。その結果の原発事故。その責任は、この映画で被害者のように扱われている電力会社にある。さらには、その過去を知っていながらみすみす建設を許可した地元にも、ないとは言えないのではないか。その思いが消え去ることなく僕は観ているので、どうも素直に喝采を送る気分が湧いてこない。この映画に出ているFukushima50と賞賛された彼らの働きには頭が下がる。わが身を挺して「わが子」のような原発を鎮めようとする決意には、心うたれる。のに、だ。
吉田と伊崎が語る。
「俺たちは何か間違ったのか?とお前は言ったな。自然を支配したつもりになっていた、慢心だ」
単に美談で終わることなく、その言葉を肝に銘じなければならない。
コメントする