「福島と原発を語るための必須知識」Fukushima 50 PENGUINDRUMさんの映画レビュー(感想・評価)
福島と原発を語るための必須知識
ニュースとして採り上げられる東日本大震災、特に福島の話題は故郷を追われた地元住民に焦点が当たることが多い。勿論それを批判するつもりは毛頭ないが、今後の原発のあり方や福島が抱える問題を議論するためには、政府・東電・社会情勢など様々な観点で当時を知る必要がある。本作では東電の視点で当時を丁寧に描くことで、今後福島と原発などの問題を語る上で知らなければならない事項が凝縮しているように思われる。
物語を通して印象的だったのは「次の世代」を意識した行動や台詞である。震災で犠牲となった方々と対比して、視聴者は次の世代に重ね合わせることができる。
終盤では、井崎は吉田所長を弔う。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に例えるならば、カンパネルラが所長であり、井崎と視聴者はジョバンニである。
二度と同じ事態とならぬよう、緊急対策室の中とは言わないまでも、私を含め視聴者は当事者として立ち向かわなければならないと改めて考えさせられた。特に民間企業の一個人に「俺たちは自然をなめていたんだ」と言わせた我々の罪は計り知れない。
他人のことを偉そうに言えないが、大震災や原発の問題に対して、多くの人は「なんとなく知っている」状態で止まっている。2011年にリアルタイムで体験したり見ていたにも関わらずである。当時戦っていた方々の姿を目に焼き付け、原発などの問題に向き合わせる十分なエネルギーを本作は秘めている。
(単なる個人の好き嫌いの問題かもしれないが、だからこそ個人的には東京2020大会を引き合いに出し、復興のシンボルとすることには若干の疑問が残った。評価を星4としたのはそのためである)