「欠点のない作品」グリーンブック むっしゅさんの映画レビュー(感想・評価)
欠点のない作品
アカデミー賞を獲る前から注目していた作品。
運転手役の男は無教養で粗暴ということ、冒頭から黒人差別が感じられる描写あるものの、早い段階で意外にもナイスガイであることが見てわかる事が、この作品の質を急速に高めたのかもしれない。
一方の黒人ジャズピアニストの立ち位置、秘めた思いが、彼の弾く鍵盤から響く音が代弁するかのように、徐々にわかってくるところもまた、この作品の持つ魅力である。素晴らしい演技力。
全く異なるふたりが旅を通じてお互いを理解してゆく、ロードムービーの王道とも取れる作品で、この時代を生きる難しさと、それに順応する力を互いに共感しながら見いだしてゆくさまが、押しつけ的な物語ではなく、ごく静かに柔らかく、そして優しく描かれてゆく。
この作品の欠点を探してみても思い当たるところがない。
夜空を見上げながらゆっくりとカティサークを口に含み、喉元を流れ落ちる音が星空に微かに響く、そんな極上の物語でした。
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