「史実をもりもりに盛った、濃厚なBL映画。」パピヨン たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
史実をもりもりに盛った、濃厚なBL映画。
1973年に製作された同名映画のリメイク。
濡れ衣を着せられ、流刑の地へと流された男「パピヨン」と、偽札偽造の罪で収監された男ルイ・ドガとの友情を軸に描かれるブロマンス脱獄映画。
パピヨンの相棒ルイ・ドガを演じるのは『ナイト ミュージアム』シリーズや『ショート・ターム』の、後のオスカー俳優ラミ・マレック。
ちなみに1973年版のオリジナルと、映画の元になった原作小説は未読です。
まず映画の冒頭で「この物語は史実に基づいている」と説明されますが、どうやらかなーーーり脚色されている様です。
詳しく史実を調べたわけではないですが、ルイ・ドガは実在の人物ではあるがパピヨンと脱獄を企てたことはない様子。
おそらく刑務所の中での出来事や、脱獄の手順などもかなり映画的に改変されているのでしょう。
まぁ、史実を基に映画を作る場合、大胆に改変すること自体はまったく問題ないと思いますし、それで映画が面白くなるならどんどんやるべきだと思います。
ただ、前述した様な映画の冒頭での説明や、映画のエンドロールの前の「ギアナの流刑地には8万人が送られ、多くは帰ってこなかった…」云々といった解説で分かる様に、この映画は囚人の人権を無視した悲惨な歴史があったということを強調しています。それならもっと史実に基づく物語にすべきなのでは?
まぁ、そうすると「パピヨン」のリメイクの意味がなくなりますが…
映画の内容はなかなか面白かったです。
主演の2人は素晴らしい演技を披露しており、パピヨンの豪傑感や、ルイの小心者感が非常によく出ていた。
この2人の関係は、もはや友情を超えて純愛にまで到達している。はっきり言ってこの映画はこの2人のラブストーリーです。
どんなに窮地に陥っても決して絶望せず、ひたすら現状を打開する策を練るパピヨンの姿にはやはり感動する。
とにかく漢気のある人物で、特に友情を深めるきっかけも無かったのにも拘らず、ルイを全身全霊をかけて守ろうとする。
非常に魅力的なキャラクターなので、彼の活躍が観たくてどんどん映画にのめり込んでしまう。
脱獄方法などはちょっーと説明不足というか、リアリティに欠けるというか…
2度目の脱獄の時、ボートをどうやって調達したのかよくわからん。
それと3人目と4人目の仲間の影が薄い。4人目に至ってはそこら辺にいた奴をなんとなくスカウトしただけ。
あの脱獄がサスペンス的な盛り上がりの頂点なのだから、もっとチームものとしての面白さが欲しかった。
パピヨンが懲役房に2年間閉じ込められていた間に、ルイがどのように振る舞って所長の信頼を得たのかも描くべきだと思いました。
あとは悪魔島とかいう謎の流刑地。あそこの展開いるか?
なんかよくわからない謎の島で監視官もいないし、なんなのあそこ?
脱獄映画に於いて、溜まりに溜まったフラストレーションを最後に爆発させるということが一番大事だと思うのですが、そこが無かったのが残念。
全体的に起伏に乏しく、のペーっとした映画という印象。
決してクオリティが低いわけではないし、結構楽しめたのだが、この題材ならもっと爽快感が欲しかった。