バイスのレビュー・感想・評価
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この映画が許される理由と時代
VICE、つまり「悪者」。
この「悪者」として映画に存在する軍産複合体や金融マフィアに加担した陣営が、
フランス革命から始まって、各国の君主制を転覆させたり、
日本で明治維新を起こしたり真珠湾攻撃という罠を仕掛けたように、
戦争や紛争を各地で起こし、大勢に無辜の民の命を軽く扱って来たりしてきた事、それはずっと隠されてきた。
日本でもこの黒幕の正体を暴くと、
「日本人に謝りたい」の様に絶版になったり、
「マルコポーロ」のように廃刊になったりすると言われてきた。
だが、
アメリカではトランプが大統領になり、
その黒幕が跋扈してきた欧州では、
その人達によるグローバリズムが『ごく一部の人の為の権力と資金』の掌握化と分かってきて、ナショナリズムが台頭してきている。
つまり、(日本人は、未だテレビや新聞でしか情報を取らない人や、映画の最後シーンの頭の軽い女の子のように、真実を知らない人が多いようだが)
フランスのイエローベスト運動の如く、
多くの人がその真実に気付いてしまってきているから、この黒幕が弱体化している、という顕れなのだと感じた。
そうでなかったら、いくらお笑いで隠しても、こんな暴露を伴う、しかも実際の人物の名前まで出した映画はつくれないだろう。
チェイニーが入学したイェール大学はスカル&ボーンズのアジトだから、おそらく妻のリンの家系もその関係なのかもしれない。
息子ブッシュのアホさ加減が非常によく出ていて笑えたし、
其々の役柄にソックリさんの役者に、非常に楽しませて貰ったが、
実はその裏にかなりシニカルな監督の意図が見て取れる。
「アメリカの象徴」が疑似餌になっていたりと・・・
これを深いと観るか、ただ笑って観るか。
個人的には、やはり最後のシーンの女の子の存在、
これが、監督の、
日本を含めての「無関心層」への皮肉にしか見えなかった。
タイトルなし
面白い。もう少し深掘りが欲しかったけど、今見るべき映画であることは間違いない。
単一行政執行府?という解釈、理論?は、初めて聞いたが、米国では報道されていたのだろうか。何だか某国の政府がこれを真似しているようで怖い。
また遺産税を死亡税と言い換えたり、今までの真っ当な主張がリベラル派のバイアスと思いこまされたり。これもまさに某国が陥りつつある状況。
こういった手法にだまされないようにしないと。危機感全開になる映画。
(こういう映画がメジャーで制作されるアメリカには、まだ救いがあるが...)
何が言いたいの?
アメリカらしい映画だけど
笑いにもなってないし、シリアスにも
なってない。
湾岸がハリバートンの利権戦争と言うのは分かってたし。
結局見栄の奥さん貰ったばっかりに
副大統領になっての悪事(自分は想わないと思うが)
を今バラして何になる?
コメディにするならもう少し捻ってくれ
シリアスにするなら湾岸戦争の死者が???
何をしたいか分からない映画だった。
因みに今のトランプを大統領に据えると言うことは
子供ブッシュの轍を踏んでないって事?
イギリスもそうだったように
民主主義崩壊してる。
要は人は多数に流れやすく、一人の奇人に贖うことは出来ない
因みに日本人のお笑い芸人でこう言うものが
この国ではつくれないって言う奴居たけど
つくれば良い。
日本は笑いの質が違う。
アメリカまで行ってるんだこら。
できるだろう我が儘坊やなら
大衆の「凡庸な悪」を告発してもいるような。
構成が面白いと思いました。冒頭からの軽快なナレーションが一体誰なのか、という軽いミステリー要素もあり、映像のリズムもスタイリッシュです。
ナレーションの人は、顔も出します。ええ?だれだれ?って感じです。
無粋な人間なのでさっさとネタバレしておくと、ナレーションの人は、ご近所をジョギング中に事故にあって、脳死状態となり、望んだがどうかは不明だけどその心臓をチェイニーに移植された人です。つまり、チェイニーの”新しい心臓”がチェイニーの人生を俯瞰しているという物語です。
彼は、チェイニーが自分の心臓を”誰かの心臓”ではなく”新しい心臓”と呼ぶことに不満そうでした。そらそうだ。
息子ブッシュが似すぎなので、写ってるだけで笑えます。
息子ブッシュはだいぶあほの子っぽい描写で、面白かった半面、あほの子が曲がりなりにも大統領になってしまうってあんた、というあきれを感じます。
こうして政治家という人々を毛嫌いする感情だけが肥大していくのは良い傾向とは言えませんが、それはおいといて。
