「差別や背景に対する事前知識は必要な映画」グリーンブック KOHさんの映画レビュー(感想・評価)
差別や背景に対する事前知識は必要な映画
最近よく名前を見かけるこの映画
ついに見たがとても良かった
しかし、この映画で表している差別の背景や当時の状況を理解できないと、とても薄っぺらい友情物語と感じて終わってしまう側面もあると感じた
差別の少ない日本で生まれ育った私たちには理解できないことの方が多いが、この時代背景では法律で差別(区別)される程度には白人と有色人種を分けるのが普通だった背景がある
本編の話に移ろう
いろいろな表現があったが特に秀逸だったものを上げていきたい
ケンタッキーの描写は黒人はフライドチキンが好きというステレオタイプな考え、そしてそれを食べたことのないシャーリーと他の黒人との違いを表すには良い表現だと思った
晩餐会の場面でフライドチキンが出てきて、苦笑いをするシャーリーは悪意のない差別を味わったことだろう
きっと白人の支配人は黒人だからフライドチキンが好きだろうというステレオタイプ的な考えからそれをメインディッシュにしたのだろうと思う
YMCAで白人男性と共に警察に拘束されてトニーに助けてもらった後「今夜だけは知られたくなかった」という発言も
YMCAが同性愛者の文化と密接だった点
黒人とゲイという二つのマイノリティを抱えるシャーリーがトニーと折角築いた関係が壊れるかもしれないと思い、隠したかったと見てとれる
今の時代大っぴらにいう人は少ないかもしれないが黒人、さらにゲイへの差別はいまだに根強く残っていると感じる
それが法律ですら黒人を差別していた1960年代では余計だろう
この背景への理解がないと、「セクシャルマイノリティを出せばいいと思いやがって」と言った浅い感想になるのも仕方がないと思う
個人的に好きだったシーンはシャーリーがオレンジバード(演奏会を断った後に行った黒人向けの飲食店)で行なった演奏シーン
その前のレストランでのシーンでシャーリーがトニーに向かって「お前がいうなら演奏する」と言った言葉も重要な意味を成していると思う
この物語で何度も耳にしたスタインウェイのピアノ
シャーリーはこのピアノでしか演奏しないというこだわりがあったものの、オレンジバードでは友人のトニーに促されて"酒の入ったグラスの置いてある"バーのピアノで演奏を始める
スタインウェイでしか演奏しないというこだわりを持つシャーリーがトニーの進めで"上流階級ではない黒人"の前で楽しそうに演奏をするこの対比はとても素晴らしい
スタインウェイでしか演奏をしないこだわりを捨て、今まで演奏していた場所とは真逆の環境で楽しそうに演奏するシャーリーからはトニーと育んだ友情や新たな側面が見えたとおもう
ただの色ではなく、様々な色が散りばめられたこの映画はいろいろなことを考えさせられる良い作品でした
P.S.
シャーリーに何が言いたいのかと言われそうな文章で失礼
