「細かなところまで練られた脚本」グリーンブック Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
細かなところまで練られた脚本
そもそもいい話なのね。反目してた二人が、お互いを認め合って、互いに唯一無二の存在になるっていう。
それで二人のキャラクターをしっかり描いてくんだよね。
トニー・リップの抜け目なさを示す冒頭の帽子のエピソードや、黒人嫌いを示すコップのエピソードとか。
シャーリーの方もカティサークを毎晩一本あけるエピソードや、オーバーヒートで車を止めたときの他の黒人の様子とかね。
それで『あ、互いにこういうこと思ってんのか』と解らせた上で「黒人でも白人でもない私はどうしたらいい!?」みたいな台詞をとどめで入れてくんの。
展開も簡単には進めないで、一つフェイント入れる感じなんだよね。
「ジョーパンは誰でもやれるけど、あんたの音楽をやれるのはあんただけだ」ってトニーが言って『良いこというじゃん。これで解り合えたね』って感じにしといて「私がひくショパンは私だけ」って凄いパンチを出してきたり。
ラストの訪問シーンもチャイムがなって『良かった。シャーリーが来たんだ』って思わせといて質屋さんで、『なーんだ』と息を抜くと! とかね。
あと白人を全部悪い奴にしてないんだよね。ひっどい差別する奴もいるけど、それを躊躇する白人もいるっていう。それで、却って差別のリアリティが出た感じがしたな。
警官に車を止められるシーンは、二回ともシャーリー寝てんだよね。だから『シャーリーが寝てると悪いことが起きる』と思って観てると二回目は!
トニーのエピソードシーンも良く練られてた、警官を買収するときの台詞や札をめくっていく仕草ね。ベルトに銃を隠しているとブラフをかけたと思わせて、後のシーンで実は……とか。
普通にやっても良い話を練りに練った作品で観せてくれるから、本当に面白いよ。