ちいさな独裁者のレビュー・感想・評価
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「服は人を変える」の悪い例
日本版のポスターが秀逸だと思う。主演俳優の顔をカットして軍服を全面に押し出す。主人公は軍服に操られる存在に過ぎない、真の主役は軍服なのだと力強く訴えている。
着る服によって気分が変わることは誰でもあるだろう。しかし、その効果は強すぎた場合、この映画が描くようなことは誰にでも起こりうるかもしれない。服は人を変える力がある。これはそれが悪い方向に変わってしまった場合の物語だ。ナチスの軍服は、その意味で非常に完成度が高いと言える。ただの若造にあれだけの威厳と権力を与えてしまうほどに強力なデザインだったということだ。
しかし、服だけであれだけ人間性が変わってしまうことがあるのだろうか。服という外部要因だけでまるで違う人間に変身してしまうとしたら、人間の本質とは何なのか。玉ねぎの皮のように剥き続けたら、中には何も残らないもので、どこまでも外部要因の積み重ねでしかないのだろうか。そういう人間の本質の空洞さのようなものが見えるから本作は恐ろしい。
驚きの実話〜「総統」という言葉が持つ魔力
2018(日本は2019)年公開、ドイツ・フランス・ポーランド映画。
【監督・脚本】:ロベルト・シュヴェンケ
主な配役
【ヴィリー・ヘロルト上等兵】:マックス・フーバッヒャー
【フライターク上等兵】:ミラン・ペシェル
原題は、『Der Hauptmann(大尉)』
実話というから驚く。
しかも、本作は大きな脚色はせず、
史実に沿って製作されたというから、
二重に驚いてしまう。
この出来事が起こった背景としては、
◆ナチスドイツにとって終戦直前の敗走期であったこと
◆精兵として有名だが絶対数が少ない「降下猟兵」所属であったこと
があるのではないか、と思う。
「事実は小説より奇なり」
を地で行くストーリーだ。
後方の掌握、を口実にやりたい放題。
歴史の面白さは、
ドイツ人が実質的に無罪放免したのに対して、
連合国側が彼を赦さなかったことだ。
当時のドイツ軍部の混乱、腐敗、
「総統」という言葉が持つ魔力が
よく表現されている。
サイドストーリーではあるが、
戦記好きは必見だろう。
俳優陣の演技も素晴らしい。
エンドロールと共に流れる映像を観て、
『帰ってきたヒトラー』を思い出した。
☆4.0
前後半で別の映画
これ実話なのがは凄いしヘロルトが20歳そこそこの若者だった事に驚愕...
胸糞映画
普段戦争映画は観ないのですが何となく観てみました
脱走兵の虐殺シーンは終始胸糞悪かったです。
それにしても収容所での電話のやり取りで何故バレ
なかったのかが不思議、だって存在しないはずの大尉のはずなのに
なんで全権任せられる事になっちゃうの?
まぁ本人の才能+戦争末期での混乱等色々要素は
あったのでしょう。
それと戦争映画という事で今のウクライナ情勢も重なりました
ロシア軍による民間人への虐殺などヘロルド達がやってた
脱走兵への無慈悲な大量虐殺とやってる事同じ・・・いや現実は
子供を含めた非戦闘員が犠牲になっているのでそれ以上の悪逆非道な
振る舞いですよね。
ロシア側にも大義がない戦いに駆り出されたであろう若いロシア兵の
中には訳もわからず死んだ者や当然脱走した者もいるんじゃないかな、
映画での極限状態での狂気ぶりを見ていると今これと同じ事が
たった一人の権力者のせいで現実に行われているんだと思うと
胸が痛むばかりです。
脱走兵が偶然見つけた軍服で大尉になりすます。弱い立場の主人公を最初...
ナチスの映画を観ると、つい自分の国のことを考えてしまう。
え!実話なの!?
狂気的
前半はなんとなしに面白おかしく観ていたが、気づいた頃にはある意味引いてた自分がいた。
その狂気的な振る舞いは他の兵隊たちをあざむき、むしろ自分たちが略奪や殺戮を繰り返しエスカレートしていくわけだが、考えてみたら騙すヘロルトも騙される兵隊たちも初めからクズなわけで、最後にはお互いの立場も理解しながら止められない流れの中愚行を繰り返していく。
これが事実だということがにわかに信じられないし、劇中の最後の一言には衝撃だった。
ほんとに本当の出来事か??今の感覚でははかれないほど、めちゃめちゃな時代だったのだろう…
いやぁしかし話変わりますが、はきはきとしたドイツ語ってかっこいいですな!
《鑑賞履歴》
2022/9/12
期待以上!!
史実と言う事で。。。
(°_°)予想通り胸糞悪し
“比較的”面白いナチス内部映画。
 「誤ったことをしてしまったら、せめて認めろ・・・?」 なんだかわからない父親の言葉らしいが、そんな単純構造の頭の20歳のヘロルト。部隊を抜け出し偶然拾った将校の制服を纏うと人が変わったようになる。道中、脱走兵と思しき兵に何人も遭遇するが、一様に「部隊からはぐれてしまった」と言う。ちょっと騙してみるかという軽い気持ちで始めた成りすましに皆まんまと引っかかっていく様子が面白いのだ。一人、ズボンの丈が合ってないことに気づいた上等兵もいたが、逆にヘロルトを利用しようとしたのだろう。軍用車の後ろを歩くのが不満そうに思えた。
 人間は皆権威をまとったかのような制服には弱い。いや、男ならコスプレイヤーやメイド喫茶でも弱いじゃないかと思った方、それもある意味正解なのかもしれない。周りの人間が逆にもてはやし、忖度することによってコスプレ本人もその気になるからだ。
 ナチスの映画としては珍しくユダヤ人迫害シーンが一切ない。これも特徴の一つなんだろうけど、ナチス・ドイツに限らず、戦争を行ってる国ならばどこでも当てはまりそうな戦争心理が描かれている。敵前逃亡とか脱走兵というのは重罪であることも全世界共通だろうし、食うものに困った兵士が民家に侵入、略奪、レイプ、殺人など、非人道的な行為すら万国共通。そんな彼らの罪を許し、仲間になれ!と上官に説得されれば、二つ返事でほいほいついて行くのも理解しやすい。病気も蔓延してなさそうだし、人肉を食らうまでの鬼畜に陥っていないだけまだ可愛いものだとさえ思う・・・。とにかく、どんな戦争にもこうした悪魔的状況が必ず生まれるものだということはハッキリ言える。
 実話を基にしているらしいので、ここまで空軍大尉を演じ切るのは凄いことだと思う。たしかに嘘のつき方も徹底していて、“総統直々の命令”だと言えば誰も逆らえなくなる。犯罪者収容所では90人ものドイツ逃亡兵を虐殺するが、そこで味を占めたヘロルトは今まで自分で手を汚さなかったのについに自ら射殺する。さらに空爆を逃れた仲間たちとともに“即決裁判所ヘロルト”なる車で街を街宣したりする。タイトルバックがドーンと出たから、もういい加減に捕まれよと思ってもまだ続く。この蛇足的なまでに執拗に映像化するのも嫌戦感を煽る効果なのかもしれないなぁ・・・。
 “比較的”ネタのコメディアンのシーンは笑いたいのに笑える雰囲気じゃなかった。同じ状況で自分だったらどうする?と問われると、やはり服従するんだろうな~と、一般人がファシズムに走る心理面を描いたブラックコメディ作品でした。
〈追記〉
ナチスの制服を着る話なら『ウォーキング・ウィズ・エネミー』の方がおすすめです!
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