「父と一緒に見に行きました。 「あー、この人はもう亡くなったね」 「...」男はつらいよ お帰り 寅さん 裕美さんの映画レビュー(感想・評価)
父と一緒に見に行きました。 「あー、この人はもう亡くなったね」 「...
父と一緒に見に行きました。
「あー、この人はもう亡くなったね」
「この人、若いときこんなにキレ
イだったんだね」
「歳を取るってさぁ...年月は恐ろしいなぁ」
上っ面な感想を言えばこうなんだけれど、
だいぶ作り込まれていて、面白い作品でした。
冒頭、イズミちゃんと同僚の人とのやりとりが、
色々と問題提起になっています。
家族4代を戦地に送った女性の、「あなたたちが来たってことは、ちょっとは未来も良くなるかも〜」のクダリだったり、
銀座の街をタクシーで走っているときの、
「この人たちはみんな幸せなのかしら?」なクダリだったり。
全部全部、物語の最後、満男の娘の「おかえりなさい」の一言で回収。
やっぱりイズミちゃんとは家族じゃないし、
満男にとっても、諏訪家全体にとっても、非日常なんだ。
しあわせってなんだろう。
待つ人がいる。待っていてくれる人がいる。
帰る場所がある。守る場所がある。
家族がいる。
それだけ。
でも、
それが、しあわせ。
イズミちゃんを家に泊めるクダリで、
サクラが、「おにいちゃんがいつ帰ってきてもいいように〜」みたいにサラリと言ってる。
死んでない設定...ではないと思うけど、
いつでも「おかえりなさい」言える準備がある。
そこで気付かされる。
寅さんの歴代ヒロイン。
くるまや(とらや)に訪ねてくるばかりで、「いらっしゃい」なんだ。
家族じゃなくって、他人様、お客様。
家族との線引き。
「おかえりなさい」は家族。
「いらっしゃい」は他人。
回想シーンの寅さんも、
博や満男、サクラの思い出の中の寅さんはありのまま、わがまま、やりたい放題だけど、
ヒロイン視点の寅さんはヨソイキだ。
寅さんとリリィさんの越えられなかった一線。
満男とイズミちゃんとが越えなかった一線。
そんな意味ではイズミちゃんのお父さんは面白い存在。
元嫁とは口をききたくない。
娘にはカッコつける。
娘の夫だと思い込んでる満男には本性(笑)
なにはともあれ、
「おかえりなさい」「ただいま」で迎え、迎えられる関係って、
難しいけど、強固だし、何物にも変えがたい。
どんなに優しくしてくれる人、楽しい時間があっても、
家で自分を待ってくれている人も、自分が待っているのも、やっぱり家族。
時代が変わっても、人がどんなに変わってしまってもそれは同じ。
待っていてくれる人がいるから、放浪もできる。
みんなが待ってる寅さんは、きっと生きている。
「おかえり、寅さん」