「ジャーナリズムとは」記者たち 衝撃と畏怖の真実 doraさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャーナリズムとは
ジャーナリズムや国民の知る権利について考えさせられる映画である。
自分もイラク戦争は、アメリカという正義が悪の枢軸を成敗する物語と信じていた。しかし、真実は既にブッシュやブレアが認めている様に、嘘で始まった戦争であった。ましてや、9.11直後の状況においては、この記者たちの様に真実を発信してくれる人がいたとしても、世間に満ちている愛国心にかき消されてしまう。この教訓を我々は学ぶべきだとこの映画は訴えているのだろう。
だけど、教訓は活きているのだろうか。例えば北朝鮮の核問題をこの映画に当てはめてみてはどうだろうか。いま日本で北朝鮮が悪の枢軸だということに疑問を挟む人はいない。まさに劇中でもブッシュが「イラク、イラン、北朝鮮」を悪の枢軸と呼んでいた。しかし、イラクは悪の枢軸ではなかった事が後に判明した。では、北朝鮮はどうか。冷静に事実を追求してみるべきではないだろうか。
ここからは私の知る範囲ではと言う話になるが、日本の大手メディアでは、米朝間の合意→北朝鮮のミサイル発射と言う紹介をする事が多い。だから、北朝鮮はとんでもない国だとなる。だけれど、この矢印の期間に有ったのがまさにこの映画の出来事であった。即ち、北朝鮮に敵対行動は取らないと合意した米国が北朝鮮を悪の枢軸と敵対視し、同じく悪の枢軸と呼ぶイラクに侵攻し、フセインを殺害した。そして、嘘をつかれ、軍事力で恫喝された北朝鮮が、体制を守る為に核開発に突き進んだと言う出来事を説明するメディアはいない(その是非は別問題)。
劇中で米国はイラクを民主主義の国にすると言っていたが、民主主義においては国民一人一人が判断する為の情報をジャーナリズムが提供する事が必須である。しかし、米国でも日本でもジャーナリズムが機能不全に陥っている事は皮肉である。