「ヒーローのリアリズム」ミスター・ガラス 4maさんの映画レビュー(感想・評価)
ヒーローのリアリズム
なんとなくアンブレイカブルの時の「コミックは現実の伝達手段」という設定にモヤモヤがあったものの、実際はあの組織が公になる前に潰してきただけなんだと思うとスッキリしたというか、妙にリアルに感じる。
実際ラストの衝撃は大きかったものの、ミスターガラスの目的は極論を言ってしまえばコミックの世界の実現であって、なんとなくハッピーエンドっぽい雰囲気で終わるがそれが結果世界にいい影響をもたらしたかは全くわからない(まぁミスターガラスもヴィランなので当然といえば当然か)。例の組織の言い分も理解できないわけではない。実際、コミックや映画の中でヒーローがより大きな悪の原因となる例は数知れない。バットマンという存在自体がゴッサムに狂ったヴィランたちを呼び込んだり、トニースターク(コミックではハンクピム)がウルトロンを作ってしまったりなどなど。そうでなくても、ヒーローがいるせいでヴィランはより大きな力を使わなければ目的を達成できないわけだから、それらが衝突すれば被害が甚大になるのは必然なのかもしれない。そう考えれば、組織の方針は実に合理的だと言えよう。「虚偽の上に成り立つ秩序」か、「真実を知るが故に生じる混沌」か、どちらが正しくあるべきなのかを考えさせられる。
しかしこれは映画という作り物である以上、あのような結末になったとしても我々はいくらか気楽な状態で夢や希望を感じることができた。アンブレイカブルで恐ろしかったのは、イライジャの犯したその手段に対してはあり得ないと感じながらも、現実にヒーローがいるのであればこの目で見てみたいという純粋な彼の気持ちに少しでも共感してしまったことだ。この映画は我々にそうした子供心を思い出させてくれ、近年のアメコミヒーロー映画とはひと味違ったリアルな夢を見させてくれた。