ちいさな独裁者のレビュー・感想・評価
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狂気的
前半はなんとなしに面白おかしく観ていたが、気づいた頃にはある意味引いてた自分がいた。
その狂気的な振る舞いは他の兵隊たちをあざむき、むしろ自分たちが略奪や殺戮を繰り返しエスカレートしていくわけだが、考えてみたら騙すヘロルトも騙される兵隊たちも初めからクズなわけで、最後にはお互いの立場も理解しながら止められない流れの中愚行を繰り返していく。
これが事実だということがにわかに信じられないし、劇中の最後の一言には衝撃だった。
ほんとに本当の出来事か??今の感覚でははかれないほど、めちゃめちゃな時代だったのだろう…
いやぁしかし話変わりますが、はきはきとしたドイツ語ってかっこいいですな!
《鑑賞履歴》
2022/9/12
期待以上!!
予告編から面白そうだなと思って観に行ったら完全に期待以上でした
実話の物語ながらストーリーは面白いし、役者さんの演技すごいし
この映画を通したメッセージ性も考えさせられるところがあり多くの人に観て貰いたい映画
人間の心の闇を見せ付ける
唖然としてしまうような話だが、実話ベースの作品なのだそうだ。
一兵卒の脱走兵が、将校の制服に身をやつし、嘘と演技で言い逃れる内に、残虐な指導者へと変貌していく。
恐らく最初は、脱走兵として処分される事への恐怖、殺らなければ殺られるの心情だったのだろう。
それが次第に、明らかに行き過ぎた虐殺行為へと変わっていったのは、従わせる権力に、他者を虐げる暴力に、快感を覚えたからだろうか。
彼だけではない。部下となった兵士、助かりたい脱走兵、将校の妻までもが、処刑すべき罪人とされた人間に対し、いたぶるように背後から、銃を向け発砲し撃ち殺す。 部下の一部は彼の嘘に薄々感づいているようにも思えるが、それを暴く事はしない。
自分は殺されたくない、という恐怖からの自己保身が強く働くのだろう。人を殺してでも自分は生きたい。責められない欲求だ。けれどそれだけだろうか。
被害者になるより加害者である方が、安心だしマシだし楽しいのだ。狂気のように見えるその行為の、根底に流れる感情は、生き物として人間として、多かれ少なかれ誰もが当たり前に保持しているもののように思える。それが心底恐ろしく、腹の底がずうっと冷えていく。
とうとう捕らえられ、裁判にかけられた時、軍人の上官は、彼の行為を正当化する。「我々も昔はよく銃でやんちゃしたもんだ。それに彼は度胸があるし、友軍に害は加えず、役目を果たしている」大変なブラックジョークだが、これが普通にまかり通る戦時の恐ろしさ。
正に、英雄とは稀代の殺人者なのだ。
エンドロール、主人公率いる即決裁判部隊は、現代の街並みを闊歩し、手当たり次第に人々を捕まえては、難癖をつけ持ち物を没収していく。人々は彼らを不信な目で見やり、憤慨したり反発したりする。
現代では明らかにおかしいと感じられる行為が、当然で仕方がないとして受け入れられていたかつての異常さを浮き上がらせると共に、彼らは過去の人間ではなく、現代にも存在する危険なのだと警鐘を鳴らしながら、物語は終了する。
あなたの隣に、私の中に、ちいさな独裁者は存在する。
怖さと苦さが、消えない後味として残る映画だった。
「小さな独裁者」は今でも世界中にいる。
こんな恐ろしい事実が第二次世界戦争末期のドイツで
起こっていとは、少々驚きでした。
映画のエンドロールになると、主人公たちは、現代のドイツに迷い込む、というか、現れてスマホを手にした普通の人々に傍若無人な振る舞いを行う、これが移民排斥や経済的混乱に揺れる今のヨーロッパの現状とだぶって見えました。このエンドロールのシーンは、単なる
監督のサービスカットなのか、ここがこの映画のコアなのかは観る人次第でしょう。私は前者だと思います。
だって、本編は本当に良く出来た映画だからです。
史実と言う事で。。。
収容所の所長は少佐だと思うので、主人公は大尉でなく、少佐であった方が良かった。
が、観賞後に実話だったと聞いて、最後にビッくり!
