ビール・ストリートの恋人たちのレビュー・感想・評価
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原作者ボールドウィンの複雑さをよく描けている
ジェームズ・ボールドウィンの傑作小説ビール・ストリートに口あらばの映画化。恋人たちという邦題も素晴らしいが、口あらばの文学的センスも捨てがたい。無実の罪で捕まってしまう男をなんとか救おうと恋人や家族が奔走する。横暴な白人警官から恋人を守ろうとした時、やりすぎないように彼の前にでる少女。男は守るべき者に守られてしまったことを恥ずかしく思い、自分に苛立つ。ボールドウィンは社会の黒人差別と戦った人であると同時に、同性愛者であることで黒人コミュニティからも差別を受けた。白人からの差別とともに、黒人社会のマスキュリンな部分への苛立ちがここに見て取れる。
アカデミー助演女優賞を獲得したレジーナ・キングが素晴らしい。鏡に向かって化粧している時、彼女は何を考えていいたのだろう。
映画は、小説よりも希望のある結末になっているが、甘すぎだとは思わない。とても力強い希望だと思う。
見終わって鮮烈に残るラブシークエンス
妊娠中の若い黒人女性が、無実の罪で投獄されたフィアンセの無実を晴らすために奔走する。時代は1970年代のニューヨーク、ハーレム。黒人であるということだけで、問答無用の差別が横行していた時代である。しかし、やはりバリー・ジェンキンス。オスカー受賞作「ムーンライト」の時と同じく、痛々しくも腹立たしい人種差別の実態にのみフォーカスせず、むしろ、そんな状況下でも愛と尊厳を貫こうとするカップルの若いエモーションを賞賛するように、終始彼らに寄り添っていく。だから見終わって最も鮮烈に残るのは、切なくも狂おしいラブシークエンスだったりする。未だ繰り返される差別の連鎖を、そんな普遍的なところに落とし込むのが得意なニュージェネレーションの台頭と、その未来を、最新作ではまたも強く実感することができた。
どちらかといえば恋愛映画ではない
アフリカ系アメリカ人同士の恋愛映画。というだけでちょっと珍しい。それだけで本作も内包している差別というものがどんなものかわかる。
しかし自分は逆にこう思うんだ。
結局、アフリカ系アメリカ人や人種的マイノリティの窮状を訴える作品だったわけで、ただの、普通の、恋愛作品じゃいかんのか?と。
アフリカ系アメリカ人が出てきたら苦しみを訴えなきゃならんというわけでもないでしょう。もういい加減ウンザリなんだ。
普通の、ちょっと辛いことがあって、それでも幸せを掴むみたいな、白人同士の恋愛映画のようになぜ出来ない?
これがすでに差別的なのでは?と考えずにはいられない。
いきなり文句から入ってしまったが良い作品なのは間違いないと思う。
どちらかといえば恋愛より差別をテーマにしていると思うので、なんだ結局いつもの感じかと不満に思いながらも最初の指摘は的外れともいえるから。
主人公ファニーは自分にできる精一杯で幸せを掴もうとする。典型的レイシストな白人が嫌がらせや妨害をしてくるが、そんな中で、メキシコからの移民のウェイターやユダヤ人の大家など、アフリカ系アメリカ人のファニーと同じように差別される側の人々が親切にしてくれるところは、露骨に白人に対する逆差別ではあるが、良かったと思った。
それでも、ファニーよりも更に酷い思いをしたマイノリティは彼を助けてはくれない。この辺でバランス取ってるのかな。ファニー目線で美談になりすぎなかったところも好感が持てる。
あとは淡い感じの色調が美しかったね。特に衣装ワークは良かった。
すでに書いたように良い作品だとは思うんだけど、展開が穏やかすぎるせいかあまり面白くはない。
最後に、仕事場の物を盗む、みたいな軽犯罪は犯罪に数えないよ。的なところはアメリカはやっぱりアメリカだなぁと、呆れる。
音楽がめちゃくちゃいい
ある意味胸糞映画
劇中のセリフ
「白人は悪魔の化身」全員では無いけど確実に存在するようで
恐ろし過ぎる
日本に住んでると理解できないけど
韓国人や中国人を蔑んで見る日本人はその悪魔の化身2nd
