「で、彼女はいったい何者だったのか?」キャプテン・マーベル うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
で、彼女はいったい何者だったのか?
無理もないと思う。
レビューのポイントが一気に落ちているようだ。記憶している限り、公開前のご祝儀ポイントは4.2程度で推移していたと思うが、ステマとアンチのせめぎあいも含み、大作映画の公開時に起きる現象として最終的には3.8ぐらいまでは落ちるんじゃないかと思う。相対的に、そこら辺がこの映画のおすすめ度合いということになるのだろう。
そもそも、非常にうまい展開でここまでプロモーションを盛り上げてきたと思う。『アベンジャーズ・インフィニティ・ウォー』で、キャプテン・マーベルとは何者か?という問いかけを発し、ほぼ一年かけてオスカー女優がマッチョでヒップなスーパーヒーローに変身していく過程を発信していった。それこそが彼女のオリジンで、まさに「ヒーローであるにふさわしい」というコンセンサスを作り上げていった。
実際には、ポストプロダクションの段階で、もうワークアウトの必要もないだろうに、ブリー・ラーソンのインスタには定期的にトレーニングの光景と、粗野で天然な彼女のキャラクター。キメるときにはとことんキマるドレッシーさも含めて、マーベルのヒーローに抜擢される以前とは段違いの注目を集める存在になり、ファンの飢餓感をあおりにあおった。
そして、満を持してリリース!
当然、「面白くないはずがない」(よね?)という気持ちで映画館に足を運んだが、どうやら期待しすぎたらしい。今までのマーベルとの長い付き合いがある。そのマーベルをしょって出てきたんだから、最強なんだから、絶対面白いんだから、という気持ち。
それは、いい意味で裏切られた。
たぶん、あと2回は劇場に見に行くとは思うが(吹替え版と3Dを)、結局、そういうコアなリピーター向けにずいぶん濃いめに味付けがなされている。マーベル映画を見ない人がこれを初見で理解できるんだろうか?今までのヒーローには必ずそれに匹敵する強いヴィランが存在した。今回、この映画にはキャラクターがたくさん登場するが、それほど強そうには見えない。しかも彼女、初めて地球に降り立ってから、四半世紀のあいだ、いったいどこに消えてしまっていたのか。
ニック・フューリーの非常呼び出しに呼応する形で地球に戻ったマーベルは、留守のあいだに地球でどんな緊急事態が起きたのか知らないまま。それどころか、空軍のパイロットで、負けず嫌いの少女で、女性にはほとんどチャンスのない野球の選手で、エイリアンの体術マスターで、スクラル人の野望を阻止するエージェントである彼女は、それぞれに違う名前で呼ばれ、あげくにキャプテン・マーベルとして世界に降り立つ。
ケビン・ファイギ以外に、この流れを完全に理解している人がいるんだろうか?もしかしたら、監督ですら、映画の全体像が把握できていないんじゃなかろうか?多様性という言葉に踊らされ、観客が置いて行かれている、いま、その寸前で踏みとどまっている状態のように思える。
単独でこの映画を評価はできない。『アベンジャーズ・エンドゲーム』を見てから。そこで、彼女がどんな活躍をするかによって、真価が分かる。そのための、壮大なプロモーションを見せられている気分になった。もちろん、映画としてきちんと完成されている前提での話だ。
とにかく、「女性でもヒーローになれるんだよ」というメッセージが強く込められた映画だった。
2019.3.15