蜜蜂と遠雷のレビュー・感想・評価
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自らの高みを目指す若者たち
国際ピアノコンクールに参加する4人を中心に、自らの高みを目指す若者たちとそれに関わる人々を描く。
松岡茉優と森崎ウィンの再会を軸に、宮沢賢治のような松坂桃李、謎の少年、風間塵がからむ。主役は松岡茉優だが、少女時代の母との連弾を繰り返し描いているが、最終審査に臨む葛藤や覚悟を決めたあたりの描き方は、少し弱かった。雨中の馬のスローモーションは、「愚行録」のバスのシーンを思い出させもするが、今ひとつ意味が読み取れなかった。
タイトルの意味は、他の若者たちに刺激を与える陰の主役、風間塵を現しているのだろうか。
ピアノシーン、オーケストラとの協奏シーンなど、音楽は良かった。特にラストのプロコフィエフ第3番が素晴らしかった。
音楽って共鳴して広がる
人と人が繋がる方法はコミュニケーションを取ること。
一般的に、人は言葉や態度、仕草で他者との距離を測り、自分の居場所や意思を伝えて生活している。
それがいわゆる「普通の感性」だ。
芸術の側面ではこの「普通の感性」を表現する媒体が音楽や絵画やダンスや歌だったりする。
「普通の感性」を一般的なやり方でない方法で表現するからこそ「芸術」なんだと思う。
役者の演技力でもって、キャラクターの心の揺れ動きが分かりやすく伝わってくる。
芸術に触れるとそれを自分の中に取り込んで咀嚼して、急いでアウトプットしたくなる気持ちはとてもよく分かる。
良いものは波紋のように広がって、自分の中の何かを形にしたい衝動に駆られる。
その余波を共感できた者同士が共鳴すると、観ていた景色が広がっていく。
きっと、絵を描いたり、ピアノを弾いたり、何かを表現することが好きな人には刺さる映画だと思う。
ただ、個人的に評価が3止まりなのは、キャストに少し不満が残ったからだ。
レポーター役のブルゾンちえみと指揮者役の鹿賀丈史が自分的にはミスキャストだったように感じてしまった。
ブルゾンちえみは存在感が薄い方が良い。観客の知識補填役として、素人の立ち位置でコンクールや参加者の説明をしてくれる役所なのだが、随所で目に入る。バラエティでは爪痕を残すことが最良の仕事だが、映画においては作品の中に溶け込む演技力を身につけてから仕事を引き受けて欲しかった。彼女が悪いわけではなくて、他の役者の演技力が優っているので浮いて見えるのは仕方ないのかもしれない。
鹿賀丈史に関しては明らかに指揮者役の勉強不足だと思う。オーケストラを束ねるコンマスだよね?指示出してる?って思うくらいただ手を振っているだけ。一筋縄ではいかない指揮者をやるなら、100回は原曲を聴いて少しは自分で振るぞって気概がないと何のためにこの役に選ばれたんだか分からないよ。
他の役者さんが実際にピアノは弾けなくても、目線や表情で演奏の芝居をしているのに対して、少しどころか素人目にもお粗末な指揮者だった。
作品自体はキャラクターの心理描写に特化した良作で、音楽をテーマとした難しい作品をここまで映像化した良作だと思います。
素人が偉そうなことを書きましたが、胸にグッとくる表現力のエネルギーを是非劇場でお楽しみください。
音響の良い映画館でご覧になることをお勧めします。
それから、今回はポップコーンよりホットドッグがオススメです。
神の息吹が感じられるレベルで競い合う若者たちの姿はそれぞれに美しい...
