劇場公開日 2019年12月27日

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「みんな、こころの難民」男はつらいよ お帰り 寅さん 野々原 ポコタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0みんな、こころの難民

2020年2月9日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

わたしは今まで『男はつらいよ』を
ちゃんと 観ていません。
所々しか観ていません。
それなのに、この映画を観て驚きました。
わたしの中に「寅さんイズム」が
ちゃんと宿っていたのだから…
それを言葉にすると “ 浪花節の義理・人情 ” といった
現代ではすっかり影を潜めた精神論の類なのかも知れない…

昔は、家族とは別の 、時々顔を出すヒトが…
近所のおじちゃん、おばちゃんだったり
遠縁のおじちゃん、おばちゃんといった
調子のいい、おしゃべりで、お節介なヒトが…
愚痴を聞いてくれたり聞かされたり
こっちが励ましたらこっちが説教されたり…
そんなヒトが必ずまわりにはいてくれた。
そんな時代が確かにあったと思います。

今は、ヒトとヒトとの関係が希薄に感じられる風潮の中
その実、つながりを求める…
ネットでのつながりを拠り所にしている傾向が
強まっていると感じられるのがその証拠だと、
わたし自身も思うのです。

〈今、世界は、難民であふれっている〉
戦争や情勢の憂き目に合い故郷を追われ彷徨うヒトたち…

〈今、日本は、どうなのだろう〉
自分が何処へ行って何をしたらいいのか?
何者になりたいのか? 分からないヒトたち…

《みんな、寄る辺なき漂流者だ》
そんな暗夜行路を照らす光は、
寅さんのような存在と、そのヒトが発する言葉かも知れない。
人生の旅路を導いてくれる存在…
それが、寅さん! 日本には、寅さんがいる!

若いヒトたちの多くに、ぜひ観てもらって
「寅さんイズム」をこころの片隅にでも
宿して頂ければと思います。
だから学生さんは【100円】で観れるようにしたんだろうと思いました。

おじさんの面影を探す旅は
見失った自分を探す旅

帰る家に戻ったら「ただいま」を言おう
旅路から戻ったら「おかえり」を言おう
家族に、自分に、
それがしあわせの風景
拠り所の象徴として、こころに寅さんがいてくれる限り、
この日本はまだ、捨てたもんじゃない!

野々原 ポコタ