「立ち上がり続ける不屈の記憶」キャプテン・マーベル 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
立ち上がり続ける不屈の記憶
MARVELスタジオ初の女性ヒーロー主演映画
『キャプテン・マーベル』がいよいよ公開!
これまでのMCU作品や、もっと遡ってX-MENシリーズ
でも男顔負けの女性ヒーローは登場していた訳だが、
女性ヒーローが単独主演を飾る作品は実は初だそうで。
黒人ヒーロー単独主演作『ブラックパンサー』が超絶
ヒットを放ったり、DC映画では『ワンダーウーマン』
が公開されたりと、世のダイバーシティ遵守の流れを
受けた映画が続々公開されている昨今だが、
ぶっちゃけ自分はどんな性別/人種が演じようが
各キャラクターの行動論理に納得できてエンタメ
として楽しめれば良かろうなのだァァッ!という
お気楽思考人間なので、社会学的見解はもっと
ちゃんとした人たちに譲るとしてレビューします。
...
予告を観た時『アクションシーンは少なめなのでは?』
と感じていたが、実際アクションシーンの量と密度を
物足りなく感じた事は最初に述べておこう
(格闘シーンの量とかクライマックスの空中戦とか)。
だが物語に乗せてテンポよく展開されるアクションは
全編にうまく散りばめられていて飽きなかった。
それに、この映画が一番面白いのはそこじゃない。
主人公キャロルや他登場人物たちのやりとり、そして
キャロルの記憶を巡るミステリ的要素が本作の見所だ。
まずは主人公キャプテン・マーベルこと
キャロル・トラヴァースのバッドアスな魅力!
タフで生意気、すました顔してイタズラ好き、
危険な状況でも物怖じせず、相手を食ったジョークを
飛ばせる肝っ玉の持ち主。にっこり笑うおばあさんを
全力でぶん殴ったり(けどスタン・リーには優しい)、
盗んだバイクで走り出したりと不良性感度十分である。
敵を待ち構える時に足ブラブラさせてる所とかカワイイ。
キャロルに振り回される若きフューリーは、後年の
厳格な雰囲気がウソのように茶目っ気たっぷり!
頼りなさげで三枚目に見えて、元兵士としてキャロルの
悩みに気付いていたり、新人コールソン(久し振り!)
に慕われてたり、面倒見が良いのは昔からだった様子。
皿洗いのシーンでのキャロルとのやりとりが好き。
スーパーパワーも無いのに危険も省みずにずっと
自分探しを手伝ってくれた彼を、キャロルも
深く信頼するようになっていたんだろう。
奸知に長けた仇敵と思いきや実は家族や仲間のために
戦わざるを得なかった人情派タロス(厳格さとユーモア
を両立させるベン・メンデルスゾーンが素晴らし)、
キャロル=ヴァースのメンター(精神的指導者)と
思いきや彼女を狡猾に利用していたヨン・ロッグ、
”生前”の彼女を知る親友マリアやその娘など
との丁々発止のやりとりが楽しい楽しい。
そして本作で一番の笑い所をかっさらうキュートなネコ、
グース! 大の大人達がにゃんこにビビる姿も笑えるし、
宇宙遊泳とか猛攻後の”にゃーん”とか危険過ぎる可愛さ!
文字通りネコ被ってる訳ですね。ヘイヘイ座布団カモン。
フューリーが左眼を失ったいきさつも……
さぞかし壮絶な過去があると思いきや……
これまで語られなかったのも無理はない(笑)。
あとですね、僕は洋楽、特に'90年代グランジの
流れを汲む曲が大好きでですね、その点本作の
挿入曲にはかなりご機嫌になれましたよ。
garbage とか R.E.M.とかめっさ良いし、キャロルが
自分の記憶を取り戻すシーンで流れるNirvanaの
『Come as You Are』なんて、場面と歌詞が
マッチングしまくってて最高of最高ですね。
"君らしくいろ、かつての君らしく
古い記憶のように、記憶のように"
...
キャロルの記憶を巡るミステリー。
記憶の糸を手繰り寄せて辿り着いたのは、
超人的な力を得た理由と、彼女が戦う理由。
キャロルが放つ強力な"フォトンブラスト"は彼女が
偶発的に得たスーパーパワーだが、彼女の真の強さは、
彼女をヒーローたらしめているのは、そこではない。
女には無理だ、お前には無理だ、お前にできるものか、
扱えるものか、でしゃばるな、諦めろ。
倒れて砂を噛むたびにそう周囲から言われても、
彼女は倒れたままでいることをよしとしなかった。
己の限界を他人に決められることをよしとしなかった。
憧れていた”高く遠く速く”を目指し、何度でも何度でも
地べたから立ち上がり続ける。それが彼女の真の力であり、
親友マリアが「世界で一番強い人」と称賛する理由だ。
マリアがキャロルを「お帰り」と抱き締める場面に涙。
スーパーパワーを得る前から、彼女の心はヒーローのそれだった。
...
スティーブ・ロジャース=キャプテン・アメリカと
彼女はちょっと似ている。内に備えた気高く善良な
英雄の心に、超人的な力がついてきた結果が彼女だ。
一方、物語の始めからスーパーパワーを持つ主人公が、
過去の自分に戻ることでヒーローとなる展開は、
これまでのヒーロー映画としてもちょっと珍しい
シナリオ運びじゃ無かろうか。
アクション要素はやや物足りないかもだし、
キャロルの記憶を巡る部分で父親や家族に関する部分も
もっと描いて背景を掘り下げてほしかったとも思うが、
ミステリ的な筋運びの面白さ、ユーモラス(人間的)な
キャラ同士のやりとり、クール&パワフルな主人公の
魅力でさすがの高水準エンタメに仕上がってました。
判定3.75くらいだが、うーん、どうしよ、4.0判定で!
さあ、いよいよ来月は『アベンジャーズ/エンドゲーム』!
キャプテン・マーベルはどう本編に絡むのか?
盟友フューリーと彼女は再会できるのか?
サノスVSグースの決戦の行方は?(それは多分無い)
超楽しみです。
<2019.03.15鑑賞>
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余談:
オープニングで泣きそうになるとは。
スタン・リー仕様のMARVELロゴ。
弔辞は彼の最後の銀幕登場作
『~エンドゲーム』に取っておきます。
ぴっぴすうさん、浮遊きびなごと申します。
そちらのレビューに直接返信できず申し訳無い
ですが、コメントありがとうございました!
自分の長い駄文にお褒めの言葉いただき恐縮です。
この映画自体が笑って泣ける作品だったので、この
レビューも殆ど“おんぶにだっこ”という奴ですが……
本編の見せ場を多少でも思い出してもらえたなら
是幸いです! それでは!