「タイトルなし(ネタバレ)」グリーンブック 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
【勇気が人の心を動かす】
☆☆☆☆(1回目)
☆☆☆☆(2回目)
2回目を鑑賞。レビューを加筆しました。
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『グリーンブック』のアカデミー賞受賞に対する評価がかまびかしい。
その急先鋒に立つのは、【あの!】スパイク・リー。
脚色賞を受賞した際には飛び上がって喜び、お馴染みのフレーズを叫んだリーだったが。この作品の受賞にはらしさ全開で噛み付いた。
更にリーを後押しする様に、他の作品を推していた人達も一斉に「おかしい!」と声を上げた。
おそらく、反旗を翻した人の多くが。今年の象徴と言える《ブラックパワー》で溢れ返ったアカデミー賞の締め括りとして、違う作品を推していたのだろう。
この作品を批判する声として多かったのは〝類型的な白人と黒人の友情〟話にすぎない…とゆう意見。
確かに、そんな様子が伺える面は否めないなあ〜とは思いつつ。教養の無い白人を、教養の有る黒人が諌め、尚且つ威厳を保つ様に諭す。正しい行いを促す。(まるでリーのあの言葉ですね)この話の展開が、私は観ていてとても面白かったのですが…。
尤もそんな事ではなく、差別に耐えながらも威厳を保つ人物でありながら。行く先々の土地の風習等から事件に巻き込まれ、結果的には白人の力を借りなければ問題を解決出来ない(アホ丸出しの様な描かれ方の)人物で有り。なんだかんだと、最終的には白人社会に融合してしまう…と言った。【白人から見た理想的な黒人像】の脚本に対しての不満なのか?は、リーやその他の否を公言している人達でも1人1人で意見は違うのかもしれませんが…。
結局この作品は作品賞以外にも脚本賞を受賞しています。
確かに或る種の《類型的》な話の流れによる作品…と言った意見が出るのは分からないでもないのですが。これまでのアメリカ映画で描かれて来た、肌の色の違いによる行動原理や言葉遣い。それらをこの2人を通し、対象させているように描き。更には肌の色の違い等による対立が、将来に向かいどう有れば払拭されて行くのか…を提示していた様に感じられ。充分に受賞に値する脚本だと思いました。
この旅をするのが《ニガー》と《イタ公》と《ドイツ野郎》と3っ揃ってるのもアクセントになっていますね。
最近記憶力が年々乏しくなって来た為に。今回も作品の中で、ドクターが肌の色に対する大事な台詞を語っていた…と思うのですが。作品を観終わった直ぐにはもう忘却の彼方に(p_-)
是非、もう一度観て確認したいところ。
余計な一言を言わせて貰えるならば。助演男優賞を受賞したものの、主演男優賞は『ボヘミアン・ラプソディー』のラミ・マレックでした。
…ヴィゴ・モーテンセンにあげたかったなあ〜(´-`)
彼のここ数年の演技は素晴らしい。特に『涙するまで、生きる』は本当に良かった。未見の方は是非とも。
ところでこの作品の字幕はなっちなんですが。
※ 「もっと大きな声で叫べ!」
「うるさくて眠れない!」
…って見えたのだけど。(勿論、記憶力が乏しいから正確ではない)
なっち〜!どうゆう意味〜!
俺の見間違いかな〜(・・?)
もう一つ、トニーがドクターを訪ねてカーネギーホールへ行く場面。
女性に聞いた時に「上よ!」との字幕。
もしも聞き間違いで無ければ、「ボブ・ホープ」…と言ってなかったかな〜(u_u)
最後に一言。
運転中は前をしっかりと見ようぜ!
