「笑いたかったなぁ」男はつらいよ お帰り 寅さん うさうささんの映画レビュー(感想・評価)
笑いたかったなぁ
映画が公開した頃に、「山本寛斎が山田監督に、寅さんが生きている構想を提案し、山田監督は勝手に相談なく映画を作って喧嘩になった」という事件があった。山本寛斎が怒った理由がよくわかった。
全く寅さんが生かされていない。笑いがなかった。
桑田佳祐なんか関係ない。茶化しているだけで違和感の塊。吉岡秀隆が歌えば良かったのに!と1話からずっと一緒に見直していた家族と話していた。
泉のお父さんは寺尾聰だったのに、出れないなら父親が出る設定にしなければ良かった。と思った。
この映画の第1作からの魅力醍醐味は、笑いと人情、社会とズレていても誰とでも友達になれる生きる力強さ。明るさ。時間と季節の流れ。
それらを期待していたから、全然面白くなくて残念だった。なによりも寅さんの立ち位置が変だった。
タイトルの「お帰り 寅さん」じゃなかった。
寅さんは帰ってこなかった。
「今ごろ何やってんだろ」
「あら、お兄ちゃん」
「お帰りお兄ちゃん」
「おかえりなさい。おにいさん」
「あ、おじさん!」
の台詞が欲しかった。
渥美清が亡くなっていても、寅さんが死んでいないなら、寅さんから電話や手紙、SNS投稿やメールがあったとしても良かったと思った。
リリーさんが、この前まで一緒にいたけど喧嘩したとか話したり、とら屋に女性が訪ねてきても良かったと思った。
お祭りのシーンがあっても、お正月のシーンがあっても、寅さんの影や噂があっても良かったと思った。
寅さんを見なかったか捜索の旅をしたり、寅さんを主役として話を進めても良かったと思った。
偽物の寅さんがたくさん出てきて、さくらが違うと否定しまくって泣いたり、お兄ちゃんを恋しがったりとか、なにかくだらなさがあっても良いのではないかとさえ思った。
もっと笑いたかったし、寅さんを感じたかった。