チェイニーさんは特段思想もなさげな人です。乱暴者で、飲んだくれで、無為な感じでした。恋人に捨てられそうになって何とかワシントンDCで議員関連のインターンになって、そこで世渡り上手さを発揮し、ほぼそれだけで権力を増大させていったように見えます。おそらく彼のモチベーションは妻と子を食わせる事、ビッグになる事、くらいなんだと思います。マイルドヤンキーのメンタリティと似通っているように感じました。ビッグになる事、つまりある種の権力を握って好き勝手にすること。なんか出てくる政治家たちの望みは、すべてそれに見えました。
チェイニーさんは、妻リンの言いなりです。妻の望みをかなえようと頑張ってきました。妻は優秀だけど女だから進学もいい就職もできなかった人です。全然毛色の違う映画ですが『ギフテッド』の祖母イヴリンを思い出します。
能力を発揮する機会が与えられず、そのうっぷんを夫を支配することで、自分を慰めているんでしょうね。父親から母親が殴られるのを見て育ち、自分の努力は全く報われない。そら、つらかったろうと思います。
チェイニーさんが出世を極めてからは影が薄い感じでした。
いろんなことを思い通りに、自分の好きな人に便宜を図り、嫌いな奴には不利なように(あるいは得をしないように)計らう。仲間内でそういうことをするのが、経験ないわけではありません。こすいことをしてええとこどりできてラッキー!という気持ち、わからなくもありません。とっても下品だけど、ちょっとした万能感ありますもんね。
ほんとはそんなことを目的にしてなかったとしても、そういうおいしい誘惑がいっぱいあるし、激務だし、政治家ってだけでわたしみたいなのには嫌われるし、どうしようもなく利己的な感じに落ち着くのかなって思いました。
また、最後のほうで、うろ覚えだけどナレーションの心臓くんが、だれが彼(ら)を選んだのかということを言っていたように思います。
まじめな問題提議に対して、若い女子2名がそんなめんどくさいこと考えたくなーいって顔で、ワイルドスピードみにいかない?と私語をする描写がありました。
政治家たちだけではなく、彼らに権力を握らせてしまった責任は確かに私たちにあります。
世界のそこここにある不正・不平等・危機etcに対して、私は何をしたか。自分の快楽を優先せずに何かをしたか。
そういう問いかけがあったように思います。
それを放置しているのは、お前だ、と心臓くんは言っていたように感じました。
そして、問題から目をそらしてワイルドスピードで盛り上がるかんじって、まさに”凡庸な悪※”やん、あ、あたしがいわれてるんじゃとおもい背筋が寒くなりました。
※凡庸な悪(第二次大戦中に起きたナチスによるユダヤ人迫害のような悪は、根源的・悪魔的なものではなく、思考や判断を停止し外的規範に盲従した人々によって行われた陳腐なものだが、表層的な悪であるからこそ、社会に蔓延し世界を荒廃させうる、という考え方。ユダヤ人の政治哲学者ハンナ=アーレントが、親衛隊中佐としてホロコーストに関与したアドルフ=アイヒマンの裁判を記録した著書の中で示した。©デジタル大辞泉)
ワイルド・スピードが楽しみ
「記者たち」とほぼ同じ感想。
事実は映画より奇なのでただただ事実をなぞるしかない。
ならば最後にメッセージを、という感じ。
起こっている事実に怒る人。
リベラルに偏向してると怒る人、そして乱闘を始める2人。
そんな2人に興味がない人、「ワイルドスピード」が楽しみと。
この3つのパターンの人たちが、相手の話を聞かない、反対意見は敵、って言ってないで、まずは共通の敵を倒さないと。
ラスト最高
語りかけてくる男はだれなのか、わかった瞬間、おもろさが最高潮に達した!
リベラルな人とそうでない人、まったくそれに興味ない女子学生のあの発言。
表現が最高。面白すぎる。
日本でもバイスみたいな映画やったら面白そう。
そっくりさんショー パロディに見えて実話
主役のチェイニー、ブッシュ、ラムズフェルド、だけじゃなく、ちょっと出てくるパウエルにライスまで完璧に寄せた、記憶に新しい政治家達のそっくりさんに笑えます。
笑えるけれど、辛辣な内容。
お金のため利益のために永劫戦争をやめられない国の、ダメっぷりを露わにしています。
同様に実在の政治家のこだわりと実績を描いた「チャーリーウィルソンズウォー」と対照的。戦争への加担は、アメリカの持つヒロイズムの強さからか、と、あの作品では思ったのだけれど、
いやいや、やっぱり、と本作で覆りました。
「国民を納得させるには、戦う相手を国家にしなくては」なんて平気でシナリオ作ってプロパガンダ。
本作の直後に、例えば「アメリカンスナイパー」とか見ると、やりきれないだろうなぁ。
無理して劇場で見るレベルではないけれど、見て損はない作品でした。
サタデー・ナイト・ライブ的?