神の息吹が感じられるレベルで競い合う若者たちの姿はそれぞれに美しいものだ。観ながら、この高みはどんな芸術でも、サッカーでも卓球でも同じではないかという気がした。純真に努力を積み、目標に向かって頑張っている全ての人に勇気を与える作品だったと思う。天才というのは所詮努力の結実であるからだ。新人鈴鹿央士の演技は途方もない傑物そのもののはまり役。鹿賀丈史が渋くて良かった。斉藤由貴の英語ふにゃふにゃ。映画の後で小説上下を読んだけど、原作よりむしろ良い。原作は下巻が冗長、三次予選間引くべき。映画では指揮者小野寺が亜夜の鍵盤をボーンと叩くエピソードが造られていたが、良かった。この映画は成功していると思った。
見応え聞き応えあり
母を亡くした事で挫折した少女ピアニストが、再び音楽家に戻るべくの挑戦と、それに絡めたコンテスト参加者のあり様や、それぞれの心模様を描いている。
とは言え、天才ピアニストアヤを演じる松岡の挫折は理解出来たが7年の空白を表すには、もう少し描き方があったのでは?とも思えた。
ともかくも、演奏シーンが素晴らしい。それぞれの演奏家としてのシーンも素晴らしかったが、なんと言っても月の光を見て、アヤとジン、二人の連弾、月光を弾くシーンは痺れた。
この映画は、音楽はもちろんだが、映像として、スローモーションの雨の馬のシーン、海の向こうの遠雷、何度も出て来る母との連弾シーン、その部屋の様子、ピアノを弾く手、アヤがコンクールでピアノを弾いた時、ピカピカのピアノに映る昔の自分と母の連弾場面。音楽と映像で、心情を現していた。
見応え、聞き応えがある映画であった。
見逃さなくてよかった
予告編を見て気にはなってなっていたけれども、スルーしていた。ムービーウオッチメンで宇多丸さんのレビューを聞いて見てみたいと思い、映画館に足を運んだ。
見逃していたら絶対に後悔していた。今年の日本映画で最高だと思う。
コンクールでの演奏場面がすごい。舞台袖の控え室からカメラが回り、演奏者の主観ショットに切り替わるので、見ている自分がそれぞれのコンクーラーとシンクロして演奏に臨む。会場からの視点に変わると、見ている自分たちが、一切の音を発することが憚られるコンクール会場と同じ緊張感に襲われる。劇場内では、誰もポップコーンに手をつけない。
演奏シーンがすごくよい、超絶技巧であることは、クラッシックに素養がない自分にもわかる。技巧的であること以上にピアノの弦が発する音の波が自分を歓喜の世界へといざなってくれる。
ピアノの音に酔いしれたのは、生まれ始めての体験。
なんていっても松岡茉優。トラウマがある元天才少女の見事に熱演していて、栄伝亜夜に一番感情移入してしまった。風間塵との連弾シーンは、もう一度見てみたい。月を見ながらピアノを一緒に奏でる二人は、音楽を心から楽しんでいた。
題名の「蜜蜂と遠雷」が不思議でしょうがなかったが、納得できた。自分もあらゆる音をミュージックとし楽しめるのではないかと思う。
面白かった。
若い専門家たちが集う場の空気感を味わう
残念ながら、原作は未読。
一つのイベントを通して若者たちの群像劇を描くのは恩田陸の得意技だから、是非読みたいと思っている。
この映画は、まず松岡茉優の魅力に尽きる。
彼女の独特の間というか、特にクスッと微笑してから台詞に入るときの表情と声のトーンは、彼女の素の癖かもしれないが、なんとも不思議な雰囲気で忘れられない。本作の役は明るいキャラクターではないから、これが凄く活きている。
そして、松坂桃李。
4人のメインキャラクターの中で唯一の大人であり普通人である役回り。芸達者な松坂桃李ではあるが、今回は「生活者の音楽」を追求しながらも家庭人であるという男を自然体で演じている。
全編で一番好きなのは、4人のコンテスタントと記者(ブルゾンちえみ)が海岸で一時を過ごす場面だ。
3人の天才たちが、砂浜に着けた足跡で音楽を表現し合ってはしゃぐ。それを高いところから見下ろして「僕にも分からない。あっち側の世界は」と言う松坂桃李の、羨むでもやっかむでもなく天才たちをいとおしむ眼差しが印象的だ。
松岡茉優(栄伝亜夜)が鍵盤に指を降ろす瞬間でタイトル表示に切り替わるアバンタイトルから、凝った演出が随所にあって画面に惹き付ける。
亜夜の幼少期の回想シーンが繰り返し挿入されるが、母親とのピアノ練習の場面が何度目かになる最後で初めて母親(キタキマユ)と少女の会話を映し出す。幼女が音楽に目覚めるこの瞬間が優しさに溢れていて心に残る。
エンドロールで、4人それぞれに一人づつ演奏担当のピアニストがついていたことが分かる。
だが、多い少ないの差はあれど、4人ともに鍵盤を叩く本人の指が映される場面があり、感心した。
世界に溢れる音
原作は未読で予告だけを頼りに鑑賞。
第一印象は、よく出来ていたと思う。それぞれが悩みや葛藤を抱えており、厳しい現実と向き合いながら自分の殻を破ろうともがく人間模様が面白い。
映像も美しく、心理描写をVFX交え上手く表現していると思った。
テンポも良く、気持ちの良いドンデン返しもあり総評として及第点。
しかしながら、気になった点もある。
