劇場公開日 2019年6月21日

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パピヨン : 映画評論・批評

2019年6月13日更新

2019年6月21日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

主演二人が好演! 決して古びることのない、抑圧との闘いの歴史

1931年に無実の罪で終身刑を宣告され、フランスのパリから「緑の地獄」と呼ばれた南米ギアナの刑務所に送られたものの、13年かけて遂に脱獄に成功したアンリ“パピヨン”シャリエール。彼の驚くべき自伝小説「パピヨン」が映画化されるのは今回で二度目になる。

たしかに題材としては極上のネタではあるけれど、デンマーク出身の監督マイケル・ノアーにとっては大変なプレッシャーだっただろう。というのも、フランクリン・シャフナーが監督したオリジナル版で、主人公パピヨンと彼の相棒ルイ・ドガを演じたのは、当時肉体派と知性派それぞれのナンバーワン俳優だったスティーブ・マックイーンダスティン・ホフマンだったのだから。ふたりにとっても生涯の名演とされるこのバージョンを越えるのは、「緑の地獄」からの脱出と同じくらい困難なミッションだったはず。

しかし刑務所を舞台にした「R(原題)」で世に出たノアーは、パピヨンが収監された刑務所という場所に注目。囚人が課せられる強制労働の目的が、当時フランスの植民地だったギアナからの資源収奪にあったこと、そうした労働の積み重ねが、宗主国フランスの首都パリの繁栄に繋がっていたことを映像でさりげなく語ってみせる。

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そんなノアーに選ばれた俳優たちも、プレッシャーを跳ね返す好演を見せている。パピヨンに扮したハナムは、ガッツ溢れるマックイーンとはひと味違う佇まいが印象的。内なる闘志を滾らせた新たなパピヨン像を構築している。ルイ・ドガを演じるラミ・マレックの抑制された演技も素晴らしい。フレディ・マーキュリーになりきった「ボヘミアン・ラプソディ」のときとは全く異なるキャラになりきっており、魅了される。

そして今回の「パピヨン」を観てあらためて感じたのは、テーマが普遍的であること。原作がフランスで刊行された1969年は、強権主義のド・ゴール大統領が辞任に追い込まれた年だった。シャフナー版の脚本を書いたのは、赤狩りでハリウッドを追放されながら偽名で脚本を書き続け、のちに復帰した名脚本家ダルトン・トランボである。「パピヨン」の歴史自体が抑圧との闘いの歴史なのだ。

今も世界には、抑圧やいわれなき差別に苦しむ人々が大勢いる。自由を求めるパピヨンの闘いは、だから決して古びることはないのだ。

長谷川町蔵

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