でも韓国や中国にもその化身は居る
でも劇中の「黒白緑紫、どれも関係ない愛が広がればいい」「自分は母親の息子でしかない、人間の違いは母親が違うだけだ」
そんな思考の世界で溢れればいいのに
つまらない 退屈
最悪につまらなかった「ムーンライト」の監督なので用心したら、予想とおりつまらなかった。
同じ黒人主張派のスパイク君だってお話は大したことはないけど、華やかな映像、場面ごとのメリハリ、粋な音楽、過剰な演出などのおかげで主張プラスエンタメの醍醐味がありますが、この人はその真逆、地味な映像、平坦な場面展開、影の薄い音楽効果、平凡な演出なので、もともと大したことないお話が更に退屈で、妙に黒人主張だけが浮き上がってます。
まあ、「ムーンライト」ほどの気色悪さはないのでオマケの2点です。
人に薦める作品でないことは保証します。
ビールストリートに口あらば
新しい家も買って、妊娠してこれからの時に恋人がむじつのつみで捕まっちゃって恋人の冤罪を晴らすために奔走する話。
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人種問題が絡んでる作品だけど、そこまでその比率は高くない。ファニーが捕まる前の2人の幸せな様子と捕まった後の割合が半分ぐらい。映画中は現在と過去を行き来する。
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2人のロマンチックなシーンが綺麗だし、カメラワークが優しくて心が洗われる。人種問題とか冤罪とか難しいことを考えなくても、これだけでもかなりみる価値ある。
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あとバリー・ジェンキンス、『ムーンライト』の時からそうだけど、人を正面からうつすのがめちゃくちゃ上手い。特にお母さんが被害者に会うために化粧をするシーンは良い。
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日本版の題名もいいけど、やっぱり原作の『ビール・ストリートに口あらば』をそのまま採用して欲しかったな。
バリージェキンス
の映像は本当に綺麗。若い恋人2人が美しい。強い愛で結ばれた2人が現実に翻弄されながら愛を自然な形で貫く。人間というものを映像美で表現。映画は絵である。ストーリー重視の昨今の映画と一線を画す素晴らしい作品。
タイトルなし
原作は米黒人文学を代表する作家
#ジェームズボールドウィン の小説
映画「ムーンライト」でアカデミー賞作品賞を受賞した#バリージェンキンス が監督
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時代設定は1970年代
現代に置きかえたとしても違和感なく
黒人の冤罪は今も続く大きな問題
「原作が書かれた当時と違って今はよくなっているはずだと考えられがちだが、黒人にとってフェアじゃない形で運用される法律はまだたくさんある。
守り社会を統治するはずの制度が公正となっていない。だからこそ現代に設定し直すことなくそのまま映画化。45年経っても何も変わっていないことを示すために」
助けようとする人たちも多く出てくる
「ニューヨークはとても大変な街なだけに、ニューヨーカーたちはいろんな背景を持ちながら互いに家族のようになる」
そのうえで「それをただ1人の警官が壊した。すべての警官がかかわらなくても、刑事司法制度はたった1人の手で、とてもたやすく歪められる。残念ながら『ベル巡査』はどこにでもいる。こうしたことがどのように起きるのか理解し世間に知らしめる努力を、私たちは本当に粘り強く続けていかなければならない」
(ジェンキンス監督談)
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映像の美しさと情緒溢れる音楽で
感情に訴え魅了される映画
ムーンライトは良かったけど、こちらは単純につまんなくてイマイチ。映...