ならば、大尉という設定でヨシ
最初の逃亡時の顔と、後半の顔が別人の様に代わる事で彼の心の中がよく表れていた。
素晴らしい演出力と演者に、この映画のすばらしさを感じた。
エンドロールは「返ってきたヒトラー」みたいだった。
この映画を観たら「サウルの息子」をまた観たいと思った。
よかった
ニセ大尉だと、バレているのに敢えて乗ってる人と、本当に信じている人がいて、面白い。分かっていて自分に利するために分からない振りをしていながら、威張られたりひどい命令を下されたら、本当にムカつきそうだ。そこをあまり強調して描いていないところがセンスだと思うのだけど、ちょっと退屈でもあった。もうちょっとそこでハラハラさせたり、主人公を追い込んだりする場面が見たかった。
最後の裁判の場面で、主人公が姿勢をほめられたところが面白かった。
(°_°)予想通り胸糞悪し
予想通り胸糞悪い映画でした。
偽物が権力を握り立派な様相をまとえば悪いことならなんでもできちゃうってことでしょう。その偽物の命令に逆らえなくなるのが本当に怖いところ。エンディングは明らかに現代にダブらせているメッセージがあるってことでしょう。
レビューの中に安倍首相へ見せたいと言ってた人がいましたが私は逆で、何年か前民主党が政権を握っていた時代がこの状態であったんじゃないかと思いました。鳩山、菅、明らかな偽物。あれが続けば大虐殺に似た状態に日本の政治はなっていたのだろうと思います。
“比較的”面白いナチス内部映画。
「誤ったことをしてしまったら、せめて認めろ・・・?」 なんだかわからない父親の言葉らしいが、そんな単純構造の頭の20歳のヘロルト。部隊を抜け出し偶然拾った将校の制服を纏うと人が変わったようになる。道中、脱走兵と思しき兵に何人も遭遇するが、一様に「部隊からはぐれてしまった」と言う。ちょっと騙してみるかという軽い気持ちで始めた成りすましに皆まんまと引っかかっていく様子が面白いのだ。一人、ズボンの丈が合ってないことに気づいた上等兵もいたが、逆にヘロルトを利用しようとしたのだろう。軍用車の後ろを歩くのが不満そうに思えた。
人間は皆権威をまとったかのような制服には弱い。いや、男ならコスプレイヤーやメイド喫茶でも弱いじゃないかと思った方、それもある意味正解なのかもしれない。周りの人間が逆にもてはやし、忖度することによってコスプレ本人もその気になるからだ。
ナチスの映画としては珍しくユダヤ人迫害シーンが一切ない。これも特徴の一つなんだろうけど、ナチス・ドイツに限らず、戦争を行ってる国ならばどこでも当てはまりそうな戦争心理が描かれている。敵前逃亡とか脱走兵というのは重罪であることも全世界共通だろうし、食うものに困った兵士が民家に侵入、略奪、レイプ、殺人など、非人道的な行為すら万国共通。そんな彼らの罪を許し、仲間になれ!と上官に説得されれば、二つ返事でほいほいついて行くのも理解しやすい。病気も蔓延してなさそうだし、人肉を食らうまでの鬼畜に陥っていないだけまだ可愛いものだとさえ思う・・・。とにかく、どんな戦争にもこうした悪魔的状況が必ず生まれるものだということはハッキリ言える。
実話を基にしているらしいので、ここまで空軍大尉を演じ切るのは凄いことだと思う。たしかに嘘のつき方も徹底していて、“総統直々の命令”だと言えば誰も逆らえなくなる。犯罪者収容所では90人ものドイツ逃亡兵を虐殺するが、そこで味を占めたヘロルトは今まで自分で手を汚さなかったのについに自ら射殺する。さらに空爆を逃れた仲間たちとともに“即決裁判所ヘロルト”なる車で街を街宣したりする。タイトルバックがドーンと出たから、もういい加減に捕まれよと思ってもまだ続く。この蛇足的なまでに執拗に映像化するのも嫌戦感を煽る効果なのかもしれないなぁ・・・。
“比較的”ネタのコメディアンのシーンは笑いたいのに笑える雰囲気じゃなかった。同じ状況で自分だったらどうする?と問われると、やはり服従するんだろうな~と、一般人がファシズムに走る心理面を描いたブラックコメディ作品でした。
〈追記〉
ナチスの制服を着る話なら『ウォーキング・ウィズ・エネミー』の方がおすすめです!
