蜜蜂と遠雷のレビュー・感想・評価
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原作が良すぎて…
一気に読ませるものの、やはり分厚い上下巻の原作は物語も人物描写も複層的で分厚い。2時間の映画にするために削られた原作の要素が多すぎる。TVかネット配信サイトでの時間をかけたドラマ化を切に願う。
俳優も森崎ウィンも松坂桃李も鈴鹿央士も予想以上に良く、彼らの長いストーリーをもっと見てみたいと思わされた。
斉藤由貴は嫌いではないが、英語のイントネーションが気になったし、もう少し痩せた枯れた女優にやって欲しかった。
主役女優は頑張っているんだと思うが個人的にお茶の間イメージが拭えなかった。
そして演出。消えていた時間と苦悩を表現するには、雨と馬に逃げてる場合じゃないだろう。
濃密で荘重で沈鬱な空気
物語がピアノコンペティションの1次予選から最終選考までを描いており、善悪もなく、只管各出場者の刻苦勉励の苦闘と本番のパフォーマンスを描くことに終始しているため、屋外シーンもなく、無論アクションもラブロマンスもないため、スジとしては極めて単調にして淡白であり、映像として動きも抑揚のない、敢えて言うとピアノの激越な敏捷さでの弾奏が唯一の見せ場の動きであり、ピアノに縁のない大半の観衆にとっては、どちらかいうと退屈な物語といえます。
主な出場者4人にスポットを当てつつも、互いの確執は生じず、唯々求心的に己の音感と技量を磨き上げる、息苦しいまでの極めてストイックな求道者の世界で、物語というより一種のドキュメンタリーフィルムとも捉えられます。
ただ、にも関わらず、間延びしたような尺を一切感じさせず、約2時間、観客を飽きさせず惹きつけ続けた監督とカメラマン、そして編集の手腕と力量は大いに評価できます。
それは、映画の最大の構成要素である「スジ」が単調であり、また役者の「ドウサ」(演技)も所作・言動よりも専ら微妙な表情の変化による感情表現が主となるという、非常に地味で見栄えがつけ辛いため、畢竟残る「ヌケ」(映像加工技術)に粋を凝らしきったことの成果だと思います。手持ちカメラを多用することによって、強引なほど画に動きをつけて、而もスピード感と緊張感を漂わせ、更に常に仰角の寄せカットを多用することで観客に重圧を与え続けました。
カットも小刻みで速いテンポで割られ続け、やや長回しになるのは、出場者最年長の松坂桃李のシーンのみです。
ピアノ演奏のエリート中のエリート達は、狂人と紙一重の天才揃いであり、私には感情のないロボットのように見え、いわばロボット同士による玲瓏でロジカルに無表情で頂点に向けて疾駆する、もはや無意識での氷点下の世界のように感じられました。
松岡茉優の、喜怒哀楽が少なく正気と狂気の境目を彷徨う迫真の演技は、その典型ですが、唯一人、松坂桃李のみは飄々としつつ、彼が画面に登場すると人間的な温かさが湧きだす感覚がしました。寄せの長回しを松坂桃李の場面だけにしたは、その所為でしょうか。
映画に求められる三要素「笑い、泣き、(手に汗)握る」において本作は、終始手に汗握り続ける映画であり、原作である小説であれば十分醍醐味を満喫できるでしょうが、2時間ずっと濃密で荘重で沈鬱な空気に包み込まれ続けては、日常空間で観賞する映像作品としては適宜緊張を緩和させて観られるでしょうが、非日常の閉鎖空間である映画館で観る「映画」としては、果たして如何かと思うしだいです。
連弾がいいね!
