劇場公開日 2019年3月1日

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「暗い話ではありません! 見て暖かい気持ちになる、素敵な映画」グリーンブック 雨はにわか雨さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0暗い話ではありません! 見て暖かい気持ちになる、素敵な映画

2019年3月9日
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タイトルの意味から、差別を描いた暗い話しかと少し躊躇しましたが、素敵な映画でした。見て良かった!

一方は、教養溢れる天才黒人ピアニスト

他方は、お金の為にそんな黒人にドライバー兼ボディガードとして雇われる立場になった、「粗野な」イタリア系白人

二人が60年代に黒人差別が色濃いディープサウスをコンサートツアーで巡る様子を描いた、一種のロードムービー

差別は描かれますが、それがいちばんのテーマではありません

いろんな状況のなかで対極的な二人が少しずつお互いを受け入れて少し変わっていく、そんな姿を描いた映画です

興味がある方には是非お勧めします!

===== ★以下、個々の話の結末は書かないのでネタバレではないつもりですが、幾つか大まかなプロット展開に触れるので、気にされる方はすみませんが、この先読まないでください★ =====

冒頭、NYの高級クラブで用心棒をしているトニー・リップ

上客が「これは母親から貰った大事な帽子だから命懸けで守れ」とチップを弾んでクロークで帽子を預けるのを見ると、トニーは、それを寄越せと言って係の女性から帽子を取り上げてしまう

いったい何をするつもりなのか??
いきなり話に引き込まれます
彼の世慣れた抜け目なさが印象的に描かれます

その後の、黒人の修理工が家に来たときの彼のさり気ない行動、そしてその後の奥さんのさり気ない行動で、彼と奥さんの黒人全般に対するそれぞれの態度が見られます。こういう人物描写が簡潔で上手いです

陽気で世慣れて現実的で大食いで、愛する妻と子供たちのために生活費を稼ぐ、地元のNYからおそらく外に出たこともないであろう根っからの庶民

もう一人の主人公、ドク・シャーリーは、ロシアの音楽院に黒人として初めて入学を許されたピアニスト。学位を複数持ち、複数のヨーロッパ言語に堪能

服装、立ち居振る舞い、話題や語彙、厳格な道徳観、いつも静かに思索に耽る姿など、凡ゆる面で品格と教養が滲み出てきます。そして孤独でもあります

無学無教養で貧しい黒人というステレオタイプとは対極にある黒人

そんな黒人にドライバーとして雇われる立場になる白人トニーとのデコボココンビ。白人といっても労働者が多い下層であるイタリア系というのもポイントです

公民権運動前夜の時代、旅が南に進むにつれ、いわゆるレッドネック(南部下層白人)や地元警察の差別に会ったりします。そういう地域・時代の有様はいろいろと描かれており、なるほど具体的にこんな扱いを受けたり制約があったりするんだなと、言い方は変ですが、勉強になりました

しかし一番のテーマは差別を描くことではなく、そんな状況のなかで、生い立ちやら境遇やら性格が全く異なる二人が、二ヶ月に及ぶクルマの長旅を通して、少しずつお互いに影響を与えていく、そんな様子を描くことです

先にトニーを「粗野な」と形容しましたが、そうでない彼の人間性がドクとの付き合いのなかで徐々に顕になります

道中、トニーはNYで待つ妻に手紙を書くシーンが何度か出てきますが、それが話のいいアクセントになっており、何度かクスリと笑いました

最後に立ち寄った地元の黒人バーのシーンはいいなあ

そしてトニーの奥さんが可愛くて素敵ですw!

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雨はにわか雨