「こじらせママは人生迷子。」バーナデット ママは行方不明 レントさんの映画レビュー(感想・評価)
こじらせママは人生迷子。
かつて最年少で賞を受賞し、天才建築家としてその名をとどろかせたバーナデッドは二十年前に突然業界を去り、現在は教護院として使われていた建物を自宅として改修しながら主婦生活をしていた。
一人娘は成績優秀、夫もマイクロソフトに勤めるエリート家族。何不自由ない暮らしのはずだが、彼女の目下の悩みはママ友たちとの確執と娘へのご褒美となる南極旅行だった。
彼女曰く自分は人間嫌いでとにかくご近所づきあいは苦手、大勢の観光客と同じ空間に閉じ込められる旅行を何とかキャンセルしようと考えていた。
とても子供じみた彼女、さすがに度重なるご近所トラブルやその奇行に夫は心配になりカウンセラーをつけようとする。また同じ時期に彼女が唯一頼りにしていたヴァーチャル秘書がロシアンマフィアのダミー会社によるものだとして財産を乗っ取られそうになる。
周りから攻め立てられた彼女は行方をくらまし、向かった先は南極だった。彼女を追う父と娘。
彼女は南極での新基地建設計画を知り、長年眠っていた創作意欲が蘇る。そして家族は南極で無事再会して、壊れかけた家族の絆を取り戻しちゃったのでありましたとさ。
大まかにそんなストーリーだったと思う。土砂崩れで隣の家が汚泥に襲われるシーンやヴァーチャル秘書のくだりなんかは見ていて面白かった。でも肝心の物語には全くはまらなかった。
そもそもこの主人公が掴みどころがないというか、まったく好きになれず、それどころか登場人物誰にも感情移入できなかった。たとえ作り話であっても見ていてリアリティが少しも感じられないと物語には入り込めない。ましてやこの主人公は人間嫌いと言ってるけど単に周りを見下しているエリート意識の強い人間のように感じられた。
昔の恩師に自分が業界から去ったのは受賞した建物を解体されて、腹立ちまぎれにケツをまくったみたいなことを言っている。自分の価値がどれほどのものだったか思いしれみたいな半ば当てつけのような理由で業界を去ったと話していた。それに加えてママ連中をハエ呼ばわりしたり。正直こんな人間を全然好きになれない。観客を笑わせようとしてるのかケイトブランシェットの芝居もちょっと過剰気味で、その演技力が逆効果だったとも思える。
また生意気マザコン娘も何かと父親にかみついてきて本当にかわいくなかった。お父さんもあまり主体性の感じられない人だし。すべてが作り話の域を超えてなくて、ほんと見ていて苦痛だった。時折挿入される娘のナレーションもあまり心に響かなかった。
前作の「ター」はケイトブランシェットの演技が素晴らしかったので、今回も期待して見たけどまったく個人的に駄目だった。「ギフト」の頃の自然な演技が懐かしいな。
ちなみに最後のスタッフロールの基地建設のシーンは実際の建築風景を撮影したのかな、それともわざわざあれだけのためにセット組んだのかな。
同感100%のレビューで嬉しかったです。ケイト・ブランシェット大好きなので、余計、何だ、この映画?と思いました。評価高いのはかなりかなり以外でした。そのため余計、同じ印象をもって下さったレビューを拝読してほっとしました。ありがとうございます!