「ご機嫌なリズム」グリーンブック いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
ご機嫌なリズム
映画そのものが音楽となりリズムとテンポが心地よく奏でる多幸感溢れる作品。『バディ』モノとして完璧に近い関係性が出来上がっていく幾重の問題を上手く取り込みながら知恵を絞りクリアしていく様を痛快に鑑賞できた。
実話を元に描かれているとのことだが、正に差別問題を真っ向から取り組みながらもアメリカならではの多層な人種故の応酬の切り返しが或る意味羨ましくも感じる。
と、ここまでは手放しで今作品を楽しめたのだが、鑑賞後にネットで深掘りしていくと、どうも当事者であるアフロ‐アメリカンの人達はこの作品を快く思っていないらしい。というのも制作に主人公の子息が加わっていて、いわゆる白人目線での『なんちゃって差別撲滅』作品だという評価らしいからだ。こちら側から寄り添ったのだから有難く思え的発想なのだろうが、それ程屈折した捉え方をする程までこの問題は根深いと言うことなのだろう。只、少なくてもこの二人の友情には嘘は無いように感じるさせる作りである。それに、そもそもお互い移民なのだからその根っこは理解し合えるだろうし、だからこそ共通部分を認め合えば、心の深いところで結ばれることを証明できる作品であることは間違いない。例えばそれが人種差別だろうが、性的差別だろうがである。
そして今作の最大のオチは、妻の感謝の言葉であることは紛うことがない。妻は夫からの手紙の劇的な表現の進歩により、夫の成長を喜んだ筈だ。そしてその手助けをしてくれたアーティストに対しても最大の敬意と感謝を伝える。これ程迄の補完な関係を映画に落とし込めたスタッフ・キャストへの惜しみない賛辞を贈りたい。小ネタの全ては理解出来なかったが、細かいフリとオチもアメリカの小気味よいスタンドアップコメディを彷彿させるようで、改めてそのリズム感の真髄を体現できたことに感謝である。クリスマスショーを蹴っ飛ばして、黒人バーでのクラシック曲、そしてロックンロールへの流れは、自然と自分の体も共鳴してきて気が付くと体を揺らしていたことに我ながら驚いてしまった。堅いこと抜きで、人情話として大変愉しめる良作である。