「寅さんがいる現在を感じたかったが…」男はつらいよ お帰り 寅さん 40さんの映画レビュー(感想・評価)
寅さんがいる現在を感じたかったが…
男はつらいよが大好きで、公開日に見に行きました。
OPから、PVを見せられ早くも席を立とうと思いながらも何かの仕掛けかもしれないと我慢しました。
しかし、開始早々時代錯誤の連続。
高校生などの若者の言い回しや行動感覚が現実とかけ離れすぎている。
今の老人たちにはこう見えるのか?むしろそうみたいのか?不思議でならなかった
編集長と編集者のセクハラの掛け合いこそがセクハラだった。
ただの気持ち悪いやり取り。必要ないんじゃないかな
と言いたいことはずっと続き、
寅さんの扱いの不自然さ。
寅さんの生死についてはだれも触れない。ただただ不自然に思い出話をするのだが、くるまやにすら寅さんの影が見つからない。いついなくなってふらっと帰ってくるかわからないという感じでもない。
お馴染みのセリフの掛け合いも、セリフが多く説明口調でストーリーは進まない。
以前までの男はつらいよは、セリフ回しや行動、視線の演技などで伝わってたし、今見ても時代を思わせない日常を描けていた。だからこそ、いつ見てもノスタルジックにならず、こういう人いるよな、とかこういうことやっちゃうんだよな~とか思って楽しめる作品だった。
今回の作品は、寅さんがいてくれたら、渥美清がいてくれたらもっといい作品ができたかもしれないという独りよがりな作品だったと思う。
思い出を語るシーンもすべて過去作中でセリフを使わず、感じ取っていたものを突然セリフで全部説明しだし、今までの作品を台無しにするようなシーンも多かった。
内容や宣伝からも新規ファンを獲得できるようなものでもないのに、なぜこんなものを入れたのか、ファンをばかにしているのかと不快に感じた。
最後のヒロインをフラッシュバックで出すシーンも物語と関係なかった。
リリィさんは素敵だった。
出て頂いて本当にうれしかった。だからこそ、あんな思い出を語るだけの役で出してほしくなかった。
あと橋爪功さんのシーンは面白かった。
あのとぼけた顔で金をせしめようとする。アレこそ、寅さんの世界だったなあ
後藤久美子さんに関しては、演技はひどいのは仕方がないとしても、最後までみてだからどうしたとの感想しかなかった。
なにも進んでない、ただ2時間だらだらと、昔はよかったと美化されてしまった世界を2時間見せられてしまった。
しかし、文句はワンシーンごとにある。
こんなものに評価が高いのが許せなかった。
こんなものに渥美清さんが納得するのだろうか
この映画に尊敬した山田洋二はいなかった
満男は寅さんのことをわかっていなかった
満男は今回の映画を作った人たちの思いが形になったものだったんだなと
本当に見終わったあと悔しかった。
思い出話でもいい、再編集でもいい、そう思って見に行った作品がこれはなかった。
くるまやにリリィが訪ねてきて、桜と思い出を語り、満男が小説のネタを探すために寅さんがいた町をめぐり、時代の変化を感じ、最後に草団子をお土産に買って帰り、家には男性がいる。リリィが「懐かしいだろう」とだけ言って終わる
それだけで十分だった。
寅さんがいる現在を感じたかった。
素人にはこんなものしか思い描けないけど、山田洋二の描くものを期待したのが間違いだった
公開日の関係、高齢の出演者の体調など、時間がなかったのかもしれない。
今回どういう思いでこのようなものになったのか、聞いてみたい。
あと、「男はつらいよ」ってタイトルは今の満男には会わないな。
BSで2時間で放送するなら、これで十分ではないだろうか。