記者たち 衝撃と畏怖の真実のレビュー・感想・評価
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報道の現状
原題は「Shock and Awe(衝撃と畏怖)」で、イラク戦争を開始した
空爆の作戦名です。
邦題は「記者たち~衝撃と畏怖の真実~」です。
邦題の方が映画をイメージしやすいです。
「多様で独立した自由なメディアこそ米国の民主主義にとって重要だ」
というビル・モイヤーズの言葉で始まります。
ビル・モイヤーズは、1965年-1966年に、リンドン・ベインズ・ジョンソン
(LBJ)米国大統領のホワイトハウス報道官を務めた人物です。
「もし他のメディアが政府の広報に成り下がりたいならさせておけ。
政府が何か言ったら必ずこう問え”それは真実か”」という言葉が
今の日本も響くと感じました。
「ニューヨーク・タイムズ」、「ワシントン・ポスト」だけが権力に
屈することなく、ペンタゴン・ペーパーズを報道し始めました。
「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」を鑑賞すると理解できます。
報道されなければ、どうなっていたのでしょうか?
「ワシントン・ポスト」だけが権力に屈することなく、
ウォーター・ゲート事件を報道し始めました。
「大統領の陰謀」を鑑賞すると理解できます。
報道されなければ、どうなっていたのでしょうか?
「ガーディアン」、「ワシントン・ポスト」だけが権力に屈することなく、
スノーデン事件を報道し始めました。
「シチズンフォー スノーデンの暴露」、「スノーデン」を鑑賞すると
理解できます。
報道されなければ、どうなっていたのでしょうか?
他のメディアも追従して、政府を追及し、真実は明らかになりました。
ナイト・リッダー紙という新聞社が、「イラク政府が大量破壊兵器を所有
していない」という真実を報道しようとしましたが、報道できずに、
他のメディア、もちろん日本のメディアも、米国政府の主張である
「イラク政府が大量破壊兵器を所有している」と報道し、イラク戦争が
起き、戦死者は5万人以上、負傷者は10万人以上、民間の死亡者数は
10万人から50万人となりました。
米国政府のイラクに大量破壊兵器があるという嘘の主張に
世界でいち早く支持したのは、自民党政権です。
日本もイラク戦争に参加しました。
米国政府は、嘘を認めました。
自民党政権では、嘘をまだ認めていません。
民主党政権で、2012年、外務省が検証結果のうち4ページだけを発表した
そうです。
日本の報道機関は、外務省の検証結果を全く追及していません。
だから私は検証結果を知りません。
この映画は、2001年から2004年までの米国の情勢を説明しているので、
物語についていくのは、大変です。
プレイム事件を描いた「フェア・ゲーム」を鑑賞しておくと、背景が
理解できます。
なぜ、イラク政権が大量破壊兵器を所有していると疑われたのは
石油食料交換プログラムにより、イラク大統領のサダム・フセインが、
1兆円を超える資金を得ていたことも理由の1つだと思います。
「バクダッド・スキャンダル」を鑑賞しておくと、背景が理解できます。
米国同時多発テロを描いた「ユナイテッド93」、「華氏911」、
「ワールド・トレード・センター」、アフガニスタン戦争を描いた
「ホース・ソルジャー」、「ローン・サバイバー」、
イラク戦争を描いた、「グリーン・ゾーン」、「告発のとき」、
「アメリカン・スナイパー」、「ハート・ロッカー」、
ウサマ・ビン・ラディンの殺害を描いた「ゼロ・ダーク・サーティ」
を鑑賞し、理解できるくらいでないと、物語についていけません。
籾井勝人NHK会長は、「日本の立場を国際放送で明確に発信していく、
国際放送はそういうもの。政府が『右』と言っているのに我々が『左』
と言うわけにはいかない」と答えています。
NHK政治部記者兼解説委員の岩田明子は、「取材、報道をする上で
最も重要視している事は何か」と尋ねられて、「国益にかなうこと」
と答えています。
政府の広報に成り下がりたNHKは、大本営発表を垂れ流しているだけで、
存在価値はなく、受信料を支払う気になりません。
日本がイラク戦争を支持し、自衛隊をイラクに派遣したのは、NHKが
「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」
からであり、「国益にかなうこと」として報道したからだということです。
政府の広報に成り下がりた他のテレビは観ませんし、新聞も読みません。
ピエール瀧容疑者の「麻雀放浪記2020」を公開するような邦画も鑑賞しません。