一つは、心理描写の黒馬の扱い方。原作に絡んでいるのかと思いつつも、かなりクローズアップされているので、意味を考えるが最後まで分からなかった。なので色々と調べてみたら、世界は音楽で溢れているという表現の中の一部で、雨だれの音が、走る馬の蹄の音に聞こえるという、英伝亜夜の子ども時代の一節らしい。その表現が亜夜が成長する為の心理描写として描かれていたと理解したのだが、であればただ単にスローにして表現するのではなく、雨だれの音が馬の蹄に聞こえるというような母親との会話などがあればより深く理解出来たと思う。音の表現を映像だけで表現しようとしたのは、はっきり言って失敗だと思った。
もう一つは、手持ち撮影の多さ。コンクールに出場する奏者の不安な心理を、不安定な手持ち撮影で表現しようとした演出は良いと思うが、使用する箇所があまりにも多すぎると思った。途中で少し酔ってしまい、気持ちが冷めてしまった箇所が何度かあったので、ここぞという時に手持ち撮影という考え方があっても良いと思った。もしくは、ひどい揺れの箇所をスタビライズして揺れを緩める手法でもだいぶ違うと思う。
最後に、コンクールの結果の順位がよく分からなかった。ピアノの良し悪しは素人には分からないので、結果を見てもふーんそうなんだとしか思わず、なんだかモヤモヤした。盛り上がりはラストの奏者が一番盛り上がるのは分かるけど…。
という感じ。
しかし、役者も脚本も演出も全体としてよく出来ており、見応えもある。
観ても損はしないと思います。
綺麗だった
映像が綺麗・音が心地よい
中森明菜ばりの
沈黙からの大歓声
正直この映画の序盤私は飽きてしまっていました。
たんたんと流れる風景が頭の中でながれていってしまっていました。
しかし物語が動き始めたのは桃李くんのコンクールの二次予選です
(ネタバレをしたいためにいいません)
そこから物語は動き始めました。
なんで自分がピアノをやっているのかという各々の問いを見つける演奏を桃李くんはしてくれたのです。
人々の感情が揺れ動いた今物語は大きく動き始めます
様々な感情をそれぞれ持ちながらでも、結論に辿り着くのは優勝という言葉
コンクールの場面は自分がそこの会場にいる気になれました
凄すぎる最終予選の演奏は、息を飲む
空気が止まったような緊迫した演奏です
怖い指揮者と立ち向かいながら完璧な演奏
あの笑顔が見れた時ここにいてよかったなとほんとに思いました。
最後のエンドロールまで情景を思い出すことが出来るラストは素敵でした
ひどい
原作が大好きなので期待していきましたがいろいろ設定が変わってました。
それはまだいいとしても、塵くんがホフマン先生の送ったギフトの意味がほとんどなかったなあ、と。
あやが立ち直るための風間塵という感じで、塵くんファンとしては納得いきませんでした。
明石さんもなんだか引き立て役のようなポジションにおかれ、マサルに至っては成長も見せ場もないままなぜか優勝。
この本の見どころは風間塵の演奏を聴いた他の演奏者がいかに成長するかなのに、
あやにスポットライトを当てすぎ。
あやを主人公にするにしても、もう少しやりようがあったのではないかなあと思います。
この話を2時間に収めるのは難しいと思いますが、本選であやちゃんが逃げ出す描写、海の描写などをもう少し削り、必要な場面を入れて欲しかったです。
あとは指揮者役の俳優の演技が最悪。
ベルリンフィルで振っていた指揮者があんなテキトーな振り方するなんてあり得ないので、もう少し役作りして欲しかったです。
音楽の本質はどこに在るか。
あまり期待はしていなかったが、それなりに楽しめた。映画としては採点のとおり。脚本的には主人公にもっとフォーカスした方が良かったのではないかと思う。圧倒的なプロレス技が使える小説(このプロレス技が小説家の凄いところだが)のように、主人公を囲む主要人物たちの背景を判らせようと描いていくとどうしても焦点が合わない。天才たちの競演自体はもっと削ぎ落として鋭利に切り取ってみせて、むしろ主人公が、世界が音楽で満ちている様と、それを自然事象や母との想い出に重ね合わせたりすることで「音楽の在り処」を抽出し、そのことに全体の80%の体力を使って欲しかった。思い切った視点で描くことで、主人公と「音の世界」が際立ち、鮮やかな色を纏い、そしてその緊張感の中で映画が成就するのではないかと感じた。
製作陣は「指揮者」の役割を理解していたのかが疑問
大会本選のオーケストラの指揮者が演奏陣に対して全く「指揮」をしていなかったのがとても気になりました。
大物俳優を起用している様ですが、彼は指揮者の仕事が何なのか把握していないのではないかと思わざるを得ない程のメトロノーム振りでした。
利き手でタクトを振りリズムを取るのは分かるのですが、何故反対の手でハンドサインを出さないのだろうと鑑賞時終始疑問でした。
本物の指揮者の様にオーケストラの演奏陣全員の譜面を暗譜しろとまでは言いませんが「役者」ならそれこそ「演技」でハンドサインを出して指揮者を演じることができるのでは?と思いました。
ハンドサインを出さない指揮者はリズムを取るだけのメトロノームで代用できます。
彼の存在のみが一番の疑問です。
ピアニストの方々は皆さん素晴らしかったです。
重箱の隅を突つかせていただくなら、ステージを歩いてきてピアノの前に立ち、お辞儀をしてから椅子に座って演奏を始めるシーンですが、小ネタ的な感じでどなたか一人でも良かったので(それこそ端役の方など)椅子の高さを調節するシーンを挟んでいただけたら「クスッ」とできました。
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