「違和感だらけの時代劇」サムライマラソン アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)
違和感だらけの時代劇
原作は未読である。「史実に基づいた物語」という触れ込みであるが、どこからどこまでが真実なのかはよく分からない。おそらく、そのような事実があったという程度の話ではないかと思うが、むしろこの出来上がりを見る限り、史実云々という件はあまり強調しない方が良かったのではないかと思う。
2003 年の「ラストサムライ」や、2013 年の「47 RONIN」や 2016 年の「沈黙−サイレンス−」のように、外国人監督が日本を舞台にした映画を演出することが増えてきたが、必ずしも成功しているとは言い難いものが多い。その最初の例として忘れてならないのは、何と言っても 1980 年に放送されたテレビドラマ「将軍 SHOGUN」である。日本人から見ておかしな描写が目立った時代劇だったが、アメリカをはじめ世界中でヒットしてしまったために、誤った日本像を世界に広めることになってしまうという皮肉な作品であった。
それぞれの監督は、自分の異国性を意識するあまり、過剰な日本らしさへのこだわりを盛り込もうとして、結果的に違和感が増してしまったのではではないかと思っている。本作品の監督バーナード・ローズはイギリス人で、名作「パガニーニ、愛と狂気のヴァイオリニスト」を手がけたことで良く知られている。本作もまた、違和感が終始気に障るところが残念なのだが、その理由は日本らしさへのこだわりなどではなく、逆に、日本らしくないものを気安く持ち込んでしまったためではないかと思われる。
まず、足軽だから小刀のみを帯剣しているというのは誰のアイデアであろうか?足軽も歴とした武士であるので、二本差しは当然であったはずである。勝手な変更は日本らしさを損なうばかりである。また、レボルバー式の拳銃などを易々と持ち込んでしまったのも頂けなかった。更には、隠密が派手派手なレザーファッションというのには頭を抱えたくなってしまった。江戸時代の話に西部劇のガンマンが出てきたら、雰囲気がぶち壊しになってしまうのは考えるまでもないことである。
役者については、時代劇らしい風貌をしていたのが森山未來だけだったのも不満であった。いよいよ日本には、時代劇を演じられる俳優というのが絶滅危惧種なのだと思い知らされたような気がした。姫様役の小松菜奈も、全く日本の姫らしさが感じられなかったのが残念であった。役どころから言って、若い頃の大原麗子あたりが似合いそうな役であったが、現在この役を演じられそうな女優はちょっと思いつかないような気がした。
容赦なく首が飛ぶシーンや、倒した相手にトドメを刺す演出には、かなり好感を覚えたが、他の要素がそれを打ち消して余りあった。そもそも、一位になった者に望みの褒美を与えると言っておきながら、ああいう終わり方にしてしまったたのはどういう訳なのだろうか。非常に釈然としないものを覚えた。音楽は、同じようなフレーズを単調に繰り返すばかりで、全く良いところがなかった。日本を舞台にしたおかしな映画がまた1本増えてしまったのではという懸念が拭えなかった。
(映像4+脚本3+役者3+音楽2+演出3)×4= 60 点。