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※ 2回目を観て確認
字幕ではやはり「もっと大声で騒げ、眠いんだよ!」…となっていた。
なっち〜意味わかんないぞ〜(`・ω・´)
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2回目を鑑賞
「暴力には意味がない!」
作品中にドクターはトニーに幾度となく諭す。
冒頭のクラブで、トニーはチンピラを暴力でぶちのめす。中盤でもピアノを巡る諍いから男を殴る。
一概には単なる粗野な暴力男では無いトニーだが。暴力からは何も生まれないと考えるドクターとは、考え方の違いからしばしば意見が対立する。
誰も見ていない
それを良い事に、立ち小便はするし。車から物を投げる。例え売り物で有っても、拾ったモノは《落ちていた》とゆうのがトニーの解釈だ。
それに対してドクターの考えとしては、正しい行いが大事で有り。絶えず沈着冷静で居て、決して人の道を外れてはならないとゆう事。
これは幾多の差別に合い、その都度冷静に対処しつつも、悔しさを噛み殺して来たドクターの信念に基づく考え方による。
だからこそトニーにはそれがもどかしい。
腕っぷしは強いが、何処か一匹狼的なところが有るトニー。どうやら群れる事は気に入らない様に見える。だからこそ、これまでに培って来た《デタラメ》による交渉術で、ヤバイ奴らの間をスルっと交わしながら生き抜いて来た。
確かに考え方に違いは有るものの、2人の心の奥底には似た様な感情が渦巻いていたのかも知れない。
初見の時のレビューは、多方面から聞こえて来る否定的な意見に気を取られての鑑賞の為に、見過ごしていたのですが、2回目を観て気が付いたのが幾つか有りました。
トニーは作品中に3回暴力を振るう反面で、ドクターは差別から2度の暴力を受ける。(3回目はトニーの機転で回避)
のだが…!
映画の中でドクターは、言葉によるやんわりとした差別を3回受けていた。
警察官に検問や尋問を受けるのも3回。
1度目は、トニー自身が生き抜く上で自然に身に付けた《デタラメ》で切り抜けるものの、2回目はトニーの暴力によって逮捕されてしまう。
そして3回目…。
またか! そう観客が思ったその時に、B級天使からの魔法が観客に降り注ぐのだ!
「メリークリスマス!」
この魔法のプレゼントが実に嬉しい。
更に、映画は最後の最後に観客に向かって素敵なプレゼントを配る。
奥さんへの手紙は4度出て来るのですが。その内ドクターによるアドバイスは3回。でも要領を掴んだトニーにドクターは最後は「完璧だ!」と言う。
この手紙の一連の流れは、最後に素敵な奥さんからの一言で映画本編を締める為に仕組んだ技ですね。
この脚本の巧みな部分の本領が発揮されており。やはり充分に賞に値する脚本だと改めて思いました。
【勇気が人の心を動かす】
この旅でドクターは変わった。
黒人では有っても、絶えず威厳を保ち。沈着冷静で有る事で、黒人が白人と対等の立場を得られる…かの様な信条を持っていた。
トニーは、そんなドクターが。それによって逆に自分自身を追い込んでしまい。逆に黒人独自の世界からも孤立し、孤独な日々を送っていた事が気になって来る。
次第にほっとけなくなったトニーは、ドクターの心の奥にづけづけと踏み込んで行く。
始めは受け入れながらもやり過ごしていたドクター。だが雨の中、遂に肌の色の違いによる憤る自身の本心をトニーにぶつけたのだ。
それが有ったからこそ、彼はそれまでの生き方を少し変えてみる気になった。
それまでは底辺だと思っていた黒人社会のディープな世界に思いきって飛び込むドクター。
どんなに才能が有っても、白人社会で黒人がピアニストとして成功する事は出来ない。だからこそ、心の中にはルービンシュタインを忘れないし、最後には玉座に座るのを辞める。
もう無理する必要は無くなった。彼には本当の友が見つかったのだから。彼はもう孤独に生きる理由が無くなったのだ!
そしてトニーも、この旅で大きく変わった。冒頭では差別用語を使い、あからさまに黒人蔑視の様な態度も見せる。ドクターに対しても、車を降りる際には財布は置きっ放しにはしない等、完全には信用してはいなかった。
それが旅を続けて行くうちに、ドクターが数多くの辛い出来事を経験し。それでもその悔しい気持ちを胸の内に押し込めながら、肌の色の違いによる差別に対して威厳を保とうとする。
その人一倍の反骨精神が、一匹狼な自分と同じ匂いを感じたのだろう。
だからこそドクターが弱味を見せ、心情を吐露した時に彼の心は動いたのだった。
帰宅したトニーは一言言う。
「ニガーはよせ!」…と。
2019年3月1日 TOHOシネマズ流山おおたかの森/スクリーン6
2019年3月5日 TOHOシネマズ流山おおたかの森/スクリーン9