洋画は、調査報道の役割を担っていると感じているので、鑑賞する価値
があります。
2003年3月22日、世界中でイラク戦争に対するデモが起きました。
ドイツ各地で計20万人、イタリアで15万人、英気にで50万人、
フランスで7万人、ギリシャで10万人、米国で10万人など計60カ国、
600都市で約1000万人が参加し、60年代のベトナム戦争時を
上回る規模のデモになりました。
日本は、大きなデモにはなりませんでした。
パンフレットは、よくできているのいるので、映画を理解したい人には
お勧めできます。
パンフレットによると、米国でも英国でも、メディアは、過ちを長期に
わたり徹底的に検証したそうです。
メディアにとって重要なことは、過ちを検証する勇気があるのかだと
教えてくれました。
過ちを検証する勇気のない日本のメディアはただの「クソ」です。
今はなきナイト リッダーへ - 孤立する真実
ナイト リッダーは、この後、売却されて、更に理由は不明だが間もなく解体されてしまった。
この踏み込んだ取材が原因だったのだろうかと強く疑念を持ってしまう。
ナイト リッダーは、日本ではあまり知る人のいないニュース配信会社だった。
90年代半ば過ぎまで、僕は、石油関連の情報が欲しくて、会社に頼んで毎週郵便で送られてくるナイト リッダーのニュースレターを読んでいた。
石油関連の情報はまあまあ充実していて、日本でもそういう関連の仕事をしてる人は読んでいたように思う。
ただ、あんな会社が(ごめんなさい)、この真実に一番近いところにいたとは!という感想を持ったことも事実だ。
つまり、政治的に踏み込んだニュースに肉薄するような配信会社というイメージはなくて、エンディングに二人の記者のテレビのインタビューシーンが出てくるが、あの受け答えの感じだけだと、それ程エスタブリッシュメントな会社じゃないよね(言葉足らずで申し訳ない)という印象なのだ。
ただ、冒頭に出てくるように、独立したメディアが、アメリカの民主主義を支えているというのは改めて重要なことだと認識させらる。
記者の仕事は淡々と事実を掘り下げることだ。
この映画には、真実を暴くといった映画にありがちな過度なサスペンスや、緊迫した場面、強面の悪人が裏で仕切るストーリーはない。
映画としては、エンターテイメント性が足りないという人も少なくないと思う。しかし、この映画の演出には、いつの間にか、いくつもの大小の嘘が積み重なり、真実となってしまったことこそが怖いのだと訴えているように感じるところもあるし、新聞記者の仕事としては、地道で地味な取材や、文章を推敲する場面とか、日常の実像感は逆に良く出ていたのではないかと思う。
僕は、世界貿易センターのビルに入っていた会社で働いていた友人がいて、彼はやや遅刻がちに出勤する傾向が幸いして助かったが、彼の友人の中には亡くなった人が何人かいて、今でも、テロの話は、彼の前では出来ない。
こんな状況で僕は、イラクが、この背後にいる、或いは、大量破壊兵器を所有している可能性が高いと思い込むようになっていた。大手メディアのニュースに完全に依存していたことや、何か憎悪のようなものを抱えてしまったからだ。
その後、イラクには核兵器の製造施設も、化学兵器もないことが明らかになった。
しかし、既に、多くの人命が失われていた。
映画では、バイデンも、ヒラリークリントンもイラク侵攻に賛成したと伺える場面が出てくる。
憎悪は、人の冷静な判断を狂わせる。
一般の人だけではなく、正確な判断が要求される政治家や軍人もだ。
また、憎悪に乗じて、影響力を回復させたり拡大したい人間が跳梁跋扈し、真実を覆い隠そうとする。
こうして真実は孤立するのだ。
ニュースから何を読み取るか、何が真実か、発信している側の意図は何か、目的は何か、そして、どこに導こうとしているのか。
僕たちは考えているか。
僕たちは誰かに煽られていないか。
あの時、身近で被害に合いそうになった友人がいた為に憎悪を人一倍感じてしまった人間として考えてみたい。
今世界中で起きている分断の背景は何か。グローバリゼーションの中で阻害されていたのは誰か。何故か。反対に、分断の結果利益を得る人はいるか。いるとしたら誰か。そして、僕たちは結局どこに向かうのか。
日本にもメディアがらみでは、これほどではないにしても、似たようなことがある。
特定の新聞記者の質問を巡る、記者を排除しようとする政治家とメディア側とのやり取りは記憶に新しい。
いくつかの学校法人を巡るトラブルで、政治を批判的な目で追うメディアを、不公平と言って拗ねる政治家がいて、お笑いタレントとアイドルとランチしてイメージアップをはかっているのには驚かされた。
ゴシップはどうでも良い。
