劇場公開日 2019年6月21日

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「すべては曲のせい。それ以外は素晴らしいのに…」きみと、波にのれたら サピエンスさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0すべては曲のせい。それ以外は素晴らしいのに…

2019年7月3日
iPhoneアプリから投稿

かなり、辛辣な評価が目立つ本作。要因はすべてLDHのオリジナルソングがもたらす嫌だみなのではないか。ストーリーの重要な鍵となる思い出の歌。劇中では主人公が幼い頃、夏の海水浴場で流れていて、最近の映画で使用されて再注目されているヒットナンバーという設定。自然と口ずさむ名曲であり、物語の不思議な現象を引き起こすトリガーにもなり、繰り返し流される。そんな大事な曲を、聴く人によってはそれだけで拒絶反応を示すLDHミュージックでいいわけない。せっかく片寄涼太本人と相性のよいキャラクターで好感が持てるのに、曲のセルフプロモーションっぽい設定を無理矢理ねじ込んだみたいで嫌悪感が先立つ。これでは悪い印象を持つ人がいても仕方ない。これ、LDHの主題歌だとしても、名曲のカバーだったらぜんぜん違う結果になっていたのではと、非常にもったいないと感じた。たとえば、MONGOL800の小さな恋の歌のカバーとか、今の10代〜30代の世代を越えて、みんなが口ずさめる曲がメタに共感を誘い、繰り返し曲が流れる度にエモく、感動を呼ぶ作品になったのではないか。個人的にはストーリーや、映像表現は素晴らしい内容だったと思う。大切な誰かと共に成長する喜びと儚さ。恋に恋するおバカな時代を経て、自我を見出し自分の進むべき道を歩みだす。青春映画としてのストレートなメッセージに、つい涙腺が刺激される。アニメーション表現もさすが湯浅監督作品。本作は全編を水の表現が、これでもかと様々なバリエーションで展開される。終盤の超常的な水クライマックスは圧巻だ。声優陣も初挑戦の片寄涼太をはじめ良かったと思うんだが、アニメファンからすると駄作なのか。あーほんと曲が良ければなぁ、、、もったいない。上映前の予告編では天気の子が流れてた。やっぱ、RADWIMPSの曲はハンパない。数十秒で持ってかれるエモさ爆発。おそらくそれはファンなのかどうかとか、世代を関係ない。なんだか感動した気持ちになるドラッギーな作用がある。いや、新海誠✖️RADWIMPSは、ホイップクリームてんこ盛りのパンケーキと言うべきか。内容なんてどーでもいい話なのに記録的な大ヒットになったし、新作も数十億は稼ぐのだろう。個人的にはそういう味だけ濃い添加物バリバリの映画はイマイチ乗れない。その点、本作はストーリーも良いのに最後の味付けで台無しになってしまった印象。上海映画祭ではグランプリになったみたいだし、観客の評価も上々だったようだ。LDHブランドイメージの無い海外の方が、異国の歌だし、ノイズにならず受け入れられるのかもしれない。

ポコだるま