「お守り」グリーンブック everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
お守り
黒人ピアニストDon Shirleyの運転手としてコンサートツアーに同行したイタリア系アメリカ人Tony Lip。外見だけでなく、中身もオセロの石のように正反対な2人のロードムービー。
品行方正な佇まいが、まるで高貴な生まれのようなShirleyに、口達者でガサツで食べてばかり(^_^;)のTony。この2人のやり取りがとても面白かったです。
性格、教養、趣味、言葉遣いにマナーと、何から何まで異なる2人に共通しているのは、たとえアウェイでも、自分らしさを貫こうとする姿でした。しかしそんな「最強のふたり」も、Deep Southではそう甘くないと、身をもって経験することに。
このロードトリップを経てTonyの差別意識が変わるのは想像に難くないですが、Shirleyの態度も変わりました。
天才が故の孤独はありがちな気もしますが、自分をそこら辺の奴らと一緒にしないでくれ!というShirleyのプライドにより、お高くとまっている雰囲気がありました。上流階級の白人と同等かそれ以上に、どれだけ品位と教養を身につけて挑んでも、受ける待遇は改善しないことへの憤りから、むしろ彼自身、下品で粗野なTonyを見下していた節もあったのではないでしょうか。肌の色が違ったらもっと自分の音楽は評価されていたのだろうかー Shirleyもきっと自問し続けたでしょうが、孤高の玉座から降りて黒人達のバーで演奏するのも悪くはないと、彼も壁を取り払って柔軟になれたようでした。
違う世界で生きてきた2人が得てきたものは異なるけれど、それが互いに良い学びになっていました。
このコンサートツアー、実は1年半ものロードトリップだったそうです。2人のピンチを救ったあの電話は、ケネディ大統領暗殺の数日前だったとのこと…。
同姓同名かなと思っていましたが、Tonyは本当に俳優だったんですね。
“Green Book” のGreenは作成者の名字が由来ですが、本も車体も、途中で「拾った」翡翠のような青緑色で、平和と調和をもたらすようなお守りでした。
“You don’t win with violence, Tony, you win when you maintain your dignity.
Dignity always prevails.”
“Don’t wait for him, Doc.
This I know...the world’s full of lonely people afraid to make the first move.”