「人種差別とヒューマニズム」グリーンブック 森のエテコウさんの映画レビュー(感想・評価)
人種差別とヒューマニズム
クリックして本文を読む
今から56年前の物語。
車やファッションなどは当時の雰囲気なのだが、なぜか現代の物語のような印象が残る。
この映画で描かれている人種差別が、現在どのくらい変わっているのだろう。
ITの進化ほどに、進歩をしているのだろうか。
後半、リップになじられたドクターが車を降りて思いの丈をぶちまける。
そこから二人の絆は同士的に変わっていく。程度の差こそあれ、同じ差別を感じる者同士。
人種差別の面では、リップが上でドクターが下。経済階層の面では、ドクターが上でリップが下。
その捻れた上下関係が、対等な横の関係に変わっていくことで、同じ時と場所を共に楽しめる二人になっていく。
場末の黒人のパブでドクターが弾くピアノは鳥肌物だ。リップもどこか誇らしげ。
それにしても、ビゴ モーテンセン演じるトニー "リップ" バレロンガの人間的魅力といったら…
客をボコボコにしたかと思えば、美人な奥さんには優しく振舞い、毛嫌いしていた黒人にもビジネスの為ならボスと膝まずく。一見粗野なのに思いやり深く、浅はかに見えて賢い。
片や、マハーシャラ アリ演じる天才ピアニストは、複雑なプライベートを抱えながら黒人差別に対して勇気を持って行動していく。
この二人が、差別という社会の偏見に抗いつつ、徐々に互いを理解し友情を育くんでいくロードムービー。
理不尽な社会の中にあっても、人を信じられる自分を投げ出さない二人の物語には、万人の琴線に触れ、いつの時代も人の心を動かすヒューマニズムが、絶え間なく流れていて心地よい。
コメントする