「実家に帰りたくなる思いをブルーアワーでサンドする。」ブルーアワーにぶっ飛ばす ちゃーるすとんさんの映画レビュー(感想・評価)
実家に帰りたくなる思いをブルーアワーでサンドする。
事前の情報が何もない状態で見に行って、まず気になったのはアス比でした。16:9のサイズで撮影されており、見慣れた画面から始まることで、「映画」でありながらも「映画」ではない日常がそこにはありました。
冒頭、夏帆が振り切れるほどやさぐれるシーンや、不倫のシーンは、後の実家シーンとのコントラストになると後からわかるまで、何だこの映画は。という印象。このシーンまでは単純に東京で頑張る一人の女性のお話でした。
途中から、パンダに乗った友達とのシーンが始まります。ここからいきなり夏帆の印象が変わり、東京の明るくふるまう夏帆の演技。いろいろあって実家(茨城)に帰ることになるのですが、そこからのシーンは非常に暗く、ストーリーも暗く展開していきます。
ここの"暗い"は、明るさもそうですが、過去の生死にかかわる出来事を思い出したりすることです。
家業の影響で壊れている家族をこのようなシーンで表現することで、主人公の生と死に対する感情が沸いてきて、おばあちゃんに会いに行くシーンでその思いが頂点に達し、主人公が実家に対する思いがスクリーンいっぱいに広がる。
昔から生と死にかかわってきた主人公にとって、生気が失せた東京での生活と、昔と変わらない実家の生活の違いに感極まってしまう主人公は、本心では実家が大好きなこと、東京での生活を変えようと思っていることに気づいていく物語。
ストーリーが素晴らしいことに加え、ブルーアワーに高速を走る映像で挟み、(今、茨城に住んでいること)が相まって、ラストの入れ込み方。
表現方法としてはベタなのかもしれないが、ラストのラストでもってきてエンドロールまでの間隔が素晴らしいし、映画を通して非常にテンポが良い、素晴らしい作品だった。
劇中、夏帆の視線が思ったところでは無かったり、カット割りが想像したものと違うシーンが多く、アス比で日常を表し、ストーリーでも日常を描いているところで、ちょっとしたアゲインストの風を吹かせている感じも、なかなか堪らない。
すべてはラストが物語っていた。