「迫力バトルとスピード移動の快楽で、白目を剥く薄いドラマを補完した怪獣バトル物は、こうあれ!な快作。」ゴジラvsコング ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)
迫力バトルとスピード移動の快楽で、白目を剥く薄いドラマを補完した怪獣バトル物は、こうあれ!な快作。
前作の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は怪獣バトルの出来映えが良かったが、それ以外のドラマやサスペンスを、描けないのかもしくは興味が無くて描かずに放棄する決断で振り切った作品になっていたが、そのあとを受けた本作は、ドラマ部分をコンパクトにまとめて、編集されており、本来長時間になる大作にも関わらず110分の尺がとてもいい。(五時間くらいのフッテージがあるらしいが)
前作と同じ導入から、主要な登場人物を紹介して、ゴジラのひと暴れまで無駄がなく語られる早いテンポで、先ずはゴジラの凄さを再確認させてからの、謎を提示して繋ぐ脚本も前作と比べてうまい。
登場人物も軍人と科学者などが殆どであったレジェンダリーの他のモンスターシリーズとは違い、妻を亡くして陰謀史観配信を行なっているバーニーやガールフレンドに付き合って行動する同級生のシュシュなどの市井の人々も加わっているのは好感が持てる。ドラマもコング側とコングロマリットの謎を追う側に2点に分かりやすくテンポも良い。
そして特徴的なのが、次々と変わる舞台やスケールの大きな移動が、多くてコング側や企業の秘密を追うバーニー達も常に車やヘリや船や高速移動トンネルなどで、水平方向と地球の中!を垂直にと移動を繰り返して舞台が変わり映画に疾走感を与えている。
最大の見せ場であるゴジラやゴングのバトル場面も工夫を凝らしており、冒頭のオーソドックスなゴジラの襲撃やゴジラVSゴングの海上での戦いと最後の香港で夜から明け方にかけての三つ巴のバトルまで見せ場の連続で十二分に堪能出来る。
本作のメインでこれまでの凶暴で純情なイメージだったキングコングが、森の賢者のオラウータン的知性と優しさを備えたキャラに変わり少女との交流場面も丁寧に描かれているのも特徴で地下世界での祭壇や王座など新たな設定なども追加されておりサーガ的立ち位置になっている。
その影響なのか前作で地球の王的存在になったゴジラだが、今作の後半は、若干噛ませな役な立場になっている。
懸念したドラマ部分も悪くないが、残念なのは日本代表なのに殆ど目立たない小栗旬で、風貌がオダギリ・ジョーの下位互換に見えて、肝心の演技も力強さもキレも無く無難にこなしている印象で、最後に白眼を剥いて昇天する場面など後年にバラエティなどてネタにされるのでは?と思うほどヒドい。
たぶん人気や話題だけが先行して映画やドラマで代表的なキャリアを残してないのが、アメリカ側にも見抜かれてのあの扱いかな?
ただ出来上がった映画でのあの扱いなのに、公開前の宣伝に出てニコニコしている小栗旬を見ているとイイ奴なのか家族を人質にされているのかは分からないが、以前に日本/香港の合作映画『孔雀王』に出て撮影現場の扱いに激怒して公開前の宣伝インタビューで現場をボロカスに言った三上博史よりは、断然に偉いと思うし、この人どちらかと言えば製作などのプロデューサーの方が向いているかも。
まあ今度の大河ドラマでは主役をやるみたいなので精進して下さい。
それ以外に気になるところやツッコミどころも多数あるが、今回の怪獣マニアの制作者達は色んな怪獣特撮物の要素をぶち込んで、きていると感じて地球空洞説のところは、円谷プロのマイナー怪獣映画の『最後の恐竜~極底探検船ポーラーボーラ』や等身大のコウモリ怪獣などの風貌は『緯度0大作戦』とかからインスパイアされているのかな。
地底世界への移動するワープ風場面やコングが石斧を持つ場面は『2001年宇宙の旅』かな。
前作の核兵器のよるゴジラの復活場面も唖然としたが、今回のゴジラに逆心臓マッサージ?を受けて心臓停止したコングに電気ショックで蘇生させる場面での雑な理屈と方法(引っ叩けば直る昔のアメ車か!)や、意識を取り戻したら突然コングの主観カットになったり、ゴジラが吐く放射熱線が香港から地球を貫いたりとビジュアル的には面白いのでまぁいいかな。
個人的にメカゴジラのデザインはイマイチカッコよくないのが不満。
ともかく全体的には、迫力バトルとスピード移動の快楽で、文字通り白目を剥いてしまう薄いドラマを補完した快作で怪獣バトル物は、こうあれ!と思う。
あと、東○は小栗旬さんの家族を解放しろ!