「少年たちの痛すぎる青春…。90年代のアメリカカルチャーに対する理解度で面白さが大きく変わる、かも。」mid90s ミッドナインティーズ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
少年たちの痛すぎる青春…。90年代のアメリカカルチャーに対する理解度で面白さが大きく変わる、かも。
90年代半ばのロサンゼルスを舞台に、年上の青年たちへ憧れを抱く少年の葛藤と成長を描く青春映画。
監督/製作/脚本は『ナイト ミュージアム2』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』などで知られる俳優のジョナ・ヒル。
主人公スティーヴィーの母、ダブニーを演じるのは『ファンタスティック・ビースト』シリーズや『エイリアン:コヴェナント』のキャサリン・ウォーターストン。
スティーヴィーの兄、イアンを演じるのは『スリー・ビルボード』『レディ・バード』のルーカス・ヘッジズ。
映画ファンの間でなにかと騒がれる映画会社「A24」の作品を初鑑賞!
名優ジョナ・ヒルの初監督作品ということで、ちょっと観てみようか、という気持ちになりました。
あらすじからもわかるように、お話はめちゃくちゃ地味。ワルに憧れる13歳の少年の一夏の思い出と挫折という、王道の青春映画。
85分のランタイムという中編映画ですが、このくらいの上映時間がぴったりという内容。コレよりも長くなると間違いなくダレる。
娯楽映画というよりは文芸映画という感じの上品な作品。そのため、派手なドラマを望む人は退屈することでしょう🥱
映画の大半はスティーヴィーがスケートボード仲間の悪友たちと過ごす描写。
彼らは酒、タバコ、ドラッグ、女など、ワル=一人前の男という思春期特有の勘違いを抱いたまま、クライマックスの悲劇に向かって突き進んで行きます。
スティーヴィーを含んだ5人組は、皆それぞれ個性が際立っており、チームもの映画としても魅力的な作品に仕上がっています。
とはいえ、本作の最大の魅力はルーカス・ヘッジズ演じる兄イアン。
イアンとスティーヴィーの微妙な兄弟関係こそが本作の見所だと思う。
イアンのキャラクター造形がとにかく良い👍
ドキッとするほど暴力的にスティーヴィーを殴り、部屋では黙々と腕立て伏せをするなど、肉体派の乱暴な男かと思わせておいてからの、スケートボードをぶつけられても文句の一つも言えない、実は内弁慶な気弱な男だったことがわかる構成は見事。実に切ない気持ちになる。
イアンもスティーヴィー同様ワルに憧れる若者の1人であり、その弱さを弟に見破られてさめざめと泣くシーンが本作の白眉。
互いの共通項を認め合った上での最後の和解シーンにはぐっと来ます😢
イアンとスティーヴィーの関係性こそが、本作の最重要ポイントであるだけに、もっとそこを突っ込んで描いて欲しかったという思いはある。
ちょっとスケートボードチームの描写に秤が傾きすぎているように感じてしまった。
スティーヴィーの家族に関するエピソードが、もう一つ二つ欲しかったかも。
タイトルからもわかる通り、本作の舞台は90年代半ばのアメリカ。
そのため、映画のOPからこれでもかというほど当時のカルチャーアイコンが登場している。
スティーヴィーの寝ているベッドの柄は『忍者タートルズ』、彼が来ているパーカーにプリントされているのは『ストリートファイターⅡ』のガイル(本当にアメリカではガイルが人気あるんだ!)。
イアンの部屋にはエアジョーダンが並び、ヒップホップのCDがズラッと揃っている。
劇中の音楽もおそらくは当時のティーンに人気のあった曲が使われているのだろう。
残念ながら、自分は90年代のアメリカカルチャーに全く詳しくないのでこういったディテールにはピンと来なかった。
スケートボードも全くやったことがないため、映画を観ても懐かしいとかそういう感情は湧いてこなかった。
90年代の米カルチャーが好きだという人なら、おそらくはめちゃくちゃテンションが上がったり感情移入するのではないか、と思うほど当時の空気感が再現されている。
自分はそこまでのめり込まなかったが、本作がめちゃくちゃ好き!という人は間違いなくいるだろう。カルト映画的な魅力がある一作だと思う。
コレが監督一作目とは思えないほど、ウェルメイドな作品!すごいぞ、ジョナ・ヒル!
実はジョナ・ヒルのことをあまりよく思っていなかった。出演作は微妙な作品が多いし、演技もあんまり好きじゃない。
なので、本作で自分の中のジョナ・ヒルの株価は急上昇!
絶対に映画館で観なければいけない、というタイプの映画ではないが、DVDや配信など自宅でゆっくりと観る分には十分におすすめ出来る。
特に、スケートボードや90年代の米カルチャーが好きな人は間違いなく楽します!