岬の兄妹のレビュー・感想・評価
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噛み付き攻撃vs必殺うんこ攻撃
こんなタイトルを思いつくなんて、自分も頭のどこかがおかしいのかもしれません。そんな頭の悪さを「お前は足が悪いんじゃない!頭が悪いんだ」という言葉がぐさりと胸に突き刺さりました。が、しかし。あんたも警官なんだから、もっと前向きにアドバイスするなり、援助するなり出来るだろ!と、一生懸命ハジメくんには腹が立ちました。まぁ、ちょっとの間、妹を預かってくれたから許すけど・・・。
足が悪いからと一方的にリストラされた兄ヨシオ。時間の流れは描かれてなかったものの、すぐさま金欠、極貧生活。自閉症の妹マリコのために故郷に戻ってきたヨシオだったが、世間の風は冷たい。ボロボロの一軒家の家賃が3万。それすら払えなくなって寒い中電気も止められてしまう。そんな時、怪しげな釣り人に連れていかれたマリコが犯された上に1万円をもらったことを思い出すヨシオ。「マリコは金になるかもしれない・・・(心の声、想像)」と売春を思いつくのであった。最初はトラック運転手中心、やがて夜の繁華街へとマリコを斡旋する。
かなりの“痛み”を訴えてくる問題作だ。『万引き家族』という暖かいホームドラマとは比べ物にならないくらいに“痛い”のです。借家と思しき彼らの住居は段ボールや新聞紙で窓をふさいであり、部屋は散らかし放題の汚さ。ピンクのチラシによってデリヘルのように商売を始めるヨシオ。買う側の男たちの住む家も彼らの家同様に散らかしてある日陰者が多いのも面白い。特にコビトくんのアパートも窓にはすべて新聞紙が貼られているのだ。寂しい男が多い町。「チェンジ」を繰り返した男以外はみんな心に傷を持ってる者ばかりのように思われた。
「戻ってきてくれ」と言われたヨシオは罪悪感で頭がパンクしそうなくらいになっていた。今さら元には戻れない。いや、仕事は復帰できたとしても、罪のなかった純粋な自分に戻れることはできないのだ。短期間で妹に対する罪、自分自身の罪、捕まらなかったからOKなのではない。彼が一生背負っていかなければならない贖罪なのだ。しかし、自閉症のマリコはたぶん許してくれるのだろう。彼女の最後の笑顔がそう語っていた。でも、電話の呼び出し音によって「仕事する」と言いそうな雰囲気も・・・
このような兄妹を特殊だと簡単には言えない。現在でも生活保護受給者数は200万人前後。去年放映されていたTVドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』でもその審査やケースワーカーの難しさが描かれていたが、切羽詰まったまま生活保護を受けられない人も相当多いはず。今でこそ申請する人は多いが、昔ならプライドが許さないとか、やせ我慢する人も多かった。そして、自殺者も・・・。
生きていくため
なんとも言えない痛々しさ…
生活のため 生きていくため
カラダを売る事やポケットティッシュの内職やビラ作成(3色w)をする知恵はあるのに…
それ以外に方法がわからない
生活保護とか施設に預けるとかあるんだけど、その知識がない
でも実際に沢山いるだろうな、こういう兄妹(家族)
妹に石をぶつけようとするシーン、世話や介護に疲れ追い詰められて精神的にヤバくなってしまう事は、きっと誰にでも起こり得ると思います
ただ、見終わって凄く重い気持ちになるかと思いきや、この映画はどこか和む要素があるような気がします
本当に見て良かった!
