劇場公開日 2019年6月21日

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「自助論」きみと、波にのれたら おかずはるさめさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自助論

2019年7月14日
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鑑賞方法:映画館

ほぼ無謬のままこの世界から去った者がいた。
その喪失感からどのようにして立ち直るのか。

ひたすら悲しみに浸るのか。
喪失感を心の奥に押し込めて無理にでも前を向くのか。
辛さを誰かと共有しようとするのか。

遺された者が抱く思いの差異がドラマをつくる。

山葵も洋子も港の化身に頼るひな子に厳しい。
しかし山葵が洋子を励ましたように、立ち直るまでの過程はさまざまであっていい。
自ら立ち直るまでは、失われた者の力に頼ることをこの作品は肯定する。

この奇跡のような恋が、自らの行動に起因していたことを知った時、ひな子は立ち直るきっかけをようやく掴むことができた。

その段階に至ることを信じて港はひな子を見守り続けた。
港は努力の人である。
この物語は、彼の成長譚でもある。そのように結論づけるには、あまりに切なすぎる。

後悔が人ならざる人格を生み出すのは「あの日見た花の名前を僕は知らない」を思い起こさせる。
似た感覚が失ったものの代わりにならないことを描いた点では「星を追う子ども」と重なる。

前半の多幸感と後半の失われたものへの哀切。それは恋のプロセスそのものである。

恋を知らないひとにこそ見てほしい。

おかずはるさめ