マネー・ショートでも思ったが、アダム・マッケイの作品は映像も編集も非常にテレビ的で、大画面で見ると疲れる。
SNLで売った彼の、アメリカのリベラルなエリートに受けるであろうシニカルさが何だか鼻について、ニクソンだイラク戦争だ利権だと言われても、映画館で今更そんなことをしつこく言われてもな、と、わざわざ映画館で見たことを後悔した。
主役二人はいつものように凄いし、サム・ロックウェルもブッシュに似過ぎていて、そこは笑えたし素晴らしかった。
反権力の精神が促す、米国の自省に学ぶ。
9.11に端を発した米国のテロとの戦いがイラク戦争へと拡大していくさまを、チェイニー元副大統領をキーパーソンとして描いた作品です。肯定も批判もすべては知るところから、という米メディアの反権力の精神を感じます。
真実か、真実でないかはおそらく、信じるか信じないか。すべての情報をうのみにするのでなく、自分なりに租借して意見を持つ民主主義の根幹を改めて自分自身に問われた気がしました。
「今度のワイルドスピード楽しみ^^」
メタ表現とブラックコメディ、そしてプレゼン要素を盛り込みながら、歴史映画としての意味合いを込めつつ事件を紐解く独特の様式としての監督作である。
日本で視ていれば、あくまでもテレビのニュース番組でしかお目にかかれないアメリカの権力者の面々が、その本音を余すところ無く吐露しながら活躍というか暗躍している。勿論、ノンフィクションではないし、エンドロール後のシーンでもリベラル側からの視点が色濃いので100%純度のファクトではない。しかし鑑賞後のこの陰々滅々さ、暗澹とした気分はなかなか拭えないのも事実である。コメディ的要素もここまで来るとサッパリ笑えなく、皮肉さもすんなり受け取れない鬱屈な心持ちなのである。それにも増して今作の余りに沢山の専門用語、とりわけ何度も登場した『一元的執政府』という概念が中々飲み込めずにストーリーを集中して観る事を困難にさせた。法解釈を駆使し、とりわけダブルスピークを持ち出しながら、その巨大なる権力を行使することに取憑かれる男達にはまさに“理念”なんてものはジョーク以外のものではないのである。否、男だけではない。チェイニーの妻でさえもその権力の魅力に取憑かれ黒幕としての役割を嬉々として行なっていたことも同罪である。能力がある人間が権力を行使するのは当然という思考はいつまで経っても逃れられない“煩悩”であり、だからこそ人間たらしめている要素の一つなのであろう。その多くは間違った道に向かうのだが、結果に至りそこで歴史的判断が成される。しかし、過ちは何度も何度も繰り返される。あれだけ映画『1984』で警報を鳴らしたディストピアを誰も止めることなどできず現実となって襲いかかる。そうして人々は政治から益々距離を置くようになる。本来ならばその権力に取憑かれた人間を排除できる権利を有している筈の市井の人々なのに・・・。チェイニーは言う。「私は謝らない」。そりゃそうだ、選んだのは国民なのだから、天に唾する喩えを出すまでもない。
残念ながらAIに政治を一任するしか選択肢がないなんてディストピアがリアリティを以て結論に流されてしまいがちになる程の負のパワー全開の作品であった。
チェイニーに感じる痛快と恐怖
世界情勢やアメリカの政治についてはまったく無知の私ですが、それでも大筋が理解でき、なかなかおもしろかったです。チェイニーの立ち回りの良さが際立つ部分を、テンポよく繋いで見せてくれたおかげだと思います。その分、頭をフル回転させて見なければなりませんが、大統領や国防長官で多少なりとも知っている名前の人が出てきてくれたのは助かりました。もちろんディック・チェイニーなる人物のことも、今まで何も知りませんでした。しかし、本作を見て、良くも悪くもとんでもない人だということがわかり、とても勉強になりました。
また、途中で流れるエンドロール、語り手の絡ませ方等、構成の面でもおもしろかったです。とくに何度も挿入されるフライフィッシングのルアーが印象的で、チェイニーの「仕掛けて獲物を釣り上げる」生き方を暗示しているかのようでした。
それにしても、多かれ少なかれ似たようなことが、世界であるいは日本で行われているかと思うとぞっとします。権力闘争の前では、国益も人の命もいかに軽いものかということを思い知らされました。
映画表現って「自由」なんだ、って思わせる秀作
同監督の前作、「マネーショート」でもあったが、他の監督では絶対やらないような、斬新な演出は面白い。「映画表現・演出って自由なんだ!」って再認識させてくれる作品。
(具体的には、中盤で、エンドクレジットが流れる場面とか、本当のエンドクレジット途中で、「リベラル臭い」と作品への批判を先取りするシーンとか…)
内容については、監督なりの「トランプ時代」を描いたのだと思う。
そういう意味で言えば、スピルバーグの「ペンタゴンペーパーズ」や、ライトマンの「フロントランナー」、スパイク・リーの「ブラック・クランズマン」、ファレリーの「グリーンブック」と同種の作品だと思う。
いずれも、トランプと直接関係ない実話ベースの話ではあるものの、「トランプ時代」の今だからこそ作られた作品であると同時に、普遍的な価値を持った作品だと思う。
上記作品のうち、今回のオスカーノミネートされた「ブラック~」「グリーン~」本作の3作品の共通点は、重いテーマを扱いつつも、全体的な空気はコメディであり誰しも楽しめる作品だと思う。
特に本作は、コメディ要素が特に強く、私は3作の中で、一番好きだし、オスカーに値する作品だと思う。
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