自閉症の妹を兄が売春させる話しと聞いて、評判はいいけれど、日本で見落とされている底で生きる人を生々しく描く話だと勝手に想像して暗くて重い話かと思って二の足を踏んでいたら、それを軽々と乗り越える笑える映画だった。
ポン・ジュノ監督や山下敦弘監督の元で助監督をしていた片山慎三監督の長編初監督作。
自閉症の妹真理子を養っている片足の不自由な良夫は仕事を首になってしまい、生活に困窮してしまう。食べるのにも困り良夫は真理子を売春させる…
とあらすじを聞くとかなりキツいが、良夫のダメだけど憎めなさ、真理子の天真爛漫さが飄々と辛い現実を乗り越えていく。
とにかく真理子役の和田光沙さんの演技がいい。
タケシ映画だと神聖化してしまう妹を、「ギルバート・グレイプ」の時のディカプリオのように超現実的に演じその上で純真さを見せるという神業をやっている。
キム・ギドクの映画やミヒャエル・ハネケの映画のように生きる事に対して毒を持つような映画だった。
せつない映画❗
星🌟🌟🌟🌟あんまり期待してなかったのですが…最初から最後までスクリーンに釘付けでした❗現実に実際どこかで起こっていそうな出来ごとなので見終わったあと凄くせつなかったです❗妹の真理子を演じた和田光沙さんが本当に障害者のようで彼女じゃなかったら作品が成り立たなかったのではないでしょうか?人糞や高校生とのシーンなど笑えるところもあり面白い作品でもありました❗さらにラストの海岸のシーンが凄くせつなかったのですが…この兄妹はこの先どうなるのだろうか…映画とはいえ心配になりました❗ちなみに警官の肇は口じゃ心配してるけど警官だったら施設とか生活保護とか紹介するんじゃないの⁉見殺しにしてるみたいで凄く腹立った❗
平日午後でも結構な客入り
年寄りが声を上げて笑っているの聞いてジェネレーションギャップを感じた。
神奈川県の三浦半島他、三浦市・横須賀市・川崎市で1年かけ四季のあるロケ撮影
クレジットは一切なし。
ラストシーンは鳥肌立った。
ノブさんを演じた巨漢のジャックが気になる(シルエットと背中の刺青のみ)
お前は足が悪いんじゃなくて、頭が悪いんだよっ!!
足が悪い演技にばらつきがあるのは撮影期間が長かったせいでしょうか
観ていてつらい
ポンジュノの助監督をされていた監督の作品ということで観たかった映画ですが、公開当初は満員で入れず、公開拡大されてやっと観られました。
観終わった感想はやや露悪的という印象でした。妹に売春をさせて生計を立てているという設定はなかなか受け入れがたいものでした。しかし、ただ単に露悪的というわけではなく、貧困や売春などについて考えさせられます。
監督のインタビューでも、売春がそこまで深い罪として問うことはできるのかという問いかける意図があるようです。
うんこがでなくて段ボールで窓を塞いでいる生活よりも、うんこが出て窓が見える方がマシということでしょうか。考えさせられます。
また、終盤で妹がこれまでの悲惨な状況に対する思いを爆発させるかのように号泣するシーンには胸が痛みます。ここまでで辛さがマックスです。
ただ、ラストのシーンで誰かから電話がかかってきます。他の方の投稿でもありましたが、電話の相手は客の一人である小人症の青年のような気がします。彼も新聞紙で窓を塞いでおり生活が満たされないものであることがうかがえます。
この青年も含めて彼らの未來にほんのわずかに光明が見えるかたちで映画が終了し、少し救われました。
この映画を観終わったあとに実際の上映時間よりも長く感じました。それだけ濃厚でエネルギーに作品だと思います。しかし『葛城事件』もそうでしたが、いい映画だとは思うものの、観ていてつらく、映画好きの人向けだと思いました。
「海の匂いがしました・・・」
前回鑑賞した『新橋探偵物語』のアフタートークでゲストで登壇した主人公の女性役の女優さん、そして古舘伊知郎のANNGにて紹介されての作品である。全然ノーマークであり、存在自体知らなかった。そして俄然興味を持ち急遽鑑賞した次第。