特定のイデオロギーを、さもアイデンティティのごとく振りかざす媒体もどうでも良い。
真実を明らかにしようと研鑽するメディア、或いは記者は世の中には必要なのだと改めて感じさせられる映画だった。
報道と真実
真実を追い求める「記者たち」の話。このテーマのドラマは「ペンタゴン・ペーパー」以来かな。私が見てないだけかもしれないけれど、ネットニュースの時代で記者のドラマは描きにくくなっているのかもしれないですね。
捻じ曲げられた情報を元に、イラク戦争に突き進もうとする米国を、止められない報道記者が描かれる。深刻な話だが、描く対象が「記者たち」なので、事件をドラマティックに語ることを脇に置きためか、かなり軽いタッチで描写されていた。2人の記者とその上司との掛け合いが、なんとも微笑ましく、楽しい。例えば、届いた脅迫メールのプリントアウトを、深刻な面持ちで上司に差し出して相談するが、上司は黙ってメールの誤字に赤入れして、平然と二人に返す。といったウィット溢れるシーンが散りばめられている。
現実には、9.11の捌け口を求めるように、政府も周囲の報道もがイラク侵攻すべしとの論調。大量破壊兵器があると言う事実が見つからないにもかかわらず、それが存在する証拠が見つからないまま、戦争へと世論が傾いていく。大手報道機関が、すべて事実を曲げられた政府の発表を報道する中、彼らだけが事実を確認しようと走り回り、誤りでは無いかとの報道を続け、孤立してゆく。
さて、映画としてはどうか。題材としては良いのだが、もう少しドラマ性があっても良かったと思う。ドキュメンタリーに近く描きたければ、記者同士の軽口や生活の描写はもっと絞っても良かった。ストーリーテラーとして降りたければ、苦悩や孤立をもう少し脚色しても良いと思う。そうした中途半端さは、少し残念だった。
【アメリカ政府の捏造に屈したジャーナリズム、ジャーナリスト達の姿をほろ苦く描いた作品。】
- 2001.9.11 ⇒ 2006.12.30 ⇒ 2011.5.2 映画冒頭のイラク戦争で脊髄を損傷した若き兵士の言葉とラストが秀逸である。ー
・大量破壊兵器保持を理由にフセインを処刑したアメリカ政府。しかし、9.11を真に指導したウサマビンラディンがネイビーシールズに処刑されたのはフセイン処刑から4年後。
その間にどれだけの命が犠牲になったのか?
・これは現日本首相が同盟国と言っている国で実際に行われた政府の捏造の記録である。
・真実を突き止めながら、ブッシュ政権の暴走を止められなかったジャーナリスト達。又は政府のフェイクニュースをそのまま大衆に流した大手新聞会社。
<今作を通して、ロブ・ライナー監督が映画を通し、問いかける事は深く重い。>
<2019年3月29日 今は無き、TOHOシネマズ名古屋ベイシティにて鑑賞>
真実の記事は「足」で書くもの
『スポットライト』や『ニュースの真相』など、調査報道を題材にした実録映画はとかくシブくて地味になる。
でもそれと同時に、重厚な“チームもの”映画として見応えがある。
「記事は『足』で書くもの」とは、業界内でよく言われる言葉だが、まさに本作に登場する記者たちは、当事者に会ったり現場に赴いてネタを得てくる。
91分という短いランニングタイムでありながらも、そうしたジャーナリズムの本質をしっかりと描いている。
主要キャスト皆良いが、中でも監督にして支局長を演じたロブ・ライナーの、飄々としていながら頼れるボスぶりが観ていて痛快。
あとウディ・ハレルソンの妻役に、政治情勢が激しかった旧ユーゴスラビア出身のミラ・ジョヴォヴィッチを配したのは意図的か。
トミー・リー・ジョーンズ扮するジョー・ギャロウェイが、原作者として関わった映画『ワンス&フォーエバー』について、憮然としたコメントをするシーンも笑った。
先に『バイス』を観ていたせいもあるが、とにかく内容がコインの裏表。
劇中、チェイニーやラムズフェルドの記録映像が出てくるが、クリスチャン・ベールとスティーブ・カレルが、『バイス』でいかにそれぞれをソックリに演じていたかが、よく分かる。
支局長の、「我々は若者を戦場に送る政府の味方ではない。戦場に向かう若者の親の味方だ」という言葉が染みる。
真実の報道
9.11同時多発テロからイラク侵攻へと向かっているアメリカ、イラクが大量破壊兵器を所有しているという情報が報道される、この報道に疑問を持った、弱小新聞社ナイトリッダー社の記者達は真相を追求しようと奮闘するが…スタンドバイミーで有名なロブライナー監督が手がけた、真実に基づくストーリーなのでリアリティーがあり、見応えありな作品でした。真実を追い求める熱い記者達の姿に感動!!
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