巷では原作との比較で評価が分かれているようですが、私的には楽しめました。
俳優が実際にピアノを弾いていないとか、誰々がミスキャストとか、そんな細かいツッコミはさて置き・・・クラシック音楽を扱った邦画でこの出来映えはちょっと記憶にないかなと。
お気に入りは連弾のシーン。二人の天才がコラボする場面ではピアノを弾く楽しさが手に取るように伝わってくるし、母が娘に教えを説く場面ではこの上ない優しさに満ち溢れている。母が最後に娘の耳元で囁く言葉が本作のクライマックスでしょう。
飛び抜けた才能を持つ三人のピアニストが利害なんぞ度外視で自然に絡み合いながら成長していく姿や、天才と狂気は紙一重と思わせる所なども巧く描かれていたかなと思います。
ウン、原作小説も読んでみたくなりました。
黒い馬は壁だ。
蜜蜂と遠雷を見た。
コンテスタントのコンペティションの話だが、神からのギフトを得た天才達も実はそれぞれに壁を抱えて闘っており、そういう意味では私と変わらない。
私はピアノを弾く時、人前に出ると手が震え、足がガクガクなり、練習してきたことの半分位しか演奏できない。
この映画には黒い馬がモチーフとして何度も出てくる。原作にはなかったと思う。馬の足音は二拍子であったり、三拍子、四拍子と動く速度で変わる。黒い馬は壁だ。それはピアノであり、指揮者であり、自分の過去であり、未来だと思った。
その壁を乗り越えて行った先に、新たな世界が広がり、また次の壁がそびえている。そんな光景は、私がピアノを弾く時と同じ様な気がした。
凡人にはわからない世界?
原作未読なので原作の世界観はわからない。
ただ、音楽、ピアノの世界に生きる者たちの夢と葛藤、それを取り巻く業界の構図を垣間見ることはできる。
後世に残る天才や楽曲が生まれれば、人は後に称賛するが、業界の中での動き止まりの内容では、関心のない他の世界の人にはやはり他人事。
その意味で自分にはオーケストラとピアノの演奏会として見ることで納得せざるを得なかった。
この映画に入り込めなかった要因は、松岡茉優演じる亜夜が、なぜ7年のブランクから復帰したのにも関わらず、演奏に躊躇しているのか、そもそもなぜ7年前に逃げ出したのか、その要因が母親の死が関係しているのかというような背景がわからずじまいで、そしてそういう葛藤や苦しさを抱えているのかと思えば、ピアノの演奏仲間にはフレンドリーに接しているどっち付かずの姿。
新人演じる塵も悪くはないが、浮世離れしすぎの行動に、新人ゆえの技量不足なのか本当の演技なのか、安定感を見いだせず。
ユウジなんとかいう天才ピアニストがなぜ刺客を送り込んできたのか、亜夜を復活させ覚醒させようとしたからなのか、だとしたら7年前に存在を知っている必要があるがその伏線もなく。
松岡茉優も悪くはないが、演奏の姿がカクカクしすぎでわざとらしく、それ以外も顔芸で勝負しすぎで逆に浅はかに見える。
何より最後まで引っ張って一位じゃないのかいというオチに何を伝えたかったのかに苦しむ。
森崎ウィンが一番まともで、安定感があった。
原作未読者には、秋の夜長に音楽聞くならいいかという感じかな。
ピアノ好きにはいいですが‥。
原作を読んだ者としては、やはり早足、はしょってる感は否めませんでした。
登場人物の背景など、未読者には分からない部分も多いと思います。
ただこれ以上長くすると、冗長気味になってしまうかな。
全編に誰でも知ってるピアノの名曲が流れ、個人的には楽しめました。
演奏シーンも迫力がありました。
ホフマン先生の言う、音楽を外に連れ出そうというコンセプトがもう一つ伝わってこないのが残念でした。
音の良い映画館で観るべき作品
鑑賞後、気持ちがゆったりとする作品。クラシックに縁遠い私ですが、音で会話すると言う演出、なんとなくですがわかる様な気がします。
ただ、観た箱の音響が‥
音響の良い箱でもう一度観たいと思います。
4人のピアニスト。
キャスティングはぴったりだったと思います。
特に鈴鹿君良かったです。
明石の存在が映画では効いていて、作品にリアリティが生まれた気がしました。
そして、実は最後まで原作を読んでいないので、残りを読もうと思いました。
勝手にふるえてろ調で、どうせモノローグやセリフの応酬をするんでしょ?