かなりというか相当重いテーマである。去年観た東京国際映画祭での台湾作品『三人の夫』に近いシチュエーションである。
いわゆる自閉症の妹、足の悪い兄が、底辺の生活の中で人として道を踏み外して行くストーリーである。タイトルの筆文字といい、何となく昭和のATGの匂いを纏いつつ、内容がドライブを掛けて“居たたまれなさ”に突っ込む。そもそもの前段階でかなり厳しい状況に追込まれてしまっている兄妹なのに、フィクションとはいえ現在の日本において特別ではない環境なのだ。誰も助けてはくれない、どこにも庇護をもたらすモノがない二人とすれば、妹が通常の自己確認が出来ない頭脳構造であれば“悪魔の囁き”がカマをもたげてくる。それは小さい頃に訳も分らずブランコの鎖に股を擦りつけていたあどけない妹への憐憫か、亡き母親の、妹を守れとの言いつけを最悪の形で裏切ってしまう事への自暴自棄なのか、妹の生殖行為を強制的に見せられてしまった事への倫理観崩壊への堕落が、否応なしに観客にぶつけられる。そして二人の心と体を蝕む所業が繰り返されるのだが、所々でもっと下層へ堕ちる危険な出来事が訪れるシーンは益々心を潰される思いを抱く。妹が友人の身重の妻に、又は出産後子供に何か重大なインシデントを起こすのではないだろうか、又中学生の攻撃に於いても絶対絶命からの意外な破れかぶれの反撃のサスペンス要素もリアリティ且つ、重厚に仕上がっている。いわゆる“小人症”の客との無邪気で切ない繋がりからの裏切りの件も大変叙情的で哀しさがひとしおだ。妊娠した妹の腹を潰そうとブロックを振り上げたところで、散々倫理観を棄ててきた兄がそれでも思いとどまる件は、予定調和に進まない心の機微をぎゅっと掴まれて揺さぶられる監督の掌握術が利いていてニクい展開である。
そしてラスト、何とか元の雇用先に戻ったと思わされる作業着で、アバンタイトルと同じシーンがループされる演出からの、海の岩場での、妹の化粧と、携帯電話の呼び出しで、結局又この兄妹は何も学ばず同じ事を繰り返すのだろうと諦めとそれでも生きていこうと藻掻く逞しさを印象付けてエンディングを迎える形は、大変秀逸な終わり方である。多分メジャーでは出来ないこの泥臭く現代的な作品をきっちり仕上げた制作陣に拍手を送りたい。
何が正しいのかね
脚の悪い兄と自閉症の妹がギリギリの生活の中で必死に生きる話
道徳がなんだ!法律がなんだ!生きるために必要なことして何が悪いって思わせてしまう。
きっともっと賢ければ、生活保護の援助など受けながら生き抜く術は他にあるのかもしれない。
でも、誰が手を差し伸べてくれる?
真面目に仕事しても、妹の病気が治るわけではなく、ずっと家に閉じ込められ、鎖で繋がれてる。
それって生きてる意味あるのかって疑問。
どうにもならない怒りを妹にぶつけて、孤独な兄
彼らにとって、これは本当に冒険なんだと思う。
体を売ることで、人と繋がり、喜びや悲しみを知っていく妹は幸せそう。
普通の幸せを与えたいと思っても、障害者にも拒絶されてしまい、勝手に絶望感じてる兄
ラストの兄は何を期待するのか、妹はどこまで兄の気持ちに気付いているのか。
岬の先端でギリギリ踏み止まるのか、それとも、、。
映画の始まりとラストどちらも行方不明の妹を探す。
いつも岬に行く、何かを期待しているかの様に感じる。
死んだ方がましなのか
兄弟役どちらも、演技が上手過ぎて、演技とは思えませんでした。
くそくらえ。
港町、ドス黒い港町、黒い海、曇天。
貧しさの極限。絶望するような無知。
なのに、なのにちょっぴりエンターテイメント。
たくましい。食べる、食べる。
まぐわう、まぐわう。笑いもある。
生きようとする。生きる意思がある。だからズレる、生きようとするから、常識から逸脱する。
スクリーンに写し出されるのは、たくましい、いや、間違いなくたくましい兄妹。
社会的弱者?くそ食らえ!ほんとに食わせてるし!