ムーンライトは良かったけど、こちらは単純につまんなくてイマイチ。映画作品としてアウトプットするなら、やっぱり面白くないとなあ。ムーンライトは俳優の良さで持ってたのかもしれないな。
世の中の理不尽、矛盾、差別、無理解 何もかも飲み込んで、それでもなお人生はあり、家族はあり、子供は育って行くのです
素晴らしい傑作
心に刺さりました
これほどに美しいラブシーンは観たことがないと思われるほどです
心が揺さぶられました
若い二人の恋、新しい命、家族への報告、父母の愛情と葛藤、家探し
何もかも美しく心に染み入ります
声高に差別や理不尽をぶつけてもどうにもならない現実は誰にだってあるのです
黒人への差別を描いているようであり、人種民族を問わず誰にでも起こりうるものなのです
親子三人のテーブルのラストシーンは、そうした中でも強く生きていくのだとのエールです
世の中の理不尽、矛盾、差別、無理解
何もかも飲み込んで、それでもなお人生はあり、家族はあり、子供は育って行くのです
美しい映像、美しい音楽、美しい衣装
素晴らしい俳優と演技
本当の傑作です
差別と貧困と権力は愛を叩き潰す
「ビール・ストリートの恋人たち」“困難を受け入れ負けない美しい恋人たち”みたいなコメントを読んでイラっとする。いや、“どれだけ抗おうが、差別と貧困と権力はその美しい愛を叩き潰す”という物語だよね。監督は否定するかもしれないけど、これは怒りの映画だと思う。
世界=自分
「何の変哲も無い幸せな家族の物語」であったはずなのに。。いや、この映画はそんな悲しい物語では無い。それでいて厳しい現実に目を背けているわけでも無い。
ではこの映画の世界が美しいのは何故だろう。それは彼女の目線で作品が出来ているから。一途で凛とした彼女、取り囲む暖かい家族、そして最愛のファニー。。目の前の厳しい現実に真摯に向き合いながらも決して希望を捨てない、それが特別な事ではなく日常であるかのように見せる。自分にとっても愛おしい作品になりそうです。音楽も好き。
告発
黒人が置かれた不条理を告発しながら、その環境下で生きる者を描く。のっけの2人の家族の対峙に緊張し、話に惹きつけられる。親父とお袋さんが良い。決して綺麗なことに納めず法外に踏み込み家族を守ろうとする普遍的なアプローチ。失われた2人ないしは3人の時間がこの家族を狂わせないよう願うばかりである。
静かで、限りなく美しい映画
無実の罪で投獄された愛する黒人の彼を、必死で助けようとする、彼の子を身ごもったやはり黒人の彼女とその家族の話。
果てしなく静かで、果てしなく重苦しく、そしてまた、果てしなく美しい映画。素敵な景色が出てくるわけじゃなく、下町のしがない景色だけが続くのだが、それがこの上なく美しく感じられる。人生で一度は観るべき映画。
愛とは奇跡を起こすものではなく、奇跡が起きなくても続くものが愛なのだと改めて気づかせられる。そして幸せとは、奇跡が起きることではなく、愛が続くことだと。
息子を交えたラストシーンが、我々に伝えるメッセージは限りなく、深い。
そしてそれはこの静かな映画を最後まで観た人にだけ訪れる至福の時なのだ。
自分は、(珍しく)涙することなく、けれどもかなりの深い感動を、静かに、力強く噛みしめました。すごい映画だ。
残酷さを美しく見せる
50年かけて人類も進歩してると思うほど、
70年代の黒人差別酷い。
はっきり言ってどうやって生きていいのか
分からないくらい酷い。
白人警官には無実の罪で捕まり、
収入もなく、
住むところも見つからない。
追い込まれて、
まるでのら犬の扱いのようで気分が悪い。
自由の国アメリカの自由は、
白人が自由に何しても良い自由なのだな…
映画はというと、詩的ではあるけど
僕にはちょっと良さがわからなかった。
今まであった70年代の黒人の映画で、
もっと酷くセンセーショナルな物はあったし、
恋愛という視点から映像も凄く綺麗だったけど、
僕にはかえって、
それが酷さを分かりにくくしてるように見えました。
ここまで強く美しく描くなら、
愛の力で全てをひっくり返すほどの
エンタテインメントが見たかった。
黒人差別の映画ってどんな結末でも、
納得のいかない、引っかかりが残ります。
秀作ではあるが、今回もまたバリー・ジェンキンスの感性が合うか否か
『ムーンライト』でアカデミー作品賞に輝いたバリー・ジェンキンス監督の注目の新作。
世界を魅了した『ムーンライト』同様、黒人社会の厳しい現状や一途な愛の行方を、監督の美しい感性で綴られている。
1970年代のNY。黒人たちのコミュニティ、ビール・ストリート。
そこで暮らす22歳のファニーと19歳のティッシュの若者カップル。ティッシュは妊娠し、貧しいながらも幸せな日々を送っていた。
だがある日、ファニーは些細ないざこざで白人警官の恨みを買い、無実のレイプ容疑で逮捕されてしまう…。
恋人の無実を証明すべく奔走するヒロイン。
直面する苦難の数々…。
この時代、逮捕されたハーレムの黒人青年の事など誰が気に留めようか。理不尽な差別、迫害…。
力になってくれる筈の身内からも。恋人の母親はティッシュに憎しみをぶつける。
幸せだった頃の過去と、辛く苦しい現在が交錯。その対比が切ない。
そんな中でも、担当してくれる事になった白人弁護士や恋人の白人の親友。黒人社会の陰の中に差し込む光を反映。
本作でアカデミー助演女優賞受賞、ヒロインを支える母親役のレジーナ・キングの演技と存在は頼もしい。
初々しい主演二人。オーディションで選ばれたヒロインのキキ・レインが光る。
静かで繊細、美しくムーディな映像、音楽、ストーリー、演出、感情…。
実は、『ムーンライト』があまり肌に合わなかった自分。
今回は『ムーンライト』より、話的にも題材的にも入り易いと感じた。
…であるのだが、正直、ドンピシャに肌に合ったとは今回も言い難い。
好みというより感性の問題なので、こればっかりはどうしようもない。
また、冤罪の行く末も。黒人社会のメッセージは込められているが、もう一味欲しかった。
連続で秀作放つバリー・ジェンキンス。
だが、個人的には今回もホームランとまでは行かず。
次回作は…?
