「人生を前を向いて運転出来る。素敵な作品♪」グリーンブック マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
人生を前を向いて運転出来る。素敵な作品♪
今年のアカデミー作品賞を受賞した作品と言う冠だけでなく、好きな要素が盛り込まれた作品だけに観る前から期待してました。
ただアカデミー作品賞受賞作は賞狙いの意図とお堅い感じがしなくもないので、その辺りに一抹の不安を覚えながらも鑑賞しました。
で、感想はと言うと、素晴らしく素敵な作品♪
始まって直ぐに“これは素敵な映画が始まる”と言う予感に胸の高鳴りがしました。
カラフルで色彩豊かな60年代のアメリカの街並みとポップなアメリカン・オールディーズナンバー。
美味そうなファーストフード。
少し背伸びをしたくなる素敵なジャズ。
普段は合間見える事の無い人物同士が8週間の時間の中で知り合うだけの十分な“何か”が起こるであろう旅。
最初から最後までワクワクしました。
様々な人が書かれてる通り、「最強のふたり」に共通する部分も多々ありますが、より複雑で様々な要素があります。
上流階級で上品。ピアニストとしての名声も得ていて、金持ちで雇い主の黒人のドク。独身。
どちらかと言うと下流階級で粗暴で下品w。仕事に溢れて雇われている、黒人が嫌いなトニー。既婚で幸せな家庭があって、奥さん気立てが良くて綺麗。
合わない筈の2人なのに、互いが徐々に通じ合っていくのが染み入る様な感じで、旅先で起こり事件や出来事も旅先なら起こりうる事なので納得。
事実を元にしているだけに過剰な脚色が無いのも良いですね。
「最強のふたり」よりも少し複雑なのは互いの立場の設定と、人種差別が色濃く残る地域の事と「LGBT」問題なんですが、それぞれの問題が作品の本質を加味していても邪魔をしていない事が素晴らしいです。
終盤に差し掛かってドクの心情の告白は切ないものがあります。
黒人である事から白人に強いたげられ、同じ黒人からも軽蔑される。
自分がとちらからも孤立する疎外感と孤独。
ドクの叫びがキリキリと突き刺さります。
また、ラストで行うコンサートで古くからのしきたりとばかりにレストランでのドクの食事を認めないのに、契約を盾に自身の正論を発する支配人にはムカムカ。
他にも人種差別に対してムカムカする所も多々ありますが、その都度頼りになるトニーだったり、ドクの凄い人脈だったりで事件解決。
ラストの黒人御用達のダイナーでのライブではスカッとしながらも同じ黒人達に受け入れられた様な時間に少し優しい気持ちになって、長時間の運転に疲れたトニーの代わりにトニーのクリスマスに間に合わせ様と運転をするドクの優しさにじんわり。
トニーの家族とのクリスマスパーティに自ら出向いたドクを暖かく出迎えたファミリーに胸熱になって、ドロレスとドクが互いに伝えた言葉に涙腺崩壊。
ツッコミがあるとすれば、ドクとトリオを組んでいた二人は嫌な奴の様に見えてもそうではないが、だからと言って理解はあっても実は良い人だったと言う訳でもなく、もう少しキーパーソンになるかと思いきや、そうでもなかった事。
ドクとトニーが最後のコンサートをキャンセルして、出ていったけど2人の事は触れられてなかった事かなw
ドクがトニーに運転中に何度も言っていた“前を向いて運転しろ”の言葉はただ単に安全運転だけの言葉では無い様に感じます。
人生に対してもそうだし、むしろ自分自身に向けて、発した言葉ではないのかな?と感じました。
「最強のふたり」「ターミナル」「ジャージーボーイズ」が大好きで、これらの作品に通じる面白さがありつつも、面白くて、クスッと笑えて、何処か爽快で、少し人生や社会に悩んで、良い涙が流せる。とても素敵で素晴らしく、いつまでも余韻が残る作品です。
アカデミー作品賞を受賞するだけの素晴らしい作品です。
未鑑賞の方は是非!絶対にお勧めです♪