劇場公開日 2019年3月1日

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「最高に素敵なバディ物語」グリーンブック CBさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5最高に素敵なバディ物語

2019年3月18日
iPhoneアプリから投稿

まずは、60年代のアメリカがまだこんな差別の国だったということに驚いた。60年代って、俺、生まれてるじゃん! これまでの自分は、こうした事実を、学生時代の授業でも、ニュースなどの一般常識としても、何度も何度も見聞きしたはずのこと。それなのに、映画を観てこんなに驚くとは、当時見聞きしたはずのものが、いかに身になっていないかということなのだろう。改めて、映画を観たり小説を読んだりして追体験することの価値を感じる。

さて、本編だが、「最強のふたり」もそうだが、バディムービーは、ふたりが大きく違っていることだけでなく、お互いが足りないものを補いあっていてこそ、素敵な映画となる。

この映画では、音楽家で紳士、黒人差別を無くすという目的を持つ黒人シャーリーに対して、無頼でガサツ、日々を暮らすだけのイタリア人トニーが補えるところなどあるのだろうか、全くないのでは、と思えるが… いや、是非観てください。
何を トニーが補うのか、何をシャーリーに気づかせるのか。もちろん腕っぷしもあるけれど、それだけではないですよ。

腕っぷしの点では、トニーはそれこそ文句なしだ。それは、前半から遺憾なく発揮される。
しかし、俺たちは後半で気付くことになる。俺たちは「差別?けしからん!ぶっ飛ばしちゃえ!」というシーンを、いかに好んで観て、爽快な気持ちになっていることか。 だが、この映画の中で、トニーや我々観客は、シャーリーがトニーに語る言葉で、差別を撤廃しようという活動にとって、そんな痛快シーンが、いかに無駄で、逆効果なのか、を気づかされる。

そして、この映画のもうひとつの見どころは、今でも愛に満ちているトニーの家庭だが、"手紙(文字)によって、さらに幸せを深めることができるんだよ" とトニーに気づかせてくれるシャーリー。

こういった全てのシーンが、押し付けではなく基本的にはコメディで語られる。あくまでも気づくのは観客である俺たちだよ、という押しつけない作りは、たしかにこの作品を作品賞として評価したくなる!
こういう映画をもっともっと観たい!

最後のシーンに、もちろん文句はない。素晴らしいと思う。一方で、その少し前の、トニーが「そんな呼び方をするなよ」と言うシーンがある。このシーンで終わっていたとしても、それはそれでかっこよかっただろうなあ、と思いながら、劇場を出た。

お互いが補いあう面について自分が感じたことは、公開中の今は書かないでおきます。公開終了した頃にいずれまた。

2020/4/20追記
しばらく経ったので、トニーがシャーリーを補った点について書いておきます。ここから以降、ネタバレなので、未見の方はご注意ください。

ケネディ司法長官とも友人なのに、その力を借りて留置所を出た際に、"力" による差別をなくそうとしている自分が、牢獄から出るためとは言え、"力" を行使したことを悔いてしまうほどストイックなシャーリー。彼は、そんな性格から、「ピアノを弾いていないときは、白人に取っては私はただの黒人。でも黒人たちにも受け入れてもらえない」といったように、つい孤高の立場になってしまう。そんなシャーリーに対して、明確に口に出して言うわけではないが、「そんなの関係あるか、俺たちは友達じゃないか」「迷ったら、まずやってみろや」と行動で伝えてくるトニー。二人で旅する中で、変わっていったのは、トニーだけではない。シャーリーもまた、トニーによって大きく変わった。それが、ラストシーン、つまり、"シャーリーがトニーの家を訪れる" に繋がっていったのですね。

素敵な映画だった!

CB
Mさんのコメント
2023年11月7日

この映画自体、とっても素晴らしい作品ですよね!
ただ、つい「ROMA/ローマ」がアカデミー作品賞を取れなかったことで、「確かによい作品ではあるのだけれど、なぜこの作品が「ROMA/ローマ」を差し置いて賞を取れたんだろう?」(何らかの作品以外の力があったんだろうか?)と疑問に思ってしまい、(自分の中では)この作品に対する評価が不当に低くなってしまっています。(私としては余りにもレベルが違いすぎて・・・)
でも、単体でみるとほんとによい作品ですね!
このレビューを読みながら、「もう一度、フラットな気持ちでこの作品見てみたいなあ」と思いました。

M
琥珀糖さんのコメント
2022年8月17日

お邪魔します。

昨日思い立って3年半ぶりに「グリーンブック」を観ました。
やはり素晴らしい映画ですね。
拙レビュー、読んで頂けたら嬉しいです。

琥珀糖
セロファンさんのコメント
2021年11月23日

>シャーリーもまた、トニーによって大きく変わった。
本当にそうだと思いました。気高さ故に人と距離を置いていたシャーリーでしたが、ラストはトニー一家に自ら歩み寄るという変化が感動的でした。

セロファン
MAKOさんのコメント
2021年2月11日

いい映画ですよね。
これ観るとチキンが食いたくなります。
マハーシャラ・アリはリブート版「ブレイド」の主役に決定したそう。
俳優って素敵。

MAKO
KEIさんのコメント
2020年10月29日

コメント頂き有難うございます!最強のふたり、私も好きです。

KEI