かなり奥深い
ナチス将校の軍服は現代に言い換えれば地位や権力やお金である。実力のない者がある日突然に地位や権力やお金を持つと一気に変貌し破滅する典型的な事例であり人間の欲望を見事に表現している。故にこれは単なる歴史の1ページではなく現代にも通じる社会の闇を描いた作品。ナチス戦犯者の名を借りた現代への忠告でもあり、かなり奥深い印象を受けた。
2019-93
仮の話だ、私は軍服を盗んだ。
実話だという。観ながら頭に浮かんでいたのは、落語の「らくだ」だった。はじめ、横暴なやくざ者と、そいつにいい様にこき使われていた屑鉄屋が、いつの間にか立場が入れ替わりだして、気の弱かった屑鉄屋がやくざ者を顎で使いだす噺だ。つまり、さっきまでAという立場だったものが、ちょっとしたきっかけでBになる。すると、Bとしての立ち振る舞いが板につくようになっていく。その状況が同類なのだ。
そして、そんなハロルトに気が付きながらも、そのまま便乗してしまおうと、虎の威を借る奴の浅ましさも描く。
まったくもって、精神が極限状態に陥った、終戦間際の狂気をまざまざと見せつけられた。先がどうなるか、そのヒリヒリ感とハロルトの「名演技」に脱帽。
ただ、エンドロールのおふざけは、悪趣味すぎるなあ。
権力への盲従
終戦間近の混乱期、脱走兵が偶然にも手にしたSSの制服で「独裁者」になっていく物語。だが、彼は段々と将校を演じていくのではなく、もはや身につけたその瞬間からその威力に取り憑かれているようにも見える。
丈の合わぬ制服を見抜く者もいるが、結局は互いが互いを「利用する」。戦争末期という混乱もあるが、何より「上の者に盲従する生き方」が恐ろしい。着ている本人が一番「制服」に盲従して残虐な行為を行なってしまうのだ。絶対的な存在の恐ろしさを感じた。
制服の威力を失った後の裁判も些か滑稽ではあるが寒気がする。
印象に残ったのはエンドロール。明らかに現代と思われるところで尋問する彼ら...。やはりどことなく薄ら寒くなるラストであった。
借りてきた権威とその盲従への恐ろしさをひしひしと感じた一作。
【カルト宗教団体の行為を(思い出したくもないが)想起してしまった作品。人は、何故容易に空っぽな洗脳にひっかかるのであろうか・・。】
ー 中身のない空っぽな人間が大衆を扇動し、残虐な行為を表情一つ変えずに取り巻きに指示し、又は自ら遂行する。ー
◆感想
・この映画の主人公に共感する部分は皆無であるが、何故彼がこのような蛮行をあの時代に平然と行った背景は理解出来る気がする。
・エンドロールで流れる、現代ドイツの街角で蛮行に及ぶ彼らの姿は制作サイドの現状に対する警鐘であろう。
・他の方も言及されていたが、若い世代に観て頂きたい映画である。
<現代でも、同じような状況が世界で繰り返されている。
人間とは過去に学ばない生き物なのであろうか・・。>
安倍首相に見せたい映画です。
心理描写に優れた作品ですね。ただ、わずか、ひと月にも満たない間に起こった事件であることを考えると、物事を単純して考える必要があるでしょうね。もともと、その個人が持っていた思想と呼べない思考を理解すれば、同じような事が、常に起こると考えた方が良いのでしょうね。警鐘として観ました。
生き抜くことに必死なあまり…
一つの小さな嘘をごまかすために嘘に嘘を重ね続け、やがてその嘘が膨れ上がってエスカレートし、嘘をついた人間が怪物となっていくという話だった
よくできたフィクションだなぁと思いながら観ていたら実話だった
1945年、第二次世界大戦末期のドイツ
上等兵のヘロルトは、ドイツ軍を脱走
その途中で大尉の服を拾い、大尉になりすます
そして、その嘘を突き通すために人を殺し、その行為はエスカレートしていく
例えば、目の前に警察官の服装を着た人がいて「ちょっと良いですか?」と職務質問されたら、疑う人はいないだろう
主人公のヘロルトは、ただの上等兵なのにもかかわらず、ナチスドイツ軍大尉の制服を拾って着て以来「大尉である」と嘘を突き通し続ける
ヘロルトは、なぜ、嘘を突き通し続けることができたのか
引っ込みがつかなくなったということもあるだろう
しかし、恐らく、実際にナチスの制服を着て上官のフリをしてみたら、周りからチヤホヤされて何でも手に入るし、気分が良かったんじゃないかと思う
そして、二度と元の脱走兵の生活には戻りたくないと思い
気に入らない人間を次から次へと殺すことで周囲に恐怖心を植え付け、 服従させたのではないか
果たして、ヘロルトは嘘をついていることに罪悪感も持たなかったのだろうか
いや、それぐらい、当時のドイツでは、罪悪感よりも生き抜くことに必死だったということだと思う
