劇場公開日 2019年3月1日

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「何かとても心が暖かくなる作品」グリーンブック ホワイトベアさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0何かとても心が暖かくなる作品

2019年3月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

このタイトルを聞いて何のことか分かる方がおられたら、現代アメリカ史に相当精通している方だと思います。1930年代から60年代に掛けて、アメリカで発行されていた黒人ドライバー向けの旅行ガイドブックのことで、「グリーン」は編纂者の名前に由来することをこの作品の鑑賞後初めて知りました。本作は、1960年代、ニューヨークの高名な黒人ピアニスト、ドクター・シャーリー(愛称ドク)が、人種差別がまだ色濃く残る南部の各州への演奏旅行を計画、その道中を任せる運転手兼用心棒として雇われたイタリア系白人トニーとの友情を描いた作品。元々トニーも黒人を小馬鹿にしており、お金が目当てで已む無くこの仕事を引き受けた経緯もあるので、最初はドクと反りが合いません。しかし、旅行先で黒人差別の深刻さを実際に見るにつけ、そして差別を受けた時のドクの毅然とした応対を見るにつれて、彼に対する信頼感と尊敬の念が芽生え、二人の距離感がグッと縮まってきます。勿論、人種差別問題を意識した作品だとは思いますが、政治臭を極力抑え、黒人と白人の中年男二人の信頼と友情のヒューマンドラマを前面に押し出してくれている辺りが、この作品が多くの人に支持される理由ではないかと感じました。観終った時に何かホッとするような暖かい気持ちになれ、アカデミー賞に相応しい作品であると得心した次第です。久し振りにケンタッキー・チキンを頬張ってみたくなりました。

ホワイトベア