劇場公開日 2019年12月27日

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「まったく色あせない暖かさ」男はつらいよ お帰り 寅さん chikuhouさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5まったく色あせない暖かさ

2020年1月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

44年前、桜田淳子ファンだった中学生の私は、考古学の研究員をしているマドンナ樫山文枝さんと共演していた「葛飾立志編」で、このシリーズに出会った  当時は映画館も「松竹」「東宝」「東映」、そして正月・盆だけ一般映画を上映する「日活」の各々の系列館が自社の作品を2本立にして上映していた  「松竹」はもちろん「寅さん」、アイドル映画の「東宝」、トラック野郎の「東映」が年末から1月2週目ころで息ついて新しい番組に代わるのに、「松竹」は2月1週目くらいまでこの「寅さん」で引っ張っていた 「寅さん」の魅力は学生の私には当時はわからなかったが、暗い映画館であっても「松竹」館だけは、安心して入ることができた  あれから40年以上が経ち、自分も社会人になり、結婚をして、家庭を持つ、寅さんや満男、その家族たちも一緒に歳をとって、今日「再会」をしたそんな気持ちです  家族とか親以外の親戚と時間を過ごすことがなくなってしまっている今日、家族や近所の人々との過ごしてきた時間が人格を作るものなんだ、と暖かい気持ちになりました  失礼ながら山田監督がどのように過去の作品を取り入れるか心配をしましたが、まったくの杞憂でした  この間山田監督が社会的な発言をされることもありましたが、監督の社会に対する思い、働くものへの敬意、それが現れていて嬉しかったです
 自分にも世話になったり、鬱陶しい親戚がいてもそれが年月を経て、自分への愛情であったことに、遅すぎても気づかせてくれる作品でありました
 「寅さん」は毎回全国各地が舞台になっていて、今のNHKのドラマのように自分の街でロケをして欲しいといった誘致合戦がありました  私が住んでいた和歌山の舞台になったホテルは年月を経て、先日取り壊されました
 シネコンの時代になって今回のこの作品、「東宝色」「東映色」の強いシネコンなどでも全国各地で上映され、国民全体が「おかえり」と言っているような気持ちがしています
出川哲朗さんが寅さんシリーズ6作目の出演と聞いて、毎回ちょい役ながら彼を使い、彼の人間性と今回も久々の起用をしたスタッフの暖かさを感じました
(2020年1月1日 イオンシネマりんくう泉南にて鑑賞)

chikuhou