不自由な国アメリカ
個人評価:3.8
劇中バックグラウンドで流れる、静かで美しい旋律が、この物語と空間を深みのあるモノにしてくれている。
まだ若いカップルが結婚目前で、理不尽な不幸に巻き込まれる。
幸せな時期と、現状の不幸とを交互に対比させながら描き、悲しみがより浮き彫りになってくる。
自分が結婚を目の前にし、同じ境遇になったらと考えると、心が冷たくなり、物語がより悲しくなる。
エンディングテーマの歌詞、愛すべき自由の大地、尊い祖国、というフレーズが、不自由な国アメリカに皮肉に、そして悲しく響きわたる。
翻弄される黒人恋人たちの悲劇
二つの時間軸が、代わる代わる進められていく。
一つは回想。幼馴染みのティッシュとファニーの、恋愛への心情や関係の変化が、ゆっくり丁寧に描かれていく。
見つめ合う表情、躊躇いながら身体を重ねる様子など、拘りを感じる丁寧な表現で、恋愛ものとしては好感が持てる。
が、私は恋愛ものが苦手というか、あまり興味がないのだった。恋愛が丁寧に描かれるが故の退屈。これは個人的嗜好なので仕方ない。
もうひとつが現在、ファニーの巻き込まれた冤罪事件と、身重ながらその解決に奔走するティッシュや家族の様子が語られる。
異なる人物設定であれば、クソ警官の不正で済まされそうな話だが、二人が黒人である事で、局面が深刻化している。黒人である為だけに受ける謂われなき差別、侮蔑、不当な扱いへの苦しみが、時に現実の映像を交えて訴えかけられる。
こちらの描き方が少々中途半端。恐らく重くなり過ぎない表現ラインを探ったものと思われるが、恋愛ものの側面に食われぎみだし、語られずスルーされた要素も多い。ダニエルはどうなった、弁護士の奮闘の詳細は?
また、二人の父親の「白人が俺達の財産を盗んだんだ、俺たちにも出来るさ」発言からの、商品の窃盗横流しなど、どうしようもない現実と辛苦を訴えたいのは解るが、被害者側の意識に寄りすぎて些かバランスに疑問を覚える部分も…。まあ、受け取る側によって感情の変わるデリケートな問題とは思うが…。
黒人である二人に好意的な黒人以外の面々の殆どが、ユダヤ人など結局マイノリティ側であるのも、差別問題の根の深さを感じる。黒人問題で描かれる善人な白人は、度々批判的な指摘を受ける。繰り返し取り上げられる黒人差別だが、とりわけ扱いの難しいテーマでもあるよなぁ。
画の撮り方、色合い、暗さと光の美しさなどはとてもお洒落で美しい。
それだけに、お洒落で大衆に受け入れられ易い恋愛ものに、アカデミー受けする黒人問題を盛り込みました、というようなむず痒さを感じるのは、ちょっと意地の悪い邪推かな。
二本立てで、「マイ・ブックショップ」と立て続けで、人間の悪意と不正の横行する現実を見せつけられたので、大分がっかりしょんぼりしてしまった。
無邪気に逞しく育つ子供と、不正は正せなくとも心は屈しないぞ、と立ち直ったファニーの生気ある表情が、唯一の僅かな救いだろうか。
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