「旅は道連れ、世は “ 品格 ”」グリーンブック 野々原 ポコタさんの映画レビュー(感想・評価)
旅は道連れ、世は “ 品格 ”
人種差別を暴力で解決しようとするのでなく
《品格》で持って世直しをしようとしたふたりの物語。
肌は白いが “ イタリア系 ” というだけで
差別を受けてきたトニー。
“ ニガー ” と罵られながらも毅然とした振る舞いで
音楽という文化的な武器で世を渡るシャーリー。
人種と階級層が渦巻くニューヨークのナイトクラブで
用心棒を続けてきてヒトの底辺を見てきたトニーは
腕力と、でまかせ(はったり)でしか
世渡りの術を知りませんでした。
劇中でトニーが言います。
「俺は黒人よりも黒人だ!」と…
一方、当のシャーリーは
幼い頃からピアノの才能を見出され今に至るので
虐げられている同胞の苦労を
真の意味で理解していなかったかもしれません。
また彼らを救う術も持ち合わせておらず
無力感にさいなまれ、
少し卑屈になっていたと思います。
実はシャーリーよかトニーの方が
人種差別という問題を
より肌身に感じていたのかもしれません。
が、トニーに卑屈さは微塵も感じませんでした。
旅の道中で音楽や文化、そして食べ物という
《共通の言語》をふたりが獲得していき
同じ目線、同じベクトルが重なったときが
本作『グリーンブック』が提示している
差別と偏見に対する考え方の
ひとつの答えなのでしょう。
決して卑屈な態度でいるのではなく
品格と笑顔で持ってしてヒトと接し
(あと多少のハッタリも必要かな?)
人類共通の文化的な言語を用いて
ヒトとヒトとが理解し、共感し合える。
そんな世界の、そんな人間に、わたしはなりたい…
個人でも社会でも外交にでも言えることですよね!
スピルバーグ氏のNetflix作品への一連の発言で
部門新設などの大改革にブレーキをかけたり
米アカデミー賞にて司会者の “ 差別発言 ” だったりして
本作『グリーンブック』が作品賞に輝くとは
なんとも皮肉なものですね…
2019/03/14 劇場にて鑑賞