がんになる前に知っておくことのレビュー・感想・評価
全3件を表示
科学的知見に基づいたがんについての映画
本作は、娯楽作品として面白いかというと、そんなに面白くないかもしれない。しかし、ためになるかと聞かれたら、めちゃくちゃためになると答える。がんに関する信頼できる情報はどう集めたらよいか、どんな支援施設があり、どんなことに気をつけるべきなのかなど実践的な情報が盛りだくさんだ。スピリチュアル要素は全くないのも素晴らしい。がん研究センター、がん医療の現場の医師、がん経験者の立ち上げたNPOなど多岐にわたる組織と人々との対話を通じて、がんとの向き合い方を学べる。
自分がもしがんと診断されたら、まずこの映画を観たいと思った。今はがん=死ではなく、がんと共存できる時代だという言葉が印象的だった。治療と一口に言っても幅広く、どんな治療が自分の生活には向いているのかなどの選択を冷静にするのが重要なのだと学んだ。
本作は映画も素晴らしいが、パンフレットが144Pもある充実の内容で、本編の書き起こしと映画ではカットされたインタビューに、がん情報のアクセスリストなど役に立つ情報満載だから買って家に一冊置いておくと心強い。
勉強になりました
闘病記などではなく、ガンになった当人や家族が、慌てず適切に対応していくための基本として知っておく事が紹介されています。個人的には患者目線と患者の感情に重きを置いたピアサポートやマギーズ東京さんが新しい発見でした。お医者さんが全てをカバーする事は時間的にも難しいし、お医者さんはあくまで治療観点に重きがいき、患者の心までケアするのは難しい。そこは役割分担であり、そういった支援を行ってもらえる場所がある事を知れたのは良かった。また、販売されているパンフレットにはインタビューで映像化されてない詳細が記されてあり、こちらも価値が高いと思います。自分もしくはご家族、ご友人、大切な人達で、ガンになった方、いつかそうなるかも知れない事に備えたい方にとてもお薦めです。
NHKで放送しても十分お釣りがくる
本作はジャンルこそドキュメンタリーにカテゴライズされているが、いわゆるマイケル・ムーア作品のように問題提起をしていき、その顛末を追っていく内容ではない。
だから、「終盤でとんでもない事態になるのでは…」などと期待すると、大きく肩透かしを食らう。
ジャファル・パナヒの言葉を借りると、「これは映画ではない」。映画というよりNHKの医療番組に近い。
タイトルに『がんになる前に~』と付しているのは、日本人の2人に1人「がん」を患うという統計から。
それだけ日本人にとって、がんは身近な病気になっている。
しかし本作は、がんの恐ろしさをことさら強調したりはしない。
赤瀬川原平が認知症を「老人力」と提唱したように、みうらじゅんが親孝行を「プレイ」と定義したように、むしろ、「がんとどう上手く付き合っていくか」に重きを置いている。
それこそ、NHKで放送しても良いと思えるほど、「がん」について掘り下げている。
点数は三ツ星評価で採点。
全3件を表示