そこは戦場で、いつ殺されるかわからない状況の中、生き抜くためなら、どんなことだってやってやる
そんな「窮鼠猫を噛む」の状況だったんだろう
だから、この話は恐ろしいのだ
「死ぬ気でやる」人間は、何をしでかすかわからないのだ
そんな恐ろしさにゾッとしてしまう映画だった
意外に残酷ですが実話系ですからね
目をそむけないできちんと観ることによって
歴史と人間のさがに対峙することができます
実話系ですから、評価もくそもありません
戦後、まもなくして英国軍によって
彼とそのとりまきは全て処刑されました
戦争の狂気と人間の性を見せつけられた感じがしました
終戦間近のドイツ軍の上等兵ヘロルトが引き起こした詐欺と謀略の物語。脱走で追われる中、偶然空軍大尉の制服を手に入れた彼は、制服の持ち主に成りすますことに成功します。最初は飢えを凌ぐためのほんのお芝居の積りだったのでしょうが、言葉巧みな彼は規律で鳴らしたドイツ軍の上官たちをいとも簡単に誑かし、いつの間にか大変な権力を握るようになります。この辺りの流れは、詐欺師が人を騙す手口と全く同じなのですが、巷の制服詐欺の話とは違って、人殺しが仕事の軍隊ではたちまち人命に関わります。事実、物語は冗談では片付けられないような深刻な事態に発展して行くのですが、この物語が実話がベースと聞いて本当にビックリ。最初はコメディーのようなノリで観ていたのですが、ホラー映画でもないのに余りの狂気に背筋が凍る思い。「馬子にも衣裳」とは言いますが、見た目だけでこれほど容易に騙されてしまう人間の馬鹿さ加減、そして...一旦権力を持つと悪魔に豹変し得る人の本性に戦慄を覚えずにはいられませんでした。
今まで見た戦争物の中で一番エグく残酷だった。
だがそれこそが私たちにナイフを首筋に押し当てている。
残虐性は、自己愛からの他者への防御(は攻撃となる)や嘘、自らの平穏ゆえだ。
それは戦場だから引きずり出されたものか?
平和な日常には決してないものなのか?
based on a true storyのこの映画での物語のラスト。
そのラストの意味やエンドロールにこの映画のいち回答がある。
もう二度と見たくないが、胸糞悪映画の予感を感じつつ意を決して見に来て良かった。
未来ある柔軟な若い人に身てほしい。
きっと年を取って見たら、より残酷さがまして見えるだろうから。
彼の行為は悪夢ではなく現実である
1945年4月、第二次世界大戦末期のドイツ。
敗戦目前のドイツ軍の若いひとりの兵士(マックス・フーバッヒャー)が、命からがら脱走する。
生き延びた彼がみつけたのは、路傍に置き座られたドイツ軍の車。
後部座席にあった大尉の軍服を見つけた彼は、ヘロルト大尉と身分を詐称し・・・
といったところから始まる物語で、映画において、自分以外の何者かになりすます話は多々あり、概ね佳作・秀作・傑作の部類に入っていたりする。
男性が女性になった『お熱いのがお好き』、その逆『トッツィー』、大統領になっちゃう『デーヴ』など。
なんだけれどこの映画は実話だそうで、「生き延びるために」上等兵が大尉になり、終戦間近の混乱に乗じて、非道ともいえる(というか、非道そのものなのだが)行為に及ぶという話で、まぁ、いっちゃなんだが共感の欠片なんて目覚めない・・・
「・・・」って書いちゃうのだが、これは「・・・」って書かないといけない。
そりゃまぁ、人道的に考えても、収容施設に収監されている脱走兵など、彼の立場と同じ同士を皆殺しにしちゃうなんて言語道断なのだが、生き残るために重ねる嘘によって、そんな言語道断な行為する「当然」「当たり前」「立派な」行為になってしまうことが恐ろしい。
でもでも、恐ろしいけど、「やっちゃうよなぁ・・・」と思わせてしまう状況・・・
それが、戦争。
いや、もう、敵を殺す云々の状況にないわけで。
敵も殺さない奴らを活かして、その上、我々がひもじいので良いのか!!!!!!(って感嘆符、どれだけあれば足りるかわからないぐらいな状況)って、かつての「貴様の身を挺して相手をやっつけてこい、死んで還るな」と、まぁ、ほとんど同じ状況ではありますまいか。
なので、彼のことを笑えないし、畜生にも劣るとも貶せない。
で、そんな、空恐ろしい、えげつない、おぞましい話をハリウッド映画で鍛えた演出で、「これでもか!」とロベルト・シュヴェンケ監督は撮っている。
エンドタイトルのバックには、ヘロルト大尉の特殊部隊が現代に蘇るのだが、これを悪夢と感じられるひとは幸いであるが、これは夢ではなく現(うつつ)に思えて、気が滅入ることしきりでした。
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