「ケンタッキー・フライドチキン」グリーンブック うじさんの映画レビュー(感想・評価)
ケンタッキー・フライドチキン
当作品の監督は、私がもうDVDで100回以上は観たであろう、
「愛しのローズマリー」の監督(当時は弟と共同監督)でしたので、
かなりハードルを上げて期待して観た次第です。
観た結果としては、ハードルを上げ過ぎたせいか、
良い作品だとは思いますが、少し物足りない気持ちとなりました。
その原因としては、監督がもろアカデミー賞狙い的に、
映画のいろいろな場面のエピソードをソフトに
描いていることからかもしれません。
兄弟監督の持ち味はどぎつい下品さで差別的表現もいとわず、
それでも下品さと差別的表現の中には必ずやさしい目線が入っており、最後は泣かせるというものでした。
この作品は黒人差別や性的マイノリティも取り扱っていますが、
当然下品な表現はなく、ものすごい悪人も登場しない、
アカデミー賞を意識したのかどうか、
万人向けの内容となっていると思います。
設定的には、黒人と白人で正反対のキャラのバディもの
という映画の定番の設定です。
私的には物足りないと言っても面白くないわけではなく、
一応コメディ映画ということで、爆笑とはいきませんが、
笑えるシーンもたくさんあります。
特にケンタッキー・フライドチキン(上品な黒人は食べたことがない。)
の場面では笑いと感動を覚えるものでした。
※ケンタッキー・フライドチキンを食べたくなります。
主人公の黒人を演じるマハーシャラ・アリは、前回観た
「アリータ/バトル・エンジェル」では、なんともさえない悪人役でしたが、うって変わって好演しています。
トニー役のビゴ・モーテンセンは、この作品のために14キロも増量して、いつもの繊細な感じからはかなり離れていると思います。
ただし、お腹にだけ脂肪のつくタイプのようで、
顔つきは「ロード・オブ・ザ・リング」の時のように精悍な感じです。
私的な難点は、彼はデンマーク生まれなので、
イタリアのチンピラにはあまり見えなかったことですが、
それでもがんばって演じており、観ているうちに気にならなくなりました。
ひと昔前であれば、この役はジャック・ニコルソンが演じるのだろうとも思いました。
先日のアカデミー賞の作品賞を受賞してからは、
白人目線の物語(トニーの息子が製作・脚本に携わっています。)
で差別表現もぬるいと、スパイク・リー他から非難されていますが、
父親から聞いた昔話を一種のおとぎ話として描いた作品だと思えば、そんなに目くじらを立てるような話ではないとは思います。
ものごっつうえげつない人物は出てこないので、
決して不快になることはない映画であることを保証します。