劇場公開日 2019年3月1日

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「非現実的だからこそ…」岬の兄妹 chomchomさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0非現実的だからこそ…

2019年4月15日
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窓に
目張りをした
檻みたいな家の中で
飼い主みたいだった母親に見捨てられたまま
ひっそりと
時が過ぎゆくままに
やり過ごしていこうとしたけど
だめだった…

社会はそれを
ゆるさなかった…

むしょうに
つながれていたロープを
噛みちぎり
檻の鍵を壊して
外に出たくなる
行くあてなど
どうでもいい…

足を引き摺るたびに
世界はゆれる
役に立たなくなった右足は
足を引っ張っているのか?
止めようとしているのか?
わからない
どっちにしろ
足をすすめるしかないのだけれど
唐突にしかし当然のように
宣告される仕事先の都合
いきなり放し飼いにされる…

餞別は
一万三千円

冒険とは

棒検?
冒建?
棒研?

妹のポケットの中にあった一万円
妹の下着についていた証…

悪あがきしてみても
行き着く先は必然

妹をエサとして
差し出すかわりに
得る一万円…

手渡されたエサ(カップ焼きそば)を前にして
「待て」
とはいかない

空腹に勝てず
中と外で
お互い行為に励むことになる

かったイヌに
手を噛まれて

エサはぶちまけられ
報酬はとり上げられ

同業者に見つかって
ヤキを入れられ

兄は負け犬のように
オドオド…

それでも妹は
普通、避けて通るような
コワイ人たちでも
あっけなくイカせて
圧勝する!

形はどうあれ
二人で初めて得た収入

二万円

どんな形であれ
初めて社会とタイマン
シタ瞬間

檻の目張りは外され
陽光は降りそそぎ

世界に向かって
やみくもに
宣戦布告した朝

お人形さんごっこみたいに
お化粧と着せ替えをして

あぶない橋を渡る
当然

ピンクのチラシで
社会と一戦を交える

妹の正夢…

海中を
生き生きと泳ぎまわる
まるで健常者以上に

自分の中で蠢く
なにか
足りないものを埋めようと
ガラケーはつながる
埋まるわけないと
わかっていても
携帯は鳴り続ける

かえってこの妹だからこそ解放される
自分の中にかくし持っているもの

あっさり
値下げ
やりたい放題のススメ
シミついた負け犬根性

ときに独居老人の
慰みもの

ときにイジメられっこの
筆おろし

ときにマイノリティとの
恋愛ごっこ

なんらかの社会奉仕

人を選ばず
誰とでも同じように
接する

ある意味
無敵

何が幸せで何が不幸なのか?
そんな概念をも
無意味にしてしまう

ハナより
カミばかり食べたがる
今ドキの高校生
カネより糞の
洗礼
火事場のクソぢから

人はそれを
冒険と呼ぶ

それを社会は
犯罪と呼ぶ

それを世間は
背徳と呼ぶ

いずれは来ると
わかっていた
こと

体が
眠りについているときだけは
走ることも
はしゃぐことも
なんの支障もなく
好き勝手に動き回ることができた

兄の悪夢…

肉欲の果てに

商売女だから
ナニをシテもいいと思う
甘えと打算と
無責任…

産むことしかできないのなら…?
産んでも人として育てられないのなら…?
明るい家庭計画のススメ…?

一線をこえてしまった今になって
気まぐれに訪れる社会復帰の誘い

イタズラに
元に戻っても
また
家からいなくなる

繰り返しなのか?

繰り返しじゃないのか?

今は

崖っぷちなのか?

飛び込み台なのか?

端からみたら
どうみてもひどいことをしているとしか
みえないこと…

端からすればやめたほうないいとしか
いえないこと

端からしたら通報することで
救えるんじゃないかと一方的に思うこと

たとえば
前半堕ちるとこまで堕ちた兄妹が
後半
社会福祉かなにか
NPO法人みたいなのが出てきて
二人を保護して
立ち直らせ
社会復帰を促すとか云う映画だったら
不謹慎と云われても
みたくもない…

だけど
もし近所にこの兄妹みたいな人がいたら
たぶん近づけないし
見て見ぬふりをしてしまう
自分がいるに違いない
だからと云って
可哀想とか悲惨だとかとも
思わない
ある部分では自ら覚悟して
それをしていると思うから
その人たちを認めて
蔑んだり憐れんだり
しないことくらいしか
弱い自分にはなんにもできない…

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chomchom