天才たちの葛藤を、
〝勝手にふるえてろ調〟で、
どうせ、モノローグやセリフの応酬をするんでしょ?
ピアノの技量、音楽の世界、
それ以外の方法で伝えるのは難しいでしょ?
と予想していたら、全く逆だった。
勝手に震えました。
天才
貴公子
努力家
そして
元天才
気持ちの描写がいっぱい伝わってきた。
例えばインタビュー映像など、ルック、
画調、手持ち感、
技術も高いが、
荒ぶる気迫で伝える。
やらないといけないを、
楽しむ。
人生も同じ。
生活に根差した音楽は早々に敗退。
あえて敗退。
音楽も映画も生活に根差した一般大衆のモノ、という当たり前の事は本作では語らない。
というか、
その当たり前を一旦崩してみよう。
そして
風の音を聴け
雨の唄を聴け
音符のあしあと
ドキドキドキ
何か忘れてませんか?
三幕構成と考えれば、
ホップ→ステップ→ジャンプ
ロッキー・バルボアのコード進行?
(本当にそう?詳しい人、教えてください(汗))
A♭→B♭→C
総立ち
ブラボー!
基本のキ、
ドントシンクフィール、
まずはドキドキすること、
原点回帰、
震えた。
化学反応
小説は読まず何の予備知識もなくいきなり見に行きました。
音楽のことは詳しくないですが、コンクールを直で見ているような気がしました。
予選からかっ飛ばす風間塵が起爆剤のような役割となり、亜夜→マー君に影響を与え、化学反応を起こし、その過程を見守る審査員。
唯一のサラリーマンピアニスト高島明石がいることで、一般と天才の対比が分かりやすく説明されています。
7年のブランクに悩んだ亜夜は、予選道中で少しずつ覚醒し
「世界は音で溢れている」
「あなたが世界を鳴らすのよ」
これを思い出して本選へと向かう。
出演者全員がうまくハマった映画です。
特に
松岡茉優の目が良い演技をしています笑
終盤の演奏シーン、良かったです! クラシック音楽に造詣が無いからこ...
終盤の演奏シーン、良かったです!
クラシック音楽に造詣が無いからこそなのか、自然と涙が出て来ました。
通が観たらどんな印象なのでしょうか。
シンプルによかった
久しぶりに映画を観て原作を買おうと思いました。
松岡茉優さん、松坂桃李さん、その他にも錚々たるキャストの皆さんが揃う、この作品を映画館の予告をみてずっと楽しみにしていました。
予告は面白いのに本編は残念、というパターンが最近多いなと思っていたのですが、この作品は予告を超えてきました。
ピアノも、オーケストラも、役者さんの演技も脇役に至るまで、それこそピアノの演奏のように、最初から最後まで、とても丁寧で綺麗で良かった。楽しかったです。
私が特に目がいったのは広瀬すずさんが自らスカウトしたという鈴鹿くん。新人?!っと最後のエンドロールで驚きました。素晴らしい演技でした。他のキャストに負けず、とても輝いていて、これからもチェックしたい役者さんの仲間入りしました。
原作を読んでからまた観たいです。
世界が鳴ってる、とても素敵なことだと思いました。
張り詰めた空気感と最高のピアノ
ピアノコンテストがテーマということで、かなり張り詰めた緊張感が全編に亘るのだが、それだけでないそれぞれへの救いが見られ、見た後に爽快感と満足感が得られる作品。緊張感からくる疲れは感じられるが、決して徒労感はなく爽快だ。
特に松坂桃李の役が良かったなぁ、生活者の音楽というフレーズは中盤までは音楽だけに打ち込めない自分の環境へのコンプレックスとしか感じられなかったが、脱落してからの彼は、実力者との力の差を肌で感じながらも自らの立ち位置をポジティブに受け止めた。
ピアニストの孤独さと、でも同じようなピアニストと共鳴してお互いにポジティブな影響を及ぼし合うピアニストたちの関係性のコントラストが見事でした。
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