劇場公開日 2019年3月1日

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「シャーリーが求めたdignityは尊厳、トニーに欠けていたdignityは品性」グリーンブック 蛇足軒瞬平太さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0シャーリーが求めたdignityは尊厳、トニーに欠けていたdignityは品性

2019年3月5日
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なるべくちいさな幸せとなるべくちいさな不幸せ、なるべくいっぱい集めようそんな気持ちわかるでしょう♪

シャーリーが南部へのツアーを決めた理由はdignity(自尊心)
トニーが何度も言われていた、君に欠けているのはdignity(品性)

トニーが言う、
Dignity(自尊心)なんて、高い城の中に居ると見えてこない。
トニーが体現する、
日常生活の中で、あるようでないような不思議なものではないか。
拾ったら踏みつけられ、手に入れたと思ったら消えてしまう、そんな事の繰り返し。

トニーは言う、
ベートーベンやショパンを弾いていてもその実感は湧かない。
演奏している目の前の人と唄ったり踊ったりしないのか?
トニーは体現する、
フライドチキンも手で、骨や肉をつかんで、まずは手の味覚で味わう。(日本ではおにぎり、寿司だけになってしまった。手にも食感はある)

そんな互いのちいさなdignityを交換しながらクリスマスを迎える。

シャーリーはみつける、トニーも身につけていく、
それは、カーネギーホールやツアーにではなく、
意外な場所にあった。

人種差別の描き方に関しての観点は色々とあるようだが、
Dignityを這いつくばってひろっていく内容が本題。
(確かに、人種差別を扱っている作品としては、昭和はよかった的な消費をされてはいけないというスパイク・リーの言い分もわからないではないが、様々なメッセージを最大公約数のうまさで競うアカデミー賞なんか全く気にしない攻める作風がスパイク・リーのかっこいい所じゃないの~と思ってしまう、Do the right thing!)

類似作品としては
『スケアクロウ』や『真夜中のカウボーイ』や『オズの魔法使い』など
書ききれないほどある物語の王道。
そんな気持ちわかるでしょう。

ケンタッキーフライドチキンを食べながら、
みんなでトニーとシャーリーを応援しよう上映があったら絶対行く!
そんな気持ちわかるでしょう。

※余談
奥さんがドロレスだからオズの魔法使いのドロシーみたいで、知恵を求めるブリキマンがトニー、心を求めるかかしがシャーリーにみえた。
スケアクロウ(かかし)のライオン(アル・パチーノ)とジーン・ハックマンとか。

※もうひとつ余談(備忘の為の記録、読む必要なしですww)
ブレント・スコークロフト元(ジョージ・ブッシュ)大統領補佐官
が湾岸戦争を早々に撤退することを決めた理由。
クェートに協力する形だけですぐに撤退。
その理由は
イラクが求めているのは、managementでもなく、freedomでもなく、dignityだと。
Dignityを求めている国民に干渉してはいけない。
とスコークロフト。

第二次大戦の教訓で90年代前半くらいまでは建前だけでも世界中の常識かと思われていた。

息子ブッシュ以降の事はみなさんもご存知のとおり。

ブレント・スコークロフト、
ヘンリー・キッシンジャー、
後藤田正晴、
決して表舞台に出ないで、首相や大統領を国民ファースト風に演じさせた官房長官、大統領補佐官。
この人達の言動を思い出すと印象的。

後藤田正晴はあさま山荘事件の時に犯人たちを全員生きたまま逮捕しろと命じていた人。
理由は、犯人たちのdignityを失墜させるため。

いつの時代も、古今東西、
このdignityこそが人間である理由と同時に戦争の火種でもある。

古今東西の時空も超えて
『2001年宇宙の旅』のHALの反乱の理由もこれですわ。
デイジーデイジーそんな気持ちわかるでしょう

蛇足軒瞬平太