生きようとする意思が画面にみなぎる。
食って食って、まぐわってまぐわって。
ジタバタジタバタする。
まったく困った兄妹。でも生命が生きようとうごめいている。
生活保護?ふざけるな。血の通わない制度で
この兄妹を抱えられるものか。
もうちょっと別の喜びも兄妹に伝えてやりたくなる。同じ人間として。限られた命を持つもの同士として。一歩間違えれば同じような境遇に陥りかねない暮らしを営むもの同士として。
貧困と無知と矛盾を題材にして、しっかりしっかり映画になっている。
すごい手腕だと思う。
衝撃の映画体験だった。
ひと言で絶望、とも言えない
前評判を聞いていて、かなりの重さを覚悟して行ったので、観た印象は「あれ、意外と優しい」だった。
もちろん扱ってる問題は重くて辛くてキツい。
ただ、この映画で特徴的だったのは、主人公がそれなりの優しさや葛藤を持っていること、ときどき明るさや、ほんのり愛情めいたものを感じるシーンがあること、ひとりは心配してくれる友達がいることなど、まだ共感できる余地があることだったと思う。
日頃ニュースを見ていて、ほんの数行の記事にめためたに絶望的な気分にさせられる時がある。
多分この兄妹と似たような状況で起こってる事件も沢山あると思う。
普段ならその数行で目を逸らしたくなってしまうけど、この映画はなんとか見ていられる形で(しんどいけど)その行間を埋めてくれていてすごい、と思った。
私は友達の警官役と同じような距離感で、大丈夫?と言いたくなった。
完成度高い作品
面白かった。
人間存在の両義性というか、神聖と汚穢について、見る者の見方が試される作品。
障害、売春、堕胎、排便をどストレートで撮った作品。
「それでも人間か?」という問いは偽善的であり、「これが人間だ!」という叫び声が聞こえる。聖なるものだけが、この世界の成り立ちじゃない。
光と音へのこだわりが印象的。
部屋の明るさ(特に太陽光と照明)の表現の仕方や波、水道水、着信音、等々の溢れる音が効果的。
和田光沙さんの作品をこうして見れて良かったなぁ〜。
殴られた
頭をがつんと殴られた気分。長い映画でもないのに観終わったら疲弊しきっていた。
どこからどう見ても救いのない兄妹。所々のコミカルさが余計に殴られ感を増すというか、この兄妹を前にして私に何か言えることなんてあるんだろうか。何を言っても偽善者になってしまうのではないか。こうやってこの映画を映画館で観ていること自体に恐ろしい程の葛藤を感じてしまうような作品であった。
多分理性的な、穏当な意見はいくらでも言える。言えるけど、絶対にそれが届かない何かがある。それをものすごく怖いと感じた。新聞記事やWeb記事を読むよりも生々しい。怖い。
余りの映像、演技の生々しさと、音楽の哀しい美しさ。生きることの滑稽さ。恐ろしさ。無情。
多くの人に観てほしい。
あまりお薦めできないが傑作
観たい映画がたくさんあるのだが、しょうがないので「岬の兄妹」を観た。去年が慎一郎で今年が慎三かよと思う。「カメ止め」と違ってあまり皆さんに薦めたくなる映画では無いのだが、観ずに通り過ぎることが許されない映画なのだ。81年生まれの若い監督である。自前の金で妥協をせずに2年間掛けて作ったというのだが、時代は変わった(良い時代になった)とつくづく思う。フィルムの時代にこんな自主制作映画は絶対に作り得なかったからだ。その意味ではSKIPのDシネを目指してこれからも才能ある監督がどんどん出て来るのだろう。主演の松浦祐也と和田光沙はもちろん良いのだが、撮影(池田直矢)が素晴らしい。冒頭の波止場の風景でまずグッとくるし、真理子が道に転がって泣きわめく二人にず〜っと寄ってく長回しには恐れ入りました。が、浜辺でずっと手持ちでトラックバックしていくカットだけが不満(寄るのはいいのだ。下がっていくとカメラアイを意識してしまうだけ)。間違いなく傑作なのだが、堂々とお薦めできる映画でないことがただただ残念!
今までにないくらい強烈な作品
こんな劣悪な事柄ばかりを見せられて、受け入れられるかどうか、耐えられるかどうか─。差別的であり、インモラルであり、汚物のようなこの映画。敢えて言うと、暴力あり障害者がやりまくり小人と嘲笑したりウンコが出たり老人や未成年の性的欲求がリアルに表現されていたり・・・どこかで必ず目を背けたくなるところがあるはずだ。それでも、自分は受け入れる。そして、その衝撃はこれまでにないものだった。
ありがちな薬物や酒、殺しなどによる転落などとはまるで違った最底辺の人間模様が展開されている。あらゆるメディアで避けられてきたようなヤバイ表現を、この世の中を生き抜くという究極的なテーマのために、臆することなくストレートにぶちまける。あんなにまで悲惨な状況を提示されても、同情や悲哀といった感情を全く寄せ付けず、ただただこの文明社会での一種の命の形を見せつけられた。
この作品を受け入れられない人・もの・場所は、少なくないはず。内容は間違いなく酷い。しかし、衝撃や共感を受ける人もまた少なくないはずだ。
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