「仏壇に寅さんの写真や位牌があったとしても、我々の心に彼は生きているのだから…」男はつらいよ お帰り 寅さん KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
仏壇に寅さんの写真や位牌があったとしても、我々の心に彼は生きているのだから…
私が初めて寅さんに接したのは、
早稲田大学とは関係ない学生寮住まい
だったが、その近くの早稲田祭での
「男はつらいよ」シリーズ第1作~第3作の
3本立て上映でのことだった。
確か100円もしなかったような記憶だ。
しかし、その時はまだ寅さんの
奔放過ぎる振る舞いに笑いはすれど、
大いなる戸惑いを感じるだけの理解レベル
だったような気がする。
それから半世紀に渡る50作品、
彼の愛すべきお節介気質が
しっかりと満男に引き継かれていることを
描いたのがこの作品なのだろう。
しかし、
そもそもが寅さんの安否については不明で、
映画の中でさくらが「お兄ちゃんがいつ帰って
くるかわからないから2階は空けてあるのよ」
と語り、
仏壇に彼の位牌や写真は見当たらないが、
家族が彼の現況について、
いつものように触れることもないから、
この段階で彼は既に亡くなっているとしか
想像出来ないような雰囲気がこの作品の
基本的な違和感を
作ってしてしまっていたような気がする。
本来が製作出来なかったはずが
無理栗に製作した作品なので、
寅さんの生死に触れることを避けたい
との想いがしっくりいかない作品に
してしまったのだろうが、
山田洋次監督には、寅さんは死しても
“我々の心に生きている”
前提でストーリー展開させて欲しかった。
ラストの歴代マドンナの回想連発シーンは
「ニュー・シネマ・パラダイス」
に似て感動的ではあるが、
「ニューシネマ…」が主人公の都会生活で
失った人間性の復活、つまり
未来への希望を想起させるのとは異なり、
この作品では主人公寅さんとの思い出、
つまり、満男への寅さん気質リレーよりも
過去へのノスタルジーに留まって
しまっているように感じる。
だから、
映画としての出来はどうかと問われたら、
前記の理由もあり名作の仲間入りすることは
無いだろうと思う。
尚、この公開年でのキネマ旬報評価は
第25位(読者選出第16位)だった。
因みに、
私の一番好きな寅さん作品は
長山藍子がマドンナだったシリーズ第5作
「男はつらいよ 望郷篇」
です。
共感&コメントありがとうございます。
本作を観ると、
歴代マドンナ、さくら役の倍賞千恵子の美しさに圧倒されます。
美しさと同時に、勢いのある女優達がシリーズを支えたと思います。
シリーズ第一作を見た時の衝撃は、今でも覚えています。
スクリーンから溢れんばかりの笑いの熱気、勢いがあり、爆笑の連続でした。
これは、かなり長いシリーズになると確信しましたが、ここまで長く続くとは想像できませんでした。
シリーズの中で一番印象的だったのは、都はるみの回でしょうか。
その後の彼女の引退を予言したようなストーリーに、山田監督の才気を感じました。
では